皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。
今回は、デイサービスでよく相談を受けるテーマ、「個別訓練の15分で何をすればいいか」について考えていきたいと思います。よろしくお願いします。
- 15分は「目標確認2分→焦点評価3分→課題練習6分→再評価2分→共有2分」の流れで設計できる(あくまで一例です)。
- HOPE・工程・仮説・介入・指標をそれぞれ一つに絞ることで、短時間でも生活目標へ近づける。
- 最後の2分で本人の実感と再現条件を共有し、デイの外の生活へつなげることが大切です。
種目を詰め込むより、生活から削る
「個別訓練の時間が15分しかない。立ち上がり、歩行、筋力訓練、バランス練習まで行うと、利用者さんの話を聞く時間も、生活へつなげる時間も残らない。」
デイサービスで働き始めた療法士から、こうした悩みをよく聞きます。
短時間で成果を出そうとすると、つい種目を詰め込みたくなります。しかし、種目が多いほど生活目標に近づくとは限りません。
大切なのは、本人が取り戻したい生活から逆算し、その日に確かめる課題を一つに絞ることです。この記事では、15分を一つの設計例として、HOPEを評価・介入・共有へつなぐ方法を整理します。
15分は、①今日の生活目標を確認する2分、②ボトルネックを確かめる3分、③生活動作に近い練習を行う6分、④条件を調整して再評価する2分、⑤本人と職員へ共有する2分、に分けることが考えられます。
筋力・関節・バランスは目的ではなく、HOPEの実現を妨げる一要因として扱う視点が参考になります。
15分を埋めるのではなく、生活目標から削る
厚生労働省の通知では、通所介護の個別機能訓練目標は、利用者のニーズ、日常生活・社会生活での役割、心身の状態を踏まえて設定し、心身機能・活動・参加の各段階を含めることが示されています[1]。
また、計画は機能訓練指導員だけで完結させず、他職種で共同して作成し、進捗に応じて見直します。
これは、15分すべてを身体機能訓練に使うという意味ではありません。本人にとって重要な生活行為を定め、その遂行を妨げる要因を見つけ、必要な要素へ時間を配分するということです。
ICFも、生活機能を心身機能だけでなく、活動・参加と環境因子の相互作用として捉えます[2]。
「今日は何を何回行うか」より先に、
「この15分で、どの生活場面の何を前へ進めるか」を一文にします。
HOPEから逆算する5ステップ
1|HOPEを生活場面へ翻訳する
「歩けるようになりたい」「家事をしたい」だけでは、15分の焦点が定まりません。誰と、いつ、どこで、何をしたいのかを尋ねます。
たとえば「歩きたい」を、「朝、自分で仏壇までお茶を運びたい」まで具体化します。
2|必要な工程を一つに絞る
生活行為を最初から最後まで練習する時間がない場合は、現在もっとも止まりやすい工程を選びます。
- 湯のみを持つ
- 椅子から立つ
- 方向転換する
- 数歩運ぶ
- 台へ置く
このように工程を分け、観察事実から優先順位をつけます。
3|ボトルネックの仮説を一つ立てる
下肢筋力、疼痛、立位バランス、注意、手順、道具の位置、不安、介助者の声かけなど、原因候補は複数あります。
ただし、その15分で同時に検証する仮説は一つにします。「歩けない」ではなく、「湯のみを持つと支持物がなくなり、方向転換で足が止まる」のように記述します。
4|生活動作に近い介入を選ぶ
筋力訓練や関節運動が必要な場合も、生活行為とのつながりを明確にします。
立ち上がりを10回行うのではなく、仏壇前の椅子高に近づけ、湯のみを置く位置を再現して、必要な立ち上がりと方向転換を練習します。
作業療法では、本人が望み必要とする日常活動への参加を中心に据えることが重視されています[3、4]。
5|一つの指標で再評価する
評価指標を増やしすぎると、変化が見えません。所要時間、介助量、手すりから手を離した回数、ふらつき、疼痛、不安の自己評価などから、その日の仮説に合う一つを選びます。
介入前後を同じ条件で比べ、次回の判断材料にします。
HOPE
決めること:誰と・いつ・どこで・何を
記述例:朝、自分で仏壇へお茶を供える
工程
決めること:最も止まる一場面
記述例:湯のみを持った方向転換
仮説
決めること:今日確かめる一要因
記述例:支持物がなくなると足が止まる
介入
決めること:生活場面に近い練習
記述例:台の位置と運搬方法を変えて反復
指標
決めること:前後で比べる一項目
記述例:見守りで完了できた回数
15分の基本配分――2・3・6・2・2
0〜2分|目標確認
今日の体調と、取り組む生活場面を本人と確認
2〜5分|焦点評価
一工程を観察し、仮説に必要な所見だけ取る
5〜11分|課題練習
生活に近い条件で反復し、介助を調整
11〜13分|条件変更・再評価
道具・位置・声かけを一つ変えて同じ指標で比較
13〜15分|共有
本人の実感、次回までの一行動、職員の支援方法をそろえる
※この配分は制度上の一律要件ではなく、限られた時間を設計するための一例です。利用時間、医学的状態、事業所基準に応じて調整してください。
この配分のポイントは、説明と訓練を分けないことです。評価中に本人の感覚を聞き、練習中に成功条件を見つけ、最後の2分で次回までの生活へ接続します。
状態変化や安全上の懸念があれば、時間配分よりも観察・中止・多職種連携を優先します。
15分を機能させる5つのルール
- 生活目標は一つ:一回の訓練で扱う生活場面を一つに絞る。
- 仮説も一つ:筋力・痛み・環境など、今日検証する主因を一つ決める。
- 指標は一つ:前後で同じ条件、同じ尺度を使って変化を見る。
- 変更条件は一つ:高さと声かけを同時に変えず、何が効いたか分かるようにする。
- 共有文は一文:「○○なら△△できた。次回まで□□する」で本人と職員へ伝える。
よくある5つのつまずき
- 毎回、全身を一通り動かす
→ 生活目標に影響する部位・要因へ優先順位をつける。 - HOPEを計画書に書いて終わる
→ その日の工程、仮説、指標までHOPEからつなげる。 - 評価に時間を使い切る
→ 全項目ではなく、仮説を判断できる所見だけを取る。 - 介入前後の条件が違う
→ 椅子高、道具、介助、指示をそろえて比較する。 - 療法士だけが分かっている
→ 介護職と家族が再現できる一文にして残す。
ミニ事例|仏壇へお茶を運びたい
※以下は説明用の架空事例です。
80代男性。デイサービスでは平行棒内を歩けますが、自宅では娘が毎朝、仏壇へお茶を供えていました。本人へ尋ねると、「それくらいは自分でしたい」と話しました。
そこでHOPEを「朝、居間の椅子から立ち、湯のみを仏壇へ運んで置く」と具体化しました。
初回の15分では、空の湯のみを使い、椅子から仏壇までの一部を再現しました。歩行速度よりも、湯のみを持って方向転換すると右手の支持を失い、足が止まることがボトルネックでした。
仮説を「支持物のない方向転換への不安」に絞り、湯のみを小さなトレーへ置き、左手で固定台を触れられる位置へ調整して練習しました。
介入前は方向転換で身体介助が必要でしたが、条件変更後は見守りと一度の声かけで行えました。
記録は「固定台へ左手を添え、トレーを仏壇側へ先に置けば、見守りで方向転換できた」と一文にし、介護職へ共有しました。
次回は同じ条件で再現性を確認し、居宅での動線と熱い飲み物を扱う安全性は家族・ケアマネジャーと検討することにしました。
担当する利用者さん一人について、
「[生活場面]を実現するため、今日は[一工程]の[一要因]を確かめる」
と書いてから介入してください。
終了後は、「[条件]なら[結果]だった」を一文追加します。
まとめ
- 15分を種目で埋めず、本人が取り戻したい生活から逆算する。
- HOPE、工程、仮説、介入、指標を一本につなぎ、それぞれ一つに絞る。
- 最後の2分で本人の実感と再現条件を共有し、デイの外へつなげる。
そのまま使える記録シート|15分・個別訓練プログラム設計シート
HOPEから一つの生活場面を選び、その日に検証する仮説と指標を絞って使用します。
今日扱う一工程:____________
ボトルネックの仮説を一つ:____________
前後で比べる指標を一つ:____________
0〜2分|目標確認:____________
2〜5分|焦点評価:____________
5〜11分|課題練習:____________
11〜13分|変更・再評価:____________
13〜15分|共有:____________
成功した条件「○○なら△△できた」:____________
次回までの一行動:____________
共有相手・支援方法・中止基準:____________
次回の判断:
□ 同条件で再現性を確認 □ 仮説を修正 □ 生活場面を変更 □ 多職種へ相談
本記事・付録は教育目的です。時間配分は一例であり、医学的状態、本人の意向、事業所の基準、人員配置、多職種の判断を優先してください。
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