こんにちは、理学療法士の大塚です。
介入のあと、関節が動きやすくなった。筋の収縮も確認できた。立ち上がりや歩き方にも変化が見られた。
ところが、次にお会いすると、前回と同じような状態に戻っている。
こんな経験はありませんか?
- その場の変化が、生活のどこで使われているかを確認することが大切です。
- 「家で動けない」背景には、痛みや恐怖・環境・動機など、さまざまな事情があります。
- 再評価では関節の動きだけでなく、本人が生活の中で「できた」と感じたかどうかも確認しましょう。
手技を磨けば続くのか——当時の僕が見落としていたこと
僕自身、その場で変化を出せることが、とても重要だと考えていました。実際に変化が見られるとうれしいですし、自分の評価や介入の手応えにもなります。
だからこそ、しばらくすると戻ってしまうことが気になりました。
「もっと効果が長く続く手技があるのではないか」
そう考えて、新しい手技を探していた時期もあります。
今も、手技を学び、目の前の方の反応を確かめることは大切にしています。そのうえで、当時の僕の評価には、もう一つ必要な視点が足りていなかったなと感じています。
リハビリが終わったあと、その方はどのように生活しているのでしょうか?
その場の変化が、生活のどこで使われるのか
例えば、介入によって足関節が動きやすくなったとします。
その変化が立ち上がりや歩行にもつながったなら、次に確認したいのは、家で立つ場面や歩く場面です。
- 食事のときは、どこまで移動しているのか
- 日中は、どの椅子で過ごしているのか
- 自分で行っていることは何か
- どんなときに、動きにくさを感じるのか
関節の動きが変わっても、帰宅後は横になって過ごし、立つことも歩くこともほとんどない。そのような生活であれば、得られた動きやすさを実際に使う機会は限られます。
もちろん、変化が続かない理由は一つではありません。病状や痛みの変動、疲労、介入内容の適切さなども確かめる必要があります。
それでも、関節や筋肉の評価に加えて、その方が普段どのように身体を使っているかを知ることで、次に取り組むことが変わるかもしれません。
「どのような変化が出たか」とともに、「その変化を生活のどこで使えるか」を考える。
この二つを繋げて考えることが大切だと考えています。
在宅運動とフレイルの変化を調べた研究
この視点を考えるきっかけとして、Nakamuraらが2026年に報告した研究を紹介します[1]。
対象は、松本市立病院のフレイル外来を受診した、60歳以上の地域で暮らす高齢者100名です。初回評価でフレイル、またはプレフレイルに該当した方を対象に、3か月後の変化と、それに関連する要因を調べています。
この外来では、医師による診察、栄養支援、リハビリ専門職による個別の在宅運動指導など、多職種での支援が行われていました。
3か月後、100名中51名でフレイルの区分が改善していました。ここでいう改善には、フレイルからプレフレイルへの移行も含まれます。
また、年齢や認知機能などを調整した解析でも、毎日在宅運動を行っていたこととフレイルの改善との間に関連がみられる傾向が示されました。
ただし、これは対照群のない後ろ向き観察研究です。在宅運動は自己記録に基づき、もともと運動を続けられる身体状況にあった方ほど改善しやすかった可能性も残ります。「毎日運動すれば必ず改善する」とは言えませんし、徒手介入の効果が持続する条件を直接調べた研究でもありません。
その範囲を踏まえたうえで、僕はこの研究を、専門職が関わる時間と、本人が日々身体を動かす時間を、一続きで考えるきっかけとして読みました。
ここから先に述べる生活へのつなげ方は、この研究で効果が検証された方法ではなく、臨床での実践を考えるための僕の提案です。

「家では動いていない」の背景を確かめる
生活に目を向けるとき、気をつけたいことがあります。
「家で運動をしていないから戻るんですよ」と、本人に責任を預けて終わらせないことです。
家で動く機会が少ない背景には、さまざまな事情があります。
- 動くと痛みが出たり、疲れが強くなったりする
- 一人のときに転びそうで、怖さがある
- 自宅の椅子や段差では、リハビリ室と同じようには動けない
- 運動の方法や、自分に合う量がわからない
- 周囲の支援によって、自分で動く用事が少なくなっている
- 提案された運動が、自分のやりたいことと結びついていない
例えば、一人で立つことに不安がある方に、運動の回数を増やすよう伝えても、それだけでは取り組みにくいでしょう。
まず確認したいのは、何が不安なのか、どの条件なら試せるのかです。身体への介入が必要なこともあれば、椅子の高さや支えの位置、見守りのタイミングを調整することが役立つ場合もあります。
本人の話を聞き、実際の場面を見て、必要な条件を一緒に探す。ホームエクササイズの指導ではその場面まで考えて設計する必要があると考えています。
生活の中で動ける場面を、一つ具体的にする
ここで、説明のための一つの例を考えてみます。
立ち上がりにくさがある方が、「窓際の鉢植えを、自分で世話したい」と話してくれたとします。
この方にとって、立つことや歩くことは、鉢植えを世話するために必要な動きです。そこから、どの椅子から立ち、どこを通り、どの姿勢で世話をするのかを具体的にしていきます。
足関節の動きや下肢の筋力を評価するのは、その動作に何が影響しているかを確かめるためです。必要に応じて徒手的な介入や運動を行い、実際の立ち上がりや移動で反応を確認します。
そのうえで、家でも取り組めるように、本人と相談します。
- 「朝食のあとなら、鉢植えの様子を見に行けそうですか」
- 「どこに支えがあると、安心して立てそうですか」
- 「水を運ぶところは手伝ってもらって、葉の手入れから始めるのはどうでしょうか」
本人が選んだ用事を、無理なく試せる形にする。必要があれば、家族や他職種とも、手伝う部分と本人が担いたい部分を相談します。
こうして考えると、関節への介入、動作練習、環境の調整が、その方の一つの生活場面につながっていきます。
日常の活動だけで、必要な運動の負荷や量を満たせるとは限りません。個別の運動療法も組み合わせながら、本人の状態や反応に合わせて調整していくことが必要です。
ここで大切にしたいのは、動くことが、その方の暮らしの中で意味を持つことです。
再評価するのは、関節の動きと、その後の暮らし
次にお会いしたとき、関節可動域や筋力、立ち上がりの様子は、引き続き確認します。
それに加えて、こんなことも聞いてみたいと思います。
- 家で、鉢植えのところまで行く機会はあったか
- どのような支えや手伝いが必要だったか
- 痛みや疲れ、不安はどうだったか
- 本人は、その時間をどのように感じたか
もし取り組めなかったとしても、その理由がわかれば、次の支援を考える材料になります。
- 椅子からは立てたけれど、途中の移動が怖かった
- 朝は忙しくて、落ち着いて取り組めなかった
- 実際に試してみたら、本人が望んでいたこととは少し違った
そうした事実を確認して、計画を調整していきます。
療法士から見て動作が成立していても、本人が「できた」と感じているとは限りません。本人がどう受け取ったかは、本人に確かめる必要があります。
その方が自分の望む生活に向けて「動ける」状態です。
その先で何を選び、どう感じるかという主体は、いつも本人にあります。
「この関節が動きやすくなったことで、家で何を試せるだろう」
「この方がやりたいことに向けて、ほかにどのような支援が必要だろう」
変化が続かないとき、僕自身も、その問いに戻りたいと思っています。
次の介入のあと、その方と一緒に、家で試してみたい場面を一つ具体的にしてみませんか。
参考文献
- Nakamura K, Nagasawa Y, Shimizu M. Short-term changes in frailty status and associated factors over 3 months of multidisciplinary outpatient care in older adults. Journal of Physical Therapy Science. 2026;38(9):379–386.

