デイではできるのに家では続かない|”できる動作”を生活へ移す5つの確認

デイではできるのに、家では続かない――その差はどこにある?

デイではできるのに、家では続かない――その差はどこにある?

  • 「デイではできる/家ではしない」の差は、本人の意欲ではなく実行条件の違いかもしれません。
  • 環境・時間帯・介助習慣・不安・意味の5つの視点で条件差を確認し、一度に変える条件は一つだけにします。
  • 動作一つ・条件一つを決め、7日間で試して見直す進め方が、生活への移行を支えます。

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。

デイサービスでは、手すりを使えば一人で立てる。歩行器のかごへ荷物を入れられる。洗濯物もたためる。

ところが家族へ聞くと、「家では全然やりません」「結局、私が全部手伝っています」と言われることがあります。

こうした場面、皆さんも経験したことはないでしょうか。

このとき、「本人の意欲が低い」「家族が手を出しすぎる」と結論づけるのは早すぎます。

デイサービスと自宅では、物の高さ、時間帯、疲労、声かけ、転倒への不安、本人にとっての意味が違います。

この記事では、”できる動作”を家の生活へ移すために確認したい5つの視点と、7日間で試せる進め方を整理します。

💡 この記事の結論・ポイント

「デイではできる/家ではしない」の差は、能力ではなく実行条件の差かもしれません。

①環境、②時間帯・体調、③家族の介助習慣、④不安・手順、⑤本人にとっての意味、の順に確認し、一度に変える条件は一つだけにします。家で行う最小の動作を決め、1日目・3日目・7日目に見直します。

「できる」と「している」は同じではない

ICFでは、活動の「能力(capacity)」と、現在の環境で実際に行っている「実行状況(performance)」を分けて捉えます。

両者を並べると、本人の能力と生活場面での実行との間にある差を考えやすくなります。

デイサービスで成功したことは大切な手掛かりですが、それだけで自宅でも同じように行えるとは限りません。

また、通所介護の個別機能訓練では、おおむね3か月に1回以上の居宅訪問によって居宅での生活状況を確認し、本人・家族への説明、ケアマネジャーとの共有、目標や訓練項目の見直しを行うことが示されています。

つまり、デイの訓練室だけで完結させず、自宅での実行条件まで確かめることが重要です。

🔄 見立てを変える一言

「なぜ、家ではやらないのか」ではなく、「家では、どの条件が違うのか」と問い直します。
責任の所在より、再現できる条件を探します。

家で続かないときの5つの確認

1|環境――高さ・位置・道具は同じか

デイでは肘掛け付きの椅子、手すり、整えられた動線を使っていても、自宅では低いソファ、滑る床、遠い歩行器、重い収納扉かもしれません。

「自宅に手すりがある」だけでなく、動作開始時の姿勢、物の高さ、足元、手が届く位置、照明まで具体的に比べます。

2|時間帯・体調――最も難しい時間に試していないか

デイで練習する午前10時と、自宅で実際に必要となる起床直後や夕方では、疼痛、疲労、眠気、服薬の影響、尿意、焦りが異なります。

「いつできないか」だけでなく、「いつならできそうか」を確認し、最初は成功しやすい時間帯へ置きます。

3|家族の介助習慣――安全を守る行動になっていないか

家族が先に服を着せる、物を取る、立ち上がらせるのは、単なる過介助ではなく、過去の転倒や時間の制約から身についた安全策かもしれません。

いきなり「手を出さないでください」とは伝えず、家族が何を心配しているかを聞きます。

そのうえで、介助をゼロにするのではなく、「最初の10秒は待つ」「一工程だけ本人へ任せる」など、安心できる支援方法を一緒に決めます。

4|不安・自信・手順――体は動いても開始できるか

転倒経験があると、身体能力が戻っても自宅では動作開始を避けることがあります。また、物の準備や手順を思い出せず、最初の一歩で止まる場合もあります。

「怖さは0〜10でいくつか」「最初に何をすればよいか分かるか」を確認し、目印、短い声かけ、物品配置で開始を支えます。

5|本人にとっての意味――その動作を家でする理由があるか

訓練としてタオルをたためても、家では家族のやり方が決まっており、本人の役割になっていないことがあります。

反対に、「孫が来る日にお茶を出したい」「自分の上着は自分で選びたい」というHOPEにつながれば、同じ立位や上肢操作でも意味が変わります。

動作そのものではなく、その先で取り戻したい役割や過ごし方を聞きます。

📋 5つの確認|質問例と変える条件

① 環境
質問例:デイと家で、高さ・位置・道具は何が違う?
変える条件の例:椅子高/物の置き場/手すり

② 時間・体調
質問例:一日のうち、いつなら行いやすい?
変える条件の例:時間帯/休憩/動作量

③ 介助習慣
質問例:家族は何を心配し、どこまで手伝う?
変える条件の例:待つ時間/任せる一工程

④ 不安・手順
質問例:怖さと、最初の一歩で迷う点は?
変える条件の例:短い合図/目印/手順カード

⑤ 意味・HOPE
質問例:できたら、誰と何をしたい?
変える条件の例:役割/楽しみ/必要な生活場面

※5項目を一度に変更せず、最も影響が大きい条件を一つ選びます。

7日間で生活へ移す進め方

  1. 生活の中で必要な動作を一つ選ぶ。
    「立位練習」ではなく、「午後に自分のタオルを一枚たたむ」まで具体化します。
  2. デイでできた条件を書く。
    椅子高、道具の位置、声かけ、時間帯、介助量を観察事実として残します。
  3. 自宅との違いを5つの確認で比べる。
    本人と家族の話、可能なら居宅訪問の所見を合わせます。
  4. 変える条件を一つ決める。
    物を置く高さ、行う時間、家族の待ち方など、一つだけそろえます。
  5. 最小の行動を合意する。
    全部ではなく、一工程・一回・一分から始めます。
  6. 支援方法をそろえる。
    本人、家族、介護職、ケアマネジャーへ、行う条件と中止基準を共有します。
  7. 1日目・3日目・7日目に確認する。
    成功回数だけでなく、痛み、不安、疲労、本人と家族の負担を見て、継続・修正・中止を決めます。
⚠️ 一条件だけ変える

同時に椅子、時間、声かけ、回数を変えると、何が役立ったか分かりません。
最初の7日間は一つの条件に絞り、うまくいかなければ本人の努力を増やす前に条件を見直します。

よくある4つのつまずき

  • 「デイでできた=家でもできるはず」と考える
    → 切り替える視点:成功した能力ではなく、成功した条件まで持ち帰ります。
  • 家で続ける運動だけを追加する
    → 切り替える視点:運動量より先に、実際の生活動作と場面を一つ決めます。
  • 家族へ急に「手伝わないで」と伝える
    → 切り替える視点:家族の不安を確認し、介助を一工程ずつ置き換えます。
  • 複数の課題を同時に直す
    → 切り替える視点:7日間は動作一つ、条件一つ、確認者一人を基本にします。

ミニ事例|タオルを一枚だけ、自宅で

※以下は説明用の架空事例です。

80代女性。デイサービスでは、歩行器のかごからタオルを取り出し、立位で物干しへ掛けられました。しかし娘からは、「家では危ないと言って、洗濯物には触らせていません」と聞きました。本人も「娘が早いから任せる」と話していました。

5つの確認を行うと、自宅の洗濯かごは床にあり、起床直後は股関節痛が強いこと、過去の転倒以来、娘が立位動作を止めていることが分かりました。また、本人にとって”洗濯練習”自体には魅力がありませんでしたが、「自分のタオルくらいは自分で干したい」という希望がありました。

そこで最初の7日間は、午後に軽いタオルを一枚だけ、椅子の座面高へ置いたかごから取り、歩行器のブレーキを確認して物干しへ掛けることにしました。娘はすぐに手を出さず、横でブレーキ確認の一言だけを伝えます。

1日目は不安が強く途中で中止、3日目は一連の動作が可能、7日目には本人から「今日は私がする」という発言がありました。次週は枚数を増やすのではなく、同じ条件で安定して行えるかを確認することにしました。

明日からできるアクションプラン

🏃‍♂️ 成功した条件を一文で書く

次にデイで生活動作ができたとき、「できた」で終わらず、[時間帯][場所・道具][声かけ][介助量][本人にとっての意味]を一文にしてください。

その一文を本人・家族と比べ、自宅と違う条件を一つだけ選びます。

まとめ

  1. デイでの「できる」と、自宅での「している」は分けて考える。
  2. 環境、時間・体調、介助習慣、不安・手順、意味・HOPEの5つで条件差を見る。
  3. 動作一つ、条件一つ、7日間で試し、本人と家族の負担も含めて見直す。

そのまま使える記録シート|7日間・生活移行シート

“できる動作”を一つ選び、自宅で再現する条件を一つだけ決めて使用します。

生活で行う動作:____________

本人のHOPE・行う意味:____________

デイでできた条件(時間/場所・道具/声かけ/介助):____________

  • ☐ 環境:____________
  • ☐ 時間帯・体調:____________
  • ☐ 家族の介助習慣:____________
  • ☐ 不安・自信・手順:____________
  • ☐ 意味・HOPE:____________

変える条件は一つ:____________

最小の行動:____________

支援者/支援方法/中止基準:____________

経過を確認

1日目:____________ / ____________

3日目:____________ / ____________

7日目:____________ / ____________

7日目の判断:☐ 継続 ☐ 条件を修正 ☐ 中止 ☐ 追加評価  次の確認日:

本記事・付録は教育目的です。実施にあたっては、本人の医学的状態と意向、家族の状況、所属事業所の基準、多職種の判断を踏まえてください。

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この記事の執筆・監修

執筆:内山 遼太(作業療法士)生活期・慢性期・終末期

監修:大塚 久(理学療法士・療法士活性化委員会 代表)