人材不足時代に、療法士が本当に考えるべきこと
- 人材不足の本質は「人が来ない」ことより「やりがいを感じられず辞めていく」こと。
- スタッフが「自分の関わりで利用者が変わった」と実感できる職場は、人が定着しやすい。
- 療法士が輝けば利用者はもっと幸せになる——スタッフのケアと利用者へのアプローチは地続きである。
皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。
2026年度には、全国で約25万人の介護職員が不足すると報じられています。人材不足は、もはやどのデイサービスにとっても他人事ではありません。求人を出しても来ない、せっかく育てたスタッフが辞めていく——この悩みを抱えていない管理者は、ほとんどいないのではないでしょうか。
今回は少し視点を変えて、「スタッフが辞めないデイ」をどう作るか、そしてそれが利用者さんの幸せとどうつながっているかをお伝えします。
- 人材不足の本質は「人が来ない」ことより「やりがいを感じられず辞めていく」こと。
- スタッフが「自分の関わりで利用者が変わった」と実感できる職場は、人が定着する。
- 療法士が輝けば、利用者はもっと幸せになる——これは順番が逆ではない。
「忙しさ」より「やりがいのなさ」が人を辞めさせる
スタッフが辞める理由を、私たちはつい「人手不足で忙しいから」「給料が安いから」と捉えがちです。もちろんそれも事実でしょう。けれど内山が現場で感じるのは、人を辞めさせる本当の原因は、忙しさそのものより「やりがいのなさ」のほうが大きいということです。
考えてみてください。同じ忙しさでも、「自分の関わりで、あの利用者さんが変わった」という手応えがあれば、人は踏ん張れます。逆に、毎日ただ流れ作業のように送迎・入浴・食事を回し、自分が何を生み出しているのか分からないまま消耗していけば、どんなに給料が良くても心は折れていく。
デイサービスのスタッフは、日々さまざまなストレスに直面しています。利用者さんの安全への責任の重さ、認知症の方への対応、人手不足による業務過多——。これらの負担を、「やりがい」という手応えがどれだけ支えてくれるか。内山は、ここに人材定着の鍵があると考えています。
「やりがい」は、利用者の変化から生まれる
では、やりがいはどこから生まれるのでしょうか。内山の答えはシンプルです。利用者さんが目に見えて変わること、そしてその変化に自分が関われたと実感できることです。
ここで、これまでのコラムでお伝えしてきた4次元アプローチが効いてきます。機能訓練の数値だけを追っていると、変化は分かりにくく、地味です。けれど、「あの方が、また自分でお茶を入れられるようになった」「孫と散歩に行けた」という参加レベルの変化は、誰の目にもはっきり見える。そして何より、本人の笑顔が変わる。
スタッフがその瞬間に立ち会えると、「この仕事をやっていてよかった」と心から思えます。利用者さんの参加の回復は、利用者さん自身の幸せであると同時に、スタッフのやりがいの源泉でもあるのです。だから内山は、利用者へのアプローチとスタッフのケアを、別々のものとは考えていません。両者は地続きです。
- □ スタッフが「利用者の変化」に立ち会える機会を作れているか
- □ 利用者の目標(HOPE)をチーム全体で共有できているか
- □ 小さな成功を、チームで言葉にして共有しているか
- □ スタッフの頑張りを、具体的な言葉で評価・承認しているか
- □ 失敗を責めず、「どう改善するか」を一緒に考える文化があるか
管理者が「環境」を整える
ICFで言えば、スタッフにとっての職場は「環境因子」です。そして環境は、人を活かす促進因子にも、人を消耗させる阻害因子にもなります。管理者である療法士の仕事は、スタッフが力を発揮できる環境を整えることだと内山は考えています。
具体的には、3つを意識しています。
① 日常的な観察と声かけ
「最近、元気ないね」「何かあった?」という何気ない一言が、スタッフの孤立を防ぐ。小さな変化を見逃さない姿勢が、心理的な安全網になります。
② 公平で透明な評価
頑張りを適切に評価し、言葉で伝える。成長を認め、課題は1対1で建設的にフィードバックする。これが信頼関係を築きます。
③ 心理的安全性の高いチーム作り
失敗を責めるのではなく、「どうすれば改善できるか」をチーム全員で考える文化。これが最高のセーフティネットになります。
「療法士がやりがいを持って輝けば、利用者はもっと幸せになれる」——スタッフを大切にすることと、利用者を幸せにすること。この二つは決して対立しません。むしろ、輝くスタッフがいるデイサービスでこそ、利用者さんは本当に幸せになれるのです。
- 「利用者の変化」をチームで共有する:今日あった小さな良い変化を一つ、終礼などでチーム全員に共有してみてください。やりがいは、語ることで増えていきます。
- スタッフ一人に、具体的な承認を伝える:「あの対応、すごく良かったよ」と、具体的な場面を挙げて一人のスタッフに伝えてみてください。
まとめ
- 人材不足の本質は「人が来ない」より「やりがいを感じられず辞めていく」こと。
- やりがいは、利用者の参加レベルの変化に自分が関われたという実感から生まれる。
- スタッフを活かす環境づくりと、利用者の幸せは地続きである。療法士が輝けば、利用者はもっと幸せになる。
「現場の悩みを、実践知に変える」
スタッフの定着も、利用者の幸せも、根っこは同じ「やりがいのある関わり」にあります。その手応えを生み出す視点を、全国の仲間と一緒に深めてみませんか?

