上肢挙上で鎖骨・肩甲骨・上腕骨はどう協調するか

肩を挙げる動きは「肩甲骨2:上腕骨1」だけで説明できるのか——4関節の3D運動

Motion of the Shoulder Complex During Multiplanar Humeral Elevation

Experimental Study | 2009 | 肩関節運動学

肩複合体/3D kinematics/肩甲骨/鎖骨/上肢挙上

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何を調べた?
上肢挙上を肩甲上腕リズムだけで説明すると、鎖骨やAC関節で起きている運動をどこまで見落とすでしょうか。
何が分かった?
健常者12名に骨pinを用いて3D計測すると、上肢挙上はSC、AC、ST、GHの各レベルで大きな回旋が組み合わさって成立しました。運動パターンは挙上面によっても変わり、flexionとabductionではGH elevation planeに平均46°の差がありました。
何を言ってはいけない?
「正常な肩はこの角度で動く」「この比率から外れたら異常」と判定する研究ではありません。12名の群平均であり、疼痛や病態の原因を検証していません。

重要ポイント

  • 肩疾患のない12名。
  • 骨pin+electromagnetic sensorによる3D計測。
  • SCでclavicle posterior rotation平均31°。
  • ACでscapular posterior tilt平均19°。
  • 挙上面により関節運動の組み合わせが変わる。

研究を読み解く2〜4分

肩複合体を4つの関節レベルにほどく

上肢挙上ではGHだけでなく、SCでの鎖骨、ACでの肩甲骨と鎖骨の相対運動、STでの肩甲骨運動が同時に起きています。

肩甲骨の動きにも『どの関節で起きたか』がある

肩甲骨のposterior tiltやupward rotationは、鎖骨の動きとACでの相対運動が組み合わさった結果です。見た目の肩甲骨運動を一つの関節の運動として扱わない視点が得られます。

挙上面で変わる

flexion、scapular plane、abductionで同じ関節運動が再現されたわけではありません。課題条件が変われば肩複合体の分担も変化します。

原著から臨床へ

① 研究で観察されたこと原典

健常者12名の3D計測で、上肢挙上に伴うclavicle elevation/retraction/posterior rotation、scapular internal/upward rotation/posterior tilt、GH elevation/external rotationが観察されました。SCのposterior clavicular rotationは平均31°、ACのscapular posterior tiltは平均19°でした。

①′ 著者はどう解釈したか原典・著者の考察

著者らは、上肢を頭上へ挙げる運動は肩複合体の4関節レベルにおける substantial angular rotationsの相互作用で成立し、正常運動の理解が運動異常の評価・リハビリ計画等の基礎になると解釈しています。

② 療活ではどう考えるか療活編集部の整理・ここからは原典そのものではありません

療活では、肩甲骨だけを『上方回旋が足りない』と見る前に、鎖骨、AC、GH、課題面を含めて運動を分解する材料になります。同じ見た目の肩甲骨位置でも、そこに至る関節間の分担は同じとは限りません。

③ 臨床で観察するとしたら療活編集部

挙上方向を変えたとき、鎖骨の挙上・後退、肩甲骨のupward rotation/posterior tilt、GHの外旋や挙上面がどのように変わるかを比較できます。痛みの有無だけでなく、課題を変えたときの適応を見る視点です。

④ まだ言えないこと

健常者12名の平均kinematicsで、個人の正常範囲、病的原因、特定の徒手誘導・筋トレーニングの効果は示しません。骨運動の違いと疼痛は直接結びつけられていません。

この研究と臨床の距離

肩の運動を理解する基礎として臨床に近い一方、群平均を個別患者の目標角度へ変換するところには距離があります。

健常者の高精度3D kinematics → 関節間相互作用 → 患者での運動差 → 疼痛・機能との関係 → 個別介入

逆の視点から読んでみる

「健常者平均と違う肩甲骨運動=修正対象」とは限りません。課題、形態、可動性、筋機能による個人差や、症状を回避するcompensationもあり得ます。逆に『個人差だから何でもよい』でもなく、症状・機能と一緒に確かめる必要があります。

この文献を読んだあと、何を見る?

肩挙上を見るとき、肩甲骨だけでなく鎖骨の動きと挙上面を一つ追加して観察してみると、肩複合体の見え方が変わります。

考えてみましょう

自分が『肩甲骨が動いていない』と感じたとき、鎖骨とGH関節では何が起きているだろうか。
挙上面を変えると動きや症状が変わるなら、どの関節間の分担が変わった可能性があるだろうか。

答えを急ぐ必要はありません。次の臨床で、少し観察してみてください。

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次に読むなら

  • 肩甲骨運動の変化は肩疾患の原因なのか結果なのか Ludewig 2009b 基礎から臨床への橋|健常者の肩複合体運動を基礎に、肩疾患群で報告されるscapular kinematicsと、その因果・代償の曖昧さを確認できます。
  • Inman 1944 この考え方の基礎|古典的なscapulohumeral rhythmの記述と3D bone-pinデータを比較し、モデルがどう更新されたかを読む材料になります。

原典・書誌情報

Ludewig PM, Phadke V, Braman JP, Hassett DR, Cieminski CJ, LaPrade RF. Motion of the shoulder complex during multiplanar humeral elevation. J Bone Joint Surg Am. 2009;91:378-389.

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原典照合:大塚 久(原典照合=AI・PMC全文(著者原稿HTML)・2026-08-17)/最終確認日:2026-08-17

確認状況:書誌確認・抄録確認・全文入手可・全文照合・主要数値確認・臨床Bridge確認

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