- 院内サンダルの構造不良(踵のホールド不足・厚底・前滑り)は、セラピスト自身の過回内・浮き指・腰痛リスクを高める可能性がある。
- サンダル選びの3条件は「硬いヒールカウンター」「トウスプリング(つま先の反り)」「足首手前までの固定ストラップ」。
- 今夜できる3ステップ自己検診(踵の傾き・歩音・指の丸まり)でまず自分の足元を評価してみよう。
日々の臨床お疲れ様です。
患者様の「歩行」や「立位アライメント」を評価する際、なんとなく「足元が崩れているな」「インソールが必要かな」と熱心に分析していませんか?
では、そうやって患者様の足元を厳しくチェックしているあなた自身の足元(ナースサンダルや院内シューズ、プライベートのサンダル)は、果たしてどうでしょうか?
「脱ぎ履きが楽だから」「クッション性が高くて気持ちいいから」という理由だけで、ガバガバの樹脂製サンダルや、かかとのないスリッパを選んでいませんか?
【事実】
日常的・臨床現場で不適切なサンダルを履き続けると、踵骨のコントロールを失い、足底の変形や歩き方の異変(過回内、偏平足、ハンマートゥなど)を引き起こす可能性があり、上行性運動連鎖によって深刻な職業性腰痛や膝痛の原因になり得る。
【解釈】
セラピストのサンダルには、体重移動や介助時の床反力から身体を守る「予防(守り)」と、足底のセンサーや足指の機能を育てる「機能促通(攻め)」の両面が必要。ラクさ優先の樹脂製サンダルはこれらを著しく阻害する。
【行動】
今夜の勤務後、自分自身の足首の傾きや足指の丸まり(代償動作)をチェックし、次回からは「硬いかかと芯」「つま先の反り」「足首手前のホールド」が揃ったスニーカー構造のサンダルを選んで自分自身の身体に投資する。
院内履き、サンダル選びに必要な考え方
そもそも、なんで構造の悪いサンダルを履き続けると、歩き方がおかしくなり、セラピストの身体がボロボロになっていくのか?
日々の過酷な荷重ストレスによって簡単にアライメントが崩れるということです。1日何千歩、何万歩と病院や施設内を動き回り、さらに患者様の体重を全介助で支えるリハ職の足元には、毎日信じられないほどの床反力が加わっています。
ここで、巷で大人気の「ガバガバした樹脂製サンダル」(名前は言えません)、皆さんも職場の院内履きやプライベートで履いていませんか?
あれ、実は「予防(守り)」もできないし「機能促通(攻め)」もできない、お互いの悪いとこ取りをした構造になりがちなんです。
私もほんとにスリッパ感覚でちょっとそこまで行くときには使ってはいますが……臨床でメインで履くのは避けた方が無難です。

ちなみに、同じ樹脂製サンダルでも品質にはかなり差があります。
靴底を両手で持って真ん中で折ろうとしたとき、シャンク(芯材)のような役割が働いて、真ん中では「折れない」ものが多い傾向があります。
一方で、品質が低いものや経年劣化したものだと、真ん中で簡単に「グニャリ」と折れ曲がっちゃいます!!
これじゃあ、歩行の立脚後期(Terminal Stance)で足部が剛体化せず、前に進むための推進力が床に伝わらないんですよね……。
何がダメなのか考えてみましょう 〜感覚入力を減弱させる厚底〜
先に言っときますけど、私はあの樹脂製サンダルを全面批判したいわけではないです。実際に自分も使っているし、あの手軽さは最高です。
でも、「足の機能・評価の基準」という目で見たとき、あれは「ただのプラスチックスリッパ」になっちゃっているケースが多いんですよね。
なぜか?
車を運転する方はやってみると分かりますが、あの手のサンダルってホントに運転しにくいですよね!!
ブレーキやアクセルの踏み込み加減が分かりにくいハズです。
これはサンダルのメリット(衝撃吸収)の裏返しでもあるんですが、靴底が「柔らかすぎる」「厚すぎる」これが原因です。

底が厚くて柔らかすぎると、足の裏にある膨大な受容器(マイスナー小体やパチニ小体など)への「足底の感覚入力」が著しく減弱する可能性があります。床がどうなっているのか、自分の重心が足裏のどこにあるのかという情報が脳にフィードバックされにくくなります。
皆さんなら分かりますよね。この足底からの感覚入力こそが、姿勢制御における「歩きの土台」なんです。
便利さや安さと引き換えにしているものが、セラピスト自身の、そして患者様のお手本となるべき「一生モノの身体の土台」だとしたら、私たちはプロとして少し立ち止まるべきだと思いませんか!
「サンダルの3大条件」
じゃあ、一体私たちは何を基準に自分のサンダルを選べばいいのか。
普段の臨床での靴選びのアドバイスや、自分自身のシューズ選びで必ずチェックして欲しいポイントは3つだけです!
① かかとに「カチカチの反発」があること
お店でサンダルを手に取ったら、まずは「かかとのパーツ(ヒールカウンター)」を親指と人差し指でギュッと挟んでみてください。
ここで「グニャッ」と簡単に潰れてしまうものは、プロとしてそっと棚に戻しましょう。
柔らかい足部のアライメントを真っ直ぐ立たせるための「硬さ(カウンター)」は重要条件なんですよ!
これがないと、歩行の初期接地(Initial Contact)から荷重応答期(Loading Response)にかけて、踵骨の過回内(オーバープロネーション)を制御できなくなります。結果として足首が内側に倒れ込んで、将来ペタンコの偏平足になっちゃうリスクが跳ね上がります。
② つま先が少し空を向いていること(目安:5ミリ〜1センチ程度)
サンダルを平らな棚の上にポンと置いてみてください。つま先が地面にペタッとくっついていなくて、少しだけフワッと浮いているか(トウスプリングがあるか)どうかがポイント!
私たち人間は、疲れてくると大人であってもスマートに足関節を背屈させて蹴り出せなくなり、どうしてもすり足(クリアランス低下)になりがちです。
最初からつま先が少し上を向いている構造(フォアフット・ロッカーの補助)ならば、臨床現場のちょっとした段差やベッドのキャスター、コード類に引っかかる確率を物理的に減らせます。
③ 「足首の手前」まで太いベルトで締められること
これ、足の前滑りを防ぐためにめっちゃ大事。
つま先側にしかストラップがないサンダルだと、歩いたり、患者様をベッドから車椅子へ移乗介助するために踏ん張ったりした瞬間に、足が前にズズッとズレちゃいます。
足の甲の一番高いところ(足首のすぐ手前、ウェッジのライン)をガッチリ固定できるかどうかが鍵ですね。サンダルと足部が一体化することで、遊脚期(Swing Phase)に無駄な筋活動を起こさずに済みます。
足首の前までベルトが伸びている、3点固定のスポーツサンダル系の形が圧倒的におすすめです!
服や一般的な消耗品は小さくなったり古くなったりしたら買い替えられますが、一度歪んで変形してしまった自分自身の骨格や関節軟骨は、いくらお金を出しても元には戻せないんです。
NGサンダルを履き続けると、将来どうなる?
「まぁ、職場の中だけだし、少しくらい構造が悪いサンダルでも大丈夫でしょ」
そう思って足の疲れを放置していると、セラピストとしての寿命を縮める代償を払うことになりかねません。
一生モノの「ペタンコ偏平足」になる可能性
かかとが守られないサンダルを履き続けると、距骨下関節が回内位で固定され、舟状骨が降下します。これがクセになると土踏まずが消えます。土踏まずがない足は、クッション(サスペンション)がない車と同じです。
将来、ちょっと臨床で立ちっぱなしだっただけで「足の裏が痛い」「疲れちゃってこれ以上介助できない」と悲鳴を上げる身体になってしまいます。
足の指が変形する「ハンマートゥ(浮き指)」
ガバガバのサンダルやスリッパを履いているとき、自分の足の指がどうなっているかじっくり意識したことがありますか?
実は、歩行の遊脚期にサンダルが脱げそうになるのを防ぐために、無意識に足の指をギュッと丸めて、サンダルにしがみつくようにして歩いている(把握代償)ことがめちゃくちゃ多いです!
これが続くと、長趾屈筋などが過緊張を起こして指が丸まったまま固まり(ハンマートゥ)、裸足になっても地面をちゃんと蹴れない「浮き指」が完成します。
O脚・X脚、そして将来の「深刻な反り腰・頭痛」へ
足元は、体全体の「土台」です。皆さんなら耳にタコができるほど聞いているであろう「上行性運動連鎖(Ascending kinetic chain)」そのものです。建物の基礎が傾いていたら、上の階も全部歪みますよね。
足首が内側に歪むと、下腿は内旋し、膝関節がねじれ、大腿骨の内旋を介して骨盤が前傾し、最終的に腰椎が過前弯して「ものすごい反り腰」になります。
臨床現場での適当なサンダル選びが、数年後のあなたの深刻な職業性腰痛や坐骨神経痛、さらには肩こりや緊張性頭痛のリスク要因の一つになり得ると私は考えています。
10年後に「もっと早く自分の足元に投資していれば、こんなヘルニアにならずに済んだのに」と後悔する前に、今すぐ自分の足元を評価してみましょう。
今日の夜すぐできる「セラピストの自己検診」
ここまで読んで、「え、私が今職場で履いているナースサンダル(クロックス)、大丈夫かな……」って不安になっちゃいましたか?
素晴らしい気づきだと思いますよ!その危機感こそが臨床の眼を養います。
新しいサンダルを買いに行く前に、今日お家や職場のリハ室ですぐできる簡単な「3ステップ自己検診」をやってみましょう!
今夜、勤務が終わって着替える前に、そのサンダルを履いたまま鏡の前に立ってみてください。

チェック1:後ろから見て、足首が「くの字」に曲がっていないか?
鏡に映した自分のかかと、あるいはアキレス腱のラインを観察します。
踵骨が内側にぐにゃっと折れて「くの字」に歪んでいませんか?
真っ直ぐ垂直(ニュートラル)に立っていれば合格です!
チェック2:歩いたとき、つま先が「ペタペタ」音を立てていないか?
リハ室の床や廊下を歩いてみて、「ペタ、ペタ」と足の裏全体で床を叩くような大きな音がしていたら、ローリングイン(ロッカー機能)が使えず、足関節の機能が十分に発揮されていないサインです。
チェック3:脱いだ直後、足の指が「ギュッ」と丸まっていないか?
これ、セラピストに一番よくあります。サンダルを脱いだ直後の足の指が、お化けの手みたいに内側に丸まって固定されてないですか?
もし丸まっていたら、靴の中で足が前滑りして、無意識に指でサンダルにしがみついている(屈筋群の過活動)サインです。
もし1つでも当てはまるなら、次の休日は自分自身の新しいサンダル(相棒)探しに出かけてみましょう!
実際に自分の身体でやってみると、「あ、私が普段履いている履き物のせいで、こんな代償動作が出ていたんだ」ということがリアルに分かってビックリするはずです😳
自分の足裏をマッサージしながら、「今日も一日、何タイプもの介助をがんばって支えてくれたな」って触ってあげるだけでも、立派な自己評価でありケアになります。
[感覚入力と運動連鎖シリーズ 講習会ラインナップ]
- 運動連鎖の基礎:身体のつながりを紐解く
- 構成運動を考えたROM訓練:関節可動域を劇的に変えるアプローチ
- 感覚入力、運動療法でバランス向上:足底から変える姿勢制御
- 歩行に対する感覚入力と運動療法:スムーズな推進力を創り出す
- 靴の評価と補正:患者様の「動的土台」を作り直す
- テーピング基礎:即時効果を出すための臨床テクニック
本講習会では、「事実・解釈・行動」の3ステップを用いて、明日からの臨床が100倍楽しくなる思考法と、その場で変化を出せる実技をたっぷりお伝えします。
「患者様の歩行を本気で変えたい」「自分の臨床の武器を増やしたい」という熱い想いを持ったセラピストの皆様、ぜひ一緒にディープなリハビリの世界を学びましょう!セミナー会場であなたにお会いできるのを楽しみにしています。

