トレンデレンブルグ歩行は中臀筋だけの問題じゃない|荷重感覚とインナーから紐解く股関節安定

  • トレンデレンブルグ・デュシェンヌ歩行は、中臀筋の機能不全が主因のひとつだが、多因子性であり単純な筋力不足だけとは言い切れない。
  • 骨盤安定の前提は「荷重感覚(体性感覚)」の回復。インナーマッスルが求心位を作ってはじめて中臀筋が機能する。
  • 「まず中臀筋を鍛える」より「骨盤の真下に軸を感じる荷重感覚」を取り戻すことが先決。
中臀筋と骨盤安定の解剖図

トレンデレンブルグ・デュシェンヌ歩行って?

歩行中、片脚が地面から離れる瞬間、骨盤は本来なら水平を保ちます。これを支えているのが、骨盤の横側に位置する中臀筋です。

この中臀筋がうまく機能しないと、身体はなんとかバランスを取って歩きます。それが特徴的な2つの歩行状態です。

1. トレンデレンブルグ歩行(骨盤の沈み込み)

骨盤を荷重した際に支えきれずに落ちてしまう現象です。

  • 患側で支持する際、反対側(健側)の骨盤がガクンと下がってしまう状態(対側のASISが落ちる)
  • 原因として、中臀筋が弱いため骨盤を水平に止めておくことができないと考えられている
  • 歩行観察では骨盤が左右に振れているように見える

2. デュシェンヌ歩行(体幹の傾き)

倒れるのを防ぐために自ら傾くのがこのタイプです。

  • 患側で立った際、上半身をわざと患側へ大きく傾ける状態
  • 上体を倒すことで重心を股関節の回転中心に近づけ、中臀筋への負担を減らそうとする代償作用
  • 歩行観察では頭を左右に大きく振りながら歩くような動きに見える
2つの違いを整理すると:

✅ トレンデレンブルグ → 中臀筋のパワー不足、立ち直りも出せない
✅ デュシェンヌ → 中臀筋を使わずに歩く(骨盤の荷重不足)、立ち直りを捨てる

問題となるのは「骨盤の荷重(骨盤の側方シフト)」と「立ち直り」この2つです。
骨盤荷重伝達の模式図

骨盤の荷重伝達――なぜ「ズレ」が起きるのか?

歩行時、骨盤には上半身からの重み(重力)と地面からの跳ね返り(床反力)という力が集中します。

歩行では、仙腸関節を介して重みが左右の股関節へとスムーズに分散されます。中臀筋やインナーマッスルが機能不全を起こすと、この荷重の受け渡しがスムーズにいかなくなります。

トレンデレンブルグの場合

荷重を受けた側の股関節で重みを支えきれず、骨盤が反対側に折れ曲がるように沈みます。荷重伝達のラインが途中で崩壊している状態です。

デュシェンヌの場合

あえて上半身を患側に倒すことで、荷重のライン(重心線)を無理やり股関節の真上に持っていきます(上半身の荷重)。筋肉を使わずに骨の支柱だけで重みを支えようとする代償戦略です。

ここで必要なのが「荷重感覚(体性感覚)」

この感覚を元に立ち直りと運動パターンの選択が行われます。
トレンデレンブルグ・デュシェンヌを呈しているとき、脳内では「正しく荷重できている」という感覚がうまく処理されていない可能性があります。

荷重感覚の欠如――悪循環のループ

荷重感覚には、骨頭求心位の把握関節包内運動の円滑性が必須です。

股関節の固定(求心位)が得られないと、足が地面についてもバランスボールの上に立っているような不安感が生じます。そうなると脳は「このままでは倒れる!」と判断し、反射的に体を反対側に倒したり(デュシェンヌ)、腰を引いたりして、不安定な股関節に体重がかかりすぎるのを避けようとします。

  • 正しく荷重できない → 筋肉が使えない
  • 筋肉が使えない → 「乗れている」という確信が持てない
  • 確信が持てない → さらに荷重を避ける

このループに陥ります。

骨頭が臼蓋にピタッと収まると、メカノレセプター(感覚受容器)が作動し、脳に「今、骨盤でしっかり体重を受け止めていますよ」という正確な情報が送られます。
この情報を受け取って初めて、脳は安心して中臀筋(アウター)に力を入れて骨盤を支えるという指令を出せるようになるのです。

単に中臀筋を鍛えるだけでは、歩行は変わらない場合があります。

「骨盤の真下に一本の軸を感じる荷重感覚」を取り戻すことが先決です。
股関節インナーマッスルの構造図

関節の安定性――インナーマッスルの役割って?

中臀筋がパワーを発揮するためには、大腿骨の頭が骨盤の受け皿(臼蓋)にしっかりとはまっていなければなりません。インナーマッスルはこの関節の求心位での安定を担っています。

  • インナーが弱い → 関節がガタつき、中臀筋がいわゆる「空回り」の状態になる
  • インナーが効く → 関節が安定し、中臀筋が効率よく骨盤を支えられるようになる

なぜ深層外旋六筋・小臀筋が必要なのか?

股関節のインナーマッスル(深層外旋六筋・小臀筋)の役割:

  • 骨頭求心位を保つ
  • 内外旋という関節包内運動を司る
  • 関節の位置や動きを察知するセンサー(受容器)として機能し、荷重感覚を補完する
  • 関節包内運動の円滑性により立ち直り・股関節戦略(hip strategy)を可能にする

「インナー」が荷重を安定させる流れ

  1. 股関節のインナーを使って大腿骨頭が臼蓋に求心位で収まる
  2. 求心位での荷重をメカノレセプターが感知(体性感覚)
  3. 正しい荷重パターンにより、上半身の重みが「点」ではなく「面」で股関節に伝わる
  4. 結果として、アウターである中臀筋がパワーを発揮しやすくなる
これでも動作が変わらない場合に考えること:

・絶対的な筋力低下
・骨盤の荷重イメージの不足
・他部位の影響(運動連鎖)→ 次回詳しくお伝えします

観るポイントは足部と頭部。理由はぜひ皆さん考えてみてください。

まとめ

  • 骨頭の荷重感覚:メカノレセプターの機能評価と促通が出発点
  • インナーが効いている → 荷重が安定し、中臀筋が最小限の力で骨盤を水平に保てる
  • インナーが抜けている → 荷重が不安定になり、どれだけ中臀筋を鍛えても骨盤のグラつき(トレンデレンブルグなど)が止まらない場合がある

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