嗅覚低下はADLにどう影響するのか?OT視点で考える
- 嗅覚低下は「ガス漏れ・火災・食品腐敗」など命に関わる危険察知を遅らせるリスクがある
- 食欲低下・低栄養、体臭・衛生管理の悪化など、生活の質(QOL)や対人関係にも直結する
- OTの支援の鍵は「警報器による代償」と「衛生管理のルーティン化・視覚化」にある
みなさんこんにちは。作業療法士の仲田です。今回は、「嗅覚編」についてお伝えできればと思います。実際にZoomのナイトセミナーで「OTしゃべり場」というADLなどを話し合う場で出てきた五感(嗅覚編)についてを一部お伝えしていきます。
「匂いが分からない」ことのリスクをOT視点で整理する

さくら
先生、今回は『嗅覚』について教えて下さい!匂いが分からないと困るのはなんとなく分かりますが、OTとしてはどう生活に結びつけて考えればいいですか?

仲田
前回の味覚の時にも少し触れましたが、嗅覚も『命に関わる危険察知』と『生活の質(QOL)』に直結する重要な感覚なんです。

さくら
危険察知というと、やっぱりガス漏れとかですか?

仲田
その通りです!ガス漏れや、鍋の空焚き、火事の焦げ臭い匂いに気づけないのは、命に関わる大きなリスクです。また、味覚と同様に『食べ物の腐敗臭』に気づけず、傷んだものを食べて食中毒になる危険性もあります。

さくら
たしかに、匂いは目に見えない危険を一番早く教えてくれるアラームですもんね。生活の質(QOL)の面ではどんな影響がありますか?
⚠️ 嗅覚低下がQOLに与える2つの主な影響
- 食事の風味・食欲への影響:嗅覚が落ちると何を食べても美味しく感じにくくなり、食欲低下・低栄養に繋がりやすい
- 衛生管理の悪化:自身の体臭・排泄物・生ゴミの臭いに気づきにくくなり、対人関係・社会参加に影響する

仲田
『風味』という言葉があるように、人間は食事の美味しさの大部分を嗅覚で感じています。鼻をつまんで食べると味がしないのと同じで、嗅覚が落ちると何を食べても美味しく感じず、食欲低下や低栄養に繋がりやすいんです。

さくら
なるほど。他にはどんな困りごとがありますか?

仲田
実はとても多いのが、『自分自身の体臭』や『排泄物の臭い』『生ゴミの臭い』に気づきにくくなることです。

さくら
ああっ!気づかないうちに不衛生な状態になってしまうんですね……。それは対人関係や社会参加にも影響しそうです。

仲田
そうなんです。だからこそOTは、訪問や面談の際に『衣服や部屋の臭いが気にならないか』『ゴミが放置されていないか』など、環境面から嗅覚低下のサインを観察します。ご本人は気づいていないことが多いので、デリケートな配慮が必要な部分でもあります。
OTとしての具体的なアプローチ・環境調整

さくら
アプローチや環境調整としては、どんなことを提案すればいいですか?

仲田
まず安全面では、警報器(ガス漏れ警報器、火災報知器)が適切な場所に設置され、鳴った時に本人が気づけるか(聴覚に問題はないか)を確認します。耳も遠い場合は、光で知らせるタイプの機器への変更を提案します。

さくら
機器を使って、嗅覚を視覚や聴覚で代償するんですね!衛生面はどうですか?

仲田
『臭くなったら洗う・捨てる』という自分の感覚に頼れなくなるので、『ルーティン(習慣)化』することが鍵になります。

さくら
ルーティン化、ですか?
✅ 衛生管理のルーティン化・視覚化の例
- 「週に〇回は必ず入浴する」
- 「下着は毎日必ず替える」
- 「生ゴミは臭くなくても火曜と金曜に捨てる」
- カレンダーやホワイトボードを使って視覚化する
👉 「臭い」という曖昧な基準を、「日数・曜日」という明確なルールに置き換えることがポイント

仲田
はい。例えば『週に〇回は必ず入浴する』『下着は毎日必ず替える』『生ゴミは臭くなくても火曜と金曜に捨てる』といった明確なルールを作り、カレンダーやホワイトボードを使って視覚化します。

さくら
臭いという曖昧な基準を、日数や曜日という明確なルールに置き換えるんですね!すごく腑に落ちました。

仲田
他にも質問等あれば療活の時に実際の物をみせますね。

さくら
ありがとうございます。五感シリーズ、すべてがADLに繋がっていて本当に勉強になりました!
まとめ
📌 今回のポイント3つ
- 嗅覚の低下は「ガス漏れ・火災・腐敗」などの危険察知を遅らせる
- 「食欲低下(低栄養)」や、「自身の体臭・衛生管理の悪化(対人関係への影響)」に繋がる
- 支援の鍵は「警報器での代償」と「衛生管理のルーティン化(視覚化)」
いかがだったでしょうか。視野が広がり少しでも役に立てたのなら幸いです。五感シリーズは今回で完結となりますが、これまでの内容が日々の臨床のヒントになれば嬉しいです。

