目標は身体機能だけで決まらない——環境因子から「動ける条件」を組み立てる
環境因子に基づく目標設定の考え方
Framework / Classification | 2022 | ICF・目標設定
ICF・目標設定
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- 何を調べた?
- ICFの環境因子、世帯構成、ADL・IADL、認知症、意思決定支援を手がかりに、理学療法の目標が生活環境によって変わることを論じた講座です。
- 何が分かった?
- ICFの環境因子は、製品と用具、自然環境と人為的環境、支援と関係、態度、サービス・制度・政策という広い範囲を含みます。同じ身体機能でも、住居、同居者、支援、交通、本人の希望によって、実生活で可能なことと目標の形は変わるという見方が提示されています。
- 何を言ってはいけない?
- 「ICFを使えば目標設定の質が上がる」「環境を整えれば活動・参加が変わる」「この手順が他の方法より優れる」という比較結果は報告されていません。
重要ポイント
- 原著データを収集した研究ではなく、ICFと臨床例を用いて考え方を示す講座である。
- 身体機能や院内ADLだけでなく、住居、家族構成、支援者、用具、制度、仕事、余暇を目標設定の条件として扱っている。
- ADLの点数が同じでも、動作の質、実際の生活条件、IADLの必要性によって退院後の課題は変わる。
- 目標には回復だけでなく、維持や悪化予防という時間軸も含めている。
- 意思が変化し得ることを前提に、本人を中心とした繰り返しの対話を取り込む視点が示されている。
文書を読み解く2〜4分
ICFで環境を見る
本文は、ICFの「活動と参加」が生活領域を広く含むこと、環境因子が生活機能を促進も阻害もすることを説明します。住居にエレベーターがあるか、家族の支援があるか、復職を目指すかによって、同じ障害像でも臨床上の目標は異なります。(PDF p.1–2/誌面p.373–374)
「できる」と「暮らせる」の間
独居、高齢者同士の世帯、多世代世帯では、必要となるADL・IADLと支援の組み合わせが変わります。本文は、Barthel IndexやFIMの量的評価だけでなく、各動作の質や環境との適合を見る必要性を述べています。これは尺度を否定する話ではなく、点数が生活条件をすべて表すわけではないという整理です。(PDF p.2–3/誌面p.374–375)
目標の時間軸と意思決定
Figure 1では、本人のニーズ、環境、機能・活動・参加の評価、予後を行き来し、改善、維持、悪化予防を含む目標へつなぐ考え方が示されています。後半ではACPを参照し、本人の意思が時間とともに変わり得ること、意思表明が難しい場合に家族やチームで考える過程が紹介されています。(PDF p.3–4/誌面p.375–376)
原典から臨床へ
① 原典で提示されていること原典
本稿は実証研究ではありません。ICFの活動・参加と5群の環境因子、世帯構成、ADL・IADL、認知機能、本人の意思を目標設定へ組み込む考え方を提示しています。Figure 1は著者による目標設定の整理、Figure 2は引用文献に基づくACPの手続きです。(PDF p.1–4/誌面p.373–376)
①′ 原典での位置づけ原典・著者の考察
著者は、目標設定を臨床推論の到達点と捉え、理学療法士が経験則やヒューリスティックも使いながら、本人の背景と環境を含めて考える営みとして位置づけています。(PDF p.5/誌面p.377)
② 療活ではどう考えるか療活編集部の整理・ここからは原典そのものではありません
療活編集部としては、環境因子を退院前の追加情報ではなく、最初から「動ける条件」を構成する要素として扱います。患者さんが主体となる目標を考え、療法士は身体機能、用具、住居、人の支え、制度の組み合わせを一緒に探します。身体を変える経路と、環境を変えて可能性を広げる経路を並行して持つ読み方です。
③ 臨床で観察するとしたら療活編集部
院内で何ができるかに加え、どこで、誰と、何のために行うか、道具や交通手段があるか、援助を本人がどう受け止めているかを確認します。同じ動作でも、標準的な環境での能力と、自宅や地域での実行状況に差がないかを見ます。
④ まだ言えないこと
ICFを用いた目標設定が、目標共有、ADL、IADL、参加、満足度、退院先などをどの程度変えるかは、本稿では測定されていません。認知症や意思表明が難しい人で、本人の意思をどう推定し、誰の見方をどのように調整するかにも単一の答えは示されていません。
この研究と臨床の距離
臨床場面に近い解説ですが、手順の効果を比較した研究ではありません。概念と事例から、対話の質、目標の共有、介入選択、活動・参加の転帰へ至る因果の橋は検証されていません。チェックリストや問いの枠として利用し、個別の判断は本人との対話と現場観察で確かめる段階にあります。
逆の視点から読んでみる
情報を広く集めるほど本人中心になるとは限りません。家族構成や住環境を詳しく評価しても、専門職が決めた「現実的な目標」に本人を合わせれば、本人の選択は小さくなります。また、環境調整だけに寄りすぎると、本人が望む能力獲得の機会を狭めることもあります。身体と環境のどちらを変えるかではなく、本人が何を選び、その選択をどの条件が支えるかが中心です。
この文献を読んだあと、何を見る?
一つの目標について、「身体の条件」「物理的な環境」「人との関係」「制度」「本人の意味」を五つに分け、抜けている視点を探します。
考えてみましょう
今の目標は、病棟や治療室での能力ではなく、本人が暮らす場所の条件まで含んでいるだろうか。
療法士が考える現実性と、本人が選びたい生活がずれたとき、何を対話の出発点にするだろうか。
答えを急ぐ必要はありません。次の臨床で、少し観察してみてください。
次に読むなら
- ICFは、身体だけでなく「活動・参加・環境」から生活機能を捉える この研究を発展させた|本稿が参照する活動・参加・環境因子とcapacity/performanceの原典へ戻る。
- 標的が変わったことと、生活が変わったことを分ける この研究を発展させた|身体機能の変化が活動・参加へ届く条件を因果の橋として考える。
原典・書誌情報
金谷さとみ. 環境因子に基づく目標設定の考え方. 理学療法学. 2022;49(5):373-377.
原典照合:大塚 久(原典照合=AI・J-STAGE 公式 PDF 全文・2026-09-09)/最終確認日:2026-09-09
確認状況:書誌確認・全文入手可・全文照合・臨床Bridge確認
