毎週月曜日は一年前にリハコヤでライブ配信されたものの一部を文章でお届けします。
本日は「機能改善すればADLは改善するのか?」をテーマにお話ししていきます。
みなさんは、機能改善すればADLは改善すると思いますか?
「繰り返すADL訓練は意味があるのか?」
「療法士として介入するのは機能面ではないのか?」
「ADLを低下させているのが機能面なのでそれを改善したらいいのでは?」
このような悩みをよく聞きます。
結論から言うと、機能面を改善してもADLは改善しません。
なぜかというと、ADL訓練は新しい動作の獲得が必要だからです。
大腿骨頸部骨折をして手術をした場合、脱臼肢位を考慮したADLを指導します。脳卒中で片麻痺をお持ちの方には片麻痺とうまく付き合うためのADL指導をします。少し変わっただけかもしれませんが、これは利用者さん・患者さんかからすれば慣れた動作から全く新しい動作を獲得し直さなければならないということなのです。
私たち健常人でも同じで、歩き方を少し変えてみてと言われてもすぐに変えることは難しいですよね。ほんの少し変えるだけでも、すごく意識的にやらなければいけません。機能に問題がなくても動作を変えることは難しいのです。
運動学習の過程
運動学習の過程でも同じことが言えます。
つまり、ADLを改善したければ意識的におこなわなければなりません。
運動学習の3段階
運動学習には3段階あると言われています。
1)言語−認知段階
『何をするのか?』に焦点が当てられます。
「このような肢位は脱臼しやすいのでこのようにしましょう」と伝え、理解してもらう段階です。
2)運動段階
『どのように行うのか?』に焦点が当てられます。
1)を実行する段階で、できるADLに当たります。
3)自動化段階
課題遂行のために使われる注意の量が減少し、課題が無意識のうちにできるようになる段階で、しているADLに当たります。
まず何をするのか意識して、意識的に実行し、無意識に落とし込む、この段階を踏まなければADLは改善してきません。
特に3)自動化段階である無意識にできる状態でなければ、しているADLにまで落とし込むことができませんので注意しましょう。
スキーマ理論とは
ここで運動学習の理論のひとつであるスキーマ理論のお話しをしていきます。
GMPとは、一般化された運動プログラムのことで、動作レベルの枠組みだと思ってください。
スキーマとは運動のパラメータのことです。スキーマには、再生スキーマ(運動をした時に用いたパラメータ)と再認スキーマ(運動をした時に生じた運動感覚)があります。
GMPと再生スキーマによって使用する運動プログラムが組まれ、体が動きます。それにより固有受容感覚が入り、予測される感覚のイメージと照らし合わせ、運動によって生じた感覚に対する自己評価をしていきます。それにより自己修正し、新しい運動プログラムが組まれていきます。このことから、繰り返しやることで精度が上がってくることがわかります。
ここで重要なのが、「指導者による評価」が司令塔(GMPとスキーマ)へ反映され、「結果に対する自己評価」をすることによって更に自己修正が進んでくることです。
この過程ではバイオメカニクスを学んだ療法士の出番なのです。
運動学習のための練習法
運動学習のためには、何回も繰り返し同じ動きを練習する恒常練習によってGMPを形成していきます。
そして、多様性練習によって、様々な条件下でも動作に統一性が出てくるようにします。
「スキーマを形成するためには何回やればいいのか?」
みなさん気になりますよね。
回数は個人差があるため定義できません。
ポイントは
①繰り返し正しい動きで練習すること
②様々な場面を想定して練習すること
です。
フィードバックや自己修正をどのくらい行っているのかは療法士の目でないとわからないので、療法士がしっかりとADL訓練に介入することが非常に重要です。
まとめ
機能改善をすればADLは改善するのか?
1. 機能面を改善してもADLは改善しない。
2. 運動学習には言語−認知段階、運動段階、自動化段階の3段階があり、運動段階(できるADL)から自動化段階(しているADL)に落とし込むことが重要である。
3. スキーマを形成するためには繰り返し正しい動きで練習すること、様々な場面を想定して練習することが大切であるが、それらにはバイオメカニクスを学んだ療法士がADL訓練に介入することが重要である。
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