- 動作分析が難しい理由は「観察(事実)」と「分析(原因)」を同時にやろうとしているから。
- 観察は「骨の動き・運動面・動く順番」の3点のみ。主観を完全に排除して事実だけを拾う。
- 分析の原因は「関節・筋肉・神経」の3つだけ。4大ユニットで大枠を絞ってからピントを合わせる。

「先輩セラピストみたいに、パッと見ただけで一発で原因を見抜けるようになりたい……」
日々の臨床、本当にお疲れ様です。
バイザーや職場の先輩が、患者様の動作をほんの数秒見ただけで「あ、これは股関節の伸展が出ていないから、膝で代償してるね」と一発で原因を特定している姿、格好いいですよね。
そのやり方を真似したくて「どうやって見ているんですか?」と聞いてみても、「うーん、やっぱり経験が大事かな」と言われておしまい……。そんな経験、一度はありませんか?
「自分にはまだ経験が足りないから、動作分析ができないんだ……」と落ち込む必要はまったくありません!
実は、動作分析が難しく感じてしまうのには、明確な理由があります。そこを整理して「頭の使い方のルール」さえ分かってしまえば、驚くほどシンプルに動作分析ができるようになります(私自身、このことに気づいてから臨床が一気に楽しくなりました!)。
今回は、よくある「動作分析の迷子」から一歩抜け出し、誰でも必ずできるようになる「観察」と「分析」のロードマップを徹底解説していきます!
動作分析が難しく感じる4つの原因:プロセスと結論を混ぜていませんか?
よく聞かれる「動作分析が苦手な理由」は、主に次の4つに集約されます。
- どこから見ていいかわからない
- どこが問題なのかわからない
- 気になるところ(エラー)が多すぎてパニックになる
- 結局、何が根本原因なのかわからない
あなたもこの中のどれかに当てはまっていませんか?
実は、1と2は「動きを追う問題(何を見るか=プロセス)」であり、3と4は「頭の中の整理の問題(どう解釈するか=結論)」になります。
「プロセス(何を見るか)」と「結論(どう解釈するか)」という、まったく異なる2つの作業を頭の中で同時に解決しようとしているから。これがパニックの正体です。
動作分析が得意な人は、一瞬で超能力のように原因を見抜いているわけではありません。「何を見るか(観察)」がクリアにできたら、そのデータを「どう解釈するか(分析)」のパターンに当てはめて、頭の中で高速で整理しているだけなんです。
動作観察(事実)と動作分析(原因)を完全に切り離す
まずは、あなたの頭の中の交通整理から始めましょう。明日からは「動作観察」と「動作分析」を、完全に分けて考えてください。
1. 動作観察(Observation)=【事実の確認:SOAPのO】
動作観察は、目に映る現象をカメラのようにそのまま捉える作業です。ここにはあなたの主観や「こうじゃないか?」という予測は一切入れてはいけません。「何が起きているか」という客観的な事実だけを記述します。
- 視点: 形態的な変化や、関節運動のパターンをそのまま追う。
- 内容: 「膝が内側に入っている」「歩幅が短い」「右の骨盤が下がっている」など、見たままの事実。
2. 動作分析(Analysis)=【原因の特定:SOAPのA】
動作分析は、観察で得られた「事実」に対して、「なぜその動きになってしまうのか」という背景や理由を探る作業です。
- 視点: 力学的な推論や、身体機能(ROM・MMT・神経系)との関連付け。
- 内容: 「大臀筋の筋力が足りないから骨盤が崩れるのか?」「足関節が硬いから代償動作が出ているのか?」という推論。
観察 = 事実の確認(カメラ)
分析 = 原因の特定(推論)
この順番を守ることが、動作分析マスターへの最短ルートです。

動作観察の3大ポイント:主観を捨てて「骨の動き」を追う
では、最初のステップである「動作観察」では、具体的に何を見れば良いのでしょうか。ポイントは以下の3つだけです!
① 筋肉ではなく「骨の動き」のみを追う
「どこの筋肉が働いているか」を動きながら見ようとすると、一気に難しくなります。まずは筋肉のことは忘れ、純粋に「関節運動が起きているか、いないか」の二択だけで骨の動きを追ってください。
② 動作の「運動方向(運動面)」を考える
その動作がどの運動面(矢状面・前頭面・水平面)で主に動くのかをあらかじめ考えます。そして、その動きが一番きれいに見える角度(観察面)に自分の身を置いて見ましょう。
③「動く順番」と「スピードの変化」に着目する
人間がスムーズに動くとき、関節が動く順番には必ずバイオメカニクス的な理由があります。その順番が崩れていないか(代償動作が出ていないか)を観察します。
運動方向: 主に「水平面」での動き(回旋運動)。
見るべき骨の動き: 脊柱や各ユニットの「回旋」のみを追う。
動く順番: 正常な寝返りでは、まず頭部(視線)から始まり、次に胸郭が回り、最後に骨盤がついてきます。
➔ 「頭部 ➔ 胸郭 ➔ 骨盤」の順番で各ユニットが滑らかに連動して回旋が起きているか、それとも丸太のように一塊で転がっているか、事実だけを確認すればOKです。
運動方向: 主に「矢状面」での動き(前後の屈曲・伸展)。
見るべき骨の動き: 骨盤の前後傾、股・膝・足関節の屈曲・伸展。
動く順番: まず頭部が前方へ移動し、それに伴って骨盤が前傾し、離殿へと移ります。
➔ ユニットごとに必要な運動要素が、順番通りに起きているかを横からカメラのように観察します。
これさえできれば、動作観察は100点満点です!
動作分析の極意:動かせない原因はたったの3つだけ
事実としての観察ができたら、次のステップである「動作分析(なぜできないか)」に進みます。ここで陥りがちなのが、「問題点を10個も20個もあげすぎて、結局どこから治療していいか分からなくなる」という罠です。
安心してください。人間の身体が「動かせない原因」の本質を突き詰めると、実はたったの3つしかありません。
- 関節(可動域制限・アライメントの異常)
- 筋肉(筋力低下・過緊張・出力のタイミング不全)
- 神経(感覚入力のエラー・運動プログラミングのバグ)
臨床では、この3つのどれが主原因なのかを評価で白黒つけていくだけです。深く悩みすぎる必要はまったくありません!
細かく見る前に!関節ではなく「4大ユニット」の大枠で捉える
分析をシンプルにするための最大のコツは、最初から「舟状骨が…」「前十字靭帯が…」と細かい関節一つひとつを見ないことです。人間の身体は、いくつかの関節がチームを組んで「ユニット(大枠)」として連動しています。
まずは、以下の主要な4大ユニットのどこにエラーがあるかを大きく捉えましょう。
- ① 頭頸部(ヘッドコントロールの要)
- ② 胸郭(胸椎・肋骨・胸骨・鎖骨・肩甲骨・上腕骨の連動)
- ③ 骨盤帯(股関節・骨盤・腰椎の連動 = 腰椎骨盤リズムなど)
- ④ 足部〜膝(運動連鎖の起点・接地ユニット)
動作観察のときに「骨盤帯ユニットが全然動いていないな」と大枠で目星をつける。
そこから初めて「じゃあ、股関節の硬さ(関節)かな? 大臀筋の弱さ(筋肉)かな? 感覚が鈍い(神経)のかな?」と各パーツにピントを合わせていけば、分析で迷子になることはありません。
臨床展開のリアル:観察 ➔ 分析 ➔ アプローチの実践ステップ
では、実際の臨床を想定して、「立ち上がり動作に問題がある患者様」を例に、この一連のフローを体験してみましょう!
STEP 1:動作観察(事実の確認)
横(矢状面)から立ち上がり動作をじっくりと観察します。
【確認した事実】
離殿(お尻がベッドから離れる)する際に、骨盤の十分な前傾運動が起きておらず、無理やり後方重心のまま突っ張って立とうとするため、非常に不安定である。
STEP 2:動作分析(仮説の立案)
「なぜ骨盤が前傾しないのか?」の原因を、先ほどの3つの要素からピックアップします。
- 関節の疑い: 股関節の屈曲可動域制限、または仙腸関節の可動性不足。
- 筋肉の疑い: 腸腰筋や多裂筋の出力不足、またはハムストリングスの過緊張。
- 神経の疑い: 足底や骨盤帯の荷重感覚の入力エラー。
STEP 3:評価とアプローチ(行動の選択)
立案した仮説を、実際の触診や検査(ROM・MMT)で検証します。
- ケースA(関節の問題): 股関節の屈曲ROMテストで明らかな制限を発見 ➔ 可動域訓練(ROMEx)を実施。
- ケースB(筋肉の問題): 可動域はあるのに腸腰筋の収縮が入らない ➔ お腹の奥への筋収縮の促通(筋力強化)を実施。
- ケースC(神経の問題): 可動域も筋力もあるのに、動かし方が分からず代償が出ている ➔ 足底へのタッピングや、荷重感覚を感じてもらう動作練習(神経系への感覚入力アプローチ)を実施。
アプローチを行ったら、最初と同じように立ち上がり動作を「再評価」します。骨盤の前傾がスムーズになれば、あなたの動作分析は大正解です!
まとめ:正しい動き(理想)を知ることで、誤差が見えてくる
動作分析に対して、苦手意識を持つ必要はもうありません。
まずは「骨の動き」だけをカメラのように客観的に捉えること(観察)。そして、そのエラーの原因を「関節・筋肉・神経」の3つにシンプルに仕分けして考えること(分析)。これらをユニット単位で繰り返していくことで、誰でも確実に動作分析ができるようになります。
そして、動作観察を極めるために最も重要な、最後にして最大のポイントをお伝えします。それは、「正しい動き(理想のバイオメカニクス)」をあなた自身が深く知っておくことです。
カーナビのマップが古ければ、ルートがズレていても気づけませんよね。人間の動作も同じで、あなたの中に「洗練された正常動作の基準(地図)」があって初めて、患者様の動きを見たときに「あ、正常な動きの順番からこれだけズレている(誤差がある)な」と瞬時に気づけるようになります。
構造による運動連鎖のルールを知り、感覚による運動の自動化の原則を掴む。ルール(原理・原則)が観えると、患者様の全身の問題点が綺麗な一本の線で繋がり、明日からのリハビリが劇的に面白くなりますよ!

