脳卒中片麻痺の箸練習、補助箸の選び方で結果が変わる|OT解説

脳卒中片麻痺の箸練習、補助箸の選び方で結果が変わる

みなさんこんにちは。作業療法士の仲田です。

今回は、回復期リハビリテーション病院の療法士が日々めちゃくちゃ頑張っている「箸の練習」についてお伝えできればと思います。

実際にZoomのナイトセミナー「OTしゃべり場」というADLの悩みを話し合う場で大盛り上がりした、箸のフォームと評価のポイントを一部シェアしていきます。

  • 箸の練習は根性論ではなく、麻痺の段階に合わせた補助箸の選定が鍵になる
  • AV型・IV型・X型はそれぞれ適応が異なり、患者さんの手指機能に合わせて使い分けることが重要と考えられる
  • 感覚入力と分離運動をセットで行うことで、運動学習がスムーズになる可能性がある

「根性で挟ませる」練習から卒業しよう

さくら
さくら
先生、今回は脳卒中の方の箸の練習について教えて下さい!片麻痺の方に対して、毎日一生懸命スプーンから箸へステップアップしようと練習しているんですが、どうしても指が変な形になってしまったり、食べ物を挟めなくて本人も私も心が折れそうになるんです…。
仲田
仲田
あるあるな話ですね。回復期OTなら誰もが一度は通る道ですね。箸の練習で一番大事なのは『とにかく根性で挟ませること』ではなく、手の機能や麻痺の特性に合わせて『どの種類の箸(AV型・IV型・X型など)を選ぶか』というマッチングなんです。
さくら
さくら
箸の種類ですか? 普通の箸か、いわゆるエジソン箸みたいな補助箸しか知りませんでした!
仲田
仲田
実はリハビリの現場では、手の動かし方に合わせて形状をしっかり選ぶ必要があるんです。

補助箸3タイプの特徴と使い分け

⚠️ 補助箸の選定ポイント
AV型・IV型・X型はそれぞれ構造と動作特性が異なります。患者さんの残存機能・巧緻性・感覚障害の程度などを踏まえて個別に選定することが重要です。以下はあくまで臨床上の目安として参考にしてください。

AV型:成功体験を積む段階に

仲田
仲田
まずAV型ですが、これは親指と他の指の対立運動や細かい指先の分離がまだ難しく、全体で握る(掌把持)ような傾向が強い方に向いていると考えられます。バネの力で自然と開くので、まずは食具を口に運ぶ成功体験を積むのに活用できます。
さくら
さくら
なるほど、把持力が弱かったり分離運動が出にくい時期に良さそうですね!じゃあIV型はどうなんですか?

IV型:協調性が出てきた段階に

仲田
仲田
IV型は、上下の箸が平行に動くタイプですね。指の協調性は少し出てきたけれど、指先がクロスしてしまったり、うまく挟むコントロールが難しい方に向いています。そして、一番私たちが臨床で頭を悩ませるのがX型です。
さくら
さくら
あ!クロスしちゃうやつですね。あれ、麻痺手だとめちゃくちゃ使いにくそうに見えるんですが、どういう人に合うんですか?

X型:普通の箸への移行期に

仲田
仲田
X型は、上側の箸と下側の箸が交差する構造になっていますよね。これの最大のメリットは、指先が多少ずれても先端がピタッと合わさりやすいという点なんです。だから、手指の細かいコントロールや協調運動が少し改善してきて、もう一歩で普通の箸に移行できそうな方の中継ぎとして活用できる場合があります。
さくら
さくら
なるほど…!ただ適当に補助箸を選ぶのとはワケが違うんですね。患者さんの手指のフォームや麻痺の段階に合わせて、道具を戦略的に変えていく必要があるんだ。

感覚入力と運動学習をセットで組み立てる

仲田
仲田
その通り!そしてもう一つ重要なのが、脳科学的なアプローチです。いきなり実際の食事の場面で箸を持たせるのではなく、まずは手指の分離運動や触覚・固有受容覚の入力を挟んでから練習することで、脳の運動学習に良い影響を与えられる可能性があるんです。
さくら
さくら
お皿の上の食べ物を掴む前に、手の感覚やフォームの準備運動を入れるんですね。だからいつもポロポロ落としていたのか…。
仲田
仲田
そう。段階的な道具の選定と、脳へのアプローチをセットで組み立てると、患者さんも『あ、できた!』が増えてモチベーションが上がりしますよ。他にも質問等があれば、療活の時に実際の事例や道具を見せながら話しますね。
さくら
さくら
ありがとうございます!

まとめ

  1. 箸の練習は根性論ではなく、麻痺の段階や手指のフォームに合わせた道具の選定(AV型・IV型・X型)が超重要
  2. AV型は把持や分離が難しい時期の成功体験に、IV型は平行運動の補助に、X型は先端を合わせるコントロールの習得(普通の箸への移行期)に活用できる場合がある
  3. いきなり食事で練習するのではなく、手指の分離や感覚入力をセットで行うことで、脳の運動学習がスムーズになる可能性がある

いかがだったでしょうか。視野が広がり、臨床のヒントに少しでも役立てたのなら幸いです。

このコラムを読んだ方へ

【ADL実践アプローチ3日間集中講座】

ADL訓練を根拠から組み立てる力を、3日間で集中的に習得できます。

まずは日程を確認する

考えて触診する、その一歩目。

【触診BASICコース】

臨床推論の基本の型から始まる、6日間の触診と徒手的アプローチ。

触診BASICコース 詳細・日程を見る →

この記事の執筆・監修

執筆:仲田 朝哉(作業療法士)発達領域・精神・身体・地域生活支援

監修:大塚 久(理学療法士・療法士活性化委員会 代表)