肩の後ろが痛いとき、どの筋を疑う? 肩関節後面痛を機能解剖から整理する

肩の後ろが痛いとき、どの筋を疑う?肩関節後面痛を機能解剖から整理する
  • 肩関節後面には棘下筋・小円筋・三角筋後部・大円筋・広背筋・上腕三頭筋長頭など複数の筋が走行しており、それぞれ疼痛に関与しうる組織として候補となる。
  • 「この場所が痛い=この筋が原因」と決めつけず、圧痛・収縮・伸張・実際の動作で症状がどう変化するかを確認することが重要。
  • 筋だけでなく、肩甲上神経障害など神経・関節・関節唇への鑑別も忘れずに検討する。

こんにちは、理学療法士の赤羽です。

臨床で患者さんから「肩の後ろが痛い」と訴えられたとき、どのような組織を思い浮かべるでしょうか?

肩関節後面には、棘下筋、小円筋、三角筋後部、大円筋など複数の筋が存在しています。さらに下方へ目を向けると、広背筋や上腕三頭筋長頭も肩後面〜腋窩周囲を走行しています。

骨格筋には、侵害受容機構が存在します。そのため、筋や筋腱も疼痛に関与しうる組織です。

ただし、「この場所が痛い=この筋が原因」とは限りません。

そのため、疼痛部位から候補となる筋を考え、圧痛・収縮・伸張・実際の動作で症状がどう変化するのかを確認していくことが重要です。

① 棘下筋

肩後面の中心を大きく占めるのが棘下筋です。

棘下筋は肩甲骨の棘下窩から起こり、上腕骨大結節へ停止するローテーターカフの一つです。主に肩関節外旋に関与するとともに、上腕骨頭の安定化にも関与します。

そのため、肩甲棘より下方の肩甲骨後面から上腕骨頭後外側周囲に症状がある場合には候補となります。

評価では、棘下窩周辺の圧痛だけでなく、以下を確認します。

  • 肩関節外旋への抵抗によって「いつもの痛み」が再現されるか
  • 反対方向の内旋・水平内転によって症状が変化するか(伸張負荷との関係)

棘下筋の走行と圧痛部位の図

② 小円筋

小円筋は肩甲骨外側縁から起こり、上腕骨大結節下部付近へ停止します。

棘下筋より下方に位置し、こちらも肩関節外旋に関与します。そのため、肩後面のやや外側〜後腋窩付近に症状がある場合には候補になります。

評価では、外旋抵抗運動に加えて、3rdポジションでの外旋等も確認します。

棘下筋と小円筋は機能的にも解剖学的にも近接しているため、臨床で完全に分離して評価することには限界があります。

③ 三角筋後部

肩後面を表層から覆っているのが三角筋後部です。

三角筋後部は肩甲棘から起こり、上腕骨の三角筋粗面へ停止します。肩関節伸展などに関与します。

そのため、肩後面に比較的表在性の圧痛があり、肩関節伸展への抵抗で症状が変化する場合には評価対象となります。

④ 大円筋

小円筋のさらに下方には大円筋があります。

大円筋は肩甲骨下角付近から起こり、上腕骨小結節稜へ向かって走行します。肩関節内旋・内転・伸展などに関与します。

したがって、肩後面下方〜後腋窩周囲に疼痛があり、以下で症状が再現される場合には候補となります。

  • 肩関節内転・内旋・伸展方向への抵抗

⑤ 広背筋

広背筋は胸腰部から起こる非常に大きな筋で、上腕骨小結節稜へ停止します。

肩関節では主に伸展・内転・内旋に関与するため、症状が肩後面から後腋窩〜上腕近位内側へ及ぶ場合には候補になります。

⑥ 上腕三頭筋長頭

もう一つ忘れやすいのが上腕三頭筋長頭です。

長頭は肩甲骨の関節下結節から起こり、肩関節をまたいで上腕後面を下降します。そのため、肩後面下方から上腕後面にかけての症状では候補になります。

以下の組み合わせで症状が変化するかを確認します。

  • 肩関節伸展や肘伸展への抵抗
  • 肩屈曲と肘屈曲を組み合わせた複合肢位での伸張(症状の変化を確認)

「後ろが痛い=後方の筋」と決めない

最後に重要なのは、肩後面痛をすべて筋で説明しないことです。

例えば、肩甲上神経の障害では後方痛に加えて棘下筋の筋力低下や萎縮を認める場合があります。

だからこそ、以下の流れを意識することが重要です。

  1. 疼痛部位を確認する
  2. その部位に存在する筋・筋腱を考える
  3. 圧痛を確認する
  4. 収縮・伸張で負荷を変える
  5. 患者さんの「いつもの痛み」が再現されるか確認する
  6. 神経・関節・関節唇など他組織の可能性も検討する
  7. 実際の目的動作との関連を確認する
ポイント:仮説を立てるために機能解剖を使う
どの組織に、どのような負荷が加わったときに患者さんの症状が生じるのか。その仮説を立てるために機能解剖を活用することが、肩関節後面痛を評価する第一歩になります。

まとめ

  • 棘下筋:棘下窩〜上腕骨大結節。外旋抵抗・内旋伸張で評価
  • 小円筋:肩甲骨外側縁〜大結節下部。棘下筋と近接するため分離評価には限界あり
  • 三角筋後部:肩甲棘〜三角筋粗面。表在性圧痛・伸展抵抗で評価
  • 大円筋:肩甲骨下角〜上腕骨小結節稜。内転・内旋・伸展抵抗で評価
  • 広背筋:胸腰部〜上腕骨小結節稜。後腋窩〜上腕近位まで症状が及ぶ場合に候補
  • 上腕三頭筋長頭:関節下結節から起こり上腕後面を下降。肩後面下方〜上腕後面の症状で候補

本記事が、日々の臨床の一助となれば幸いです。

参考文献

  • 監訳:坂井建雄,松村譲兒.プロメテウス解剖学アトラス 解剖総論/運動器系,第3版,医学書院

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この記事の執筆・監修

執筆:赤羽 利輝(理学療法士)運動器・疼痛

監修:大塚 久(理学療法士・療法士活性化委員会 代表)