脳卒中患者のトイレ動作を考える、手指巧緻動作の必要性 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

脳卒中患者のトイレ動作を考える、手指巧緻動作の必要性 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

こんにちは、理学療法士の嵩里です。

今回は、トイレ動作に必要な手指の巧緻動作と評価の視点についてお伝えしたいと思います。

前回のコラムはこちら
>>>トイレ動作で体幹が安定しない? 正中位保持のコツとは? 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

手指巧緻動作の必要性

巧緻動作とは「手先や指先を上手に使う能力」のことをいいます。例えば、物を掴む・握る・つまむ・捻るといった動作です。

トイレ動作では手すりを把持したり、ズボンを上げ下げしたり、お尻を拭いたりなど、手指を使う場面が多くありますよね。脳卒中患者ではこれらの動作が困難となる場面が多くあります。手指の巧緻動作が高いほど、日常生活動作の自立度が高いことが分かっています。つまり、トイレ動作を獲得するためには、下肢や上肢だけでなく手指の評価も行っていくことが重要となります。

手指のBr.stage

 

トイレ動作では、次の手指巧緻動作が挙げられます。

  • トイレットペーパーを千切る=母指の横つまみ
  • 手すりを把持する=筒握り
  • 手すりやズボンを把持し手を離す=手指の伸展
  • お尻を拭く=手指の伸展、手指の分離

 

次に、分離の段階としては以下の通りになります。

stage I  弛緩性麻痺

stage II わずかに屈曲

stageⅢ 屈曲はできるが伸展は不可

stageⅣ 母指の横つまみ

stageⅤ 手指の伸展、球握り、筒握り

stageⅥ すべての手指の分離

トイレ動作に必要な手指巧緻動作をBr.stageと関連付けると以下の通りとなります。

  • トイレットペーパーを千切れる(Br.stageⅣ)
  • 手すりやズボンを握り、離すことができる(Br.stageⅤ)
  • お尻を拭く(Br.stageⅤ、stageⅥ)

 

つまり、手指Br.stageⅣ〜Ⅵ程度の分離が可能であれば、トイレ動作を獲得しより在宅復帰を目指していけると考えられます。

手指の機能解剖

手指を握る、開く、対立、内転、外転といった動作には様々な関節・筋が関わっています。手指の分離だけでなく、ROMやMMTもひとつずつ評価していきましょう。

<手指の関節>

  • 中手指節関節(MP関節)
  • 近位指節間関節(PIP関節)
  • 遠位指節間関節(DIP関節)
  • 手根中手関節(CM関節)

<手指の筋>

外来筋

  • 浅指屈筋
  • 深指屈筋
  • 総指伸筋
  • 示指伸筋
  • 小指伸筋

内在筋

  • 骨間筋
  • 虫様筋

まとめ

  1. 手指の巧緻動作が行えると、トイレ動作を含めた日常生活動作の自立度が高い。
  2. トイレ動作に必要な手指巧緻動作を行うためには、手指Br.stageⅣ〜Ⅵの分離が行えると良い。
  3. 手指の筋、関節も個別に評価していく必要がある。

続きはこちら>>>脳血管疾患患者におけるトイレ動作のリハビリテーション:Br.stage各段階の特性と課題 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

参考文献

原 寛美 脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション 脳神経外科ジャーナル2012 年 21 巻7 号 p. 516-526

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