変わる理学療法士の実習:これまでの問題点と新しい指導方法
臨床実習指導者の本音 – 学生指導の悩みと乗り越え方
こんにちは、理学療法士の嵩里です。
実習指導や新人教育を行なっているセラピスト向けに、コラム記事を連載していきたいと思います。私自身も指導に関しては悩みつつ試行錯誤をしています。皆さんの経験談もお聞きしつつ、情報共有の場として活用できればと考えています。
第1回目のコラムでは、今までの実習における問題点と今後の実習で求められることについて考えてみたいと思います。
今までの臨床実習における問題点
1. 患者担当制を採用
従来の方法では、学生が患者を担当し、問診から評価・治療プログラム立案・考察までを一貫して対応していました。これにより、自己学習の重要性は高まりましたが、実習の本来の目的である「現役セラピストから実際の臨床技術や思考プロセスを学ぶこと」が疎かになる傾向がありました。
2. レポート上の指導
患者を担当すると、症例レポートの作成が必須でした。私自身も実習後半はレポートを完成させるために、指導者から文法や内容を赤ペンで修正される日々でした。今思うと、指導者の考えのもとレポートを完成させることに必死で「なぜこうなるのか」が曖昧になっていたように感じます。レポートを添削する形で指導を行うことは1つの方法ですが、学生が患者をより深く把握するためには、文章上ではなく臨床場面でのフィードバックが不可欠です。
3. 寝不足
実習期間中は、レポート作成や調べ物に追われ、十分な睡眠が取れない学生も少なくありません。私は要領も良くなかったので、
患者の問題点やゴールが分からない→調べても考察できない→レポートのフィードバックが終わらない→帰宅が遅くなる→帰宅してからレポート作成→あまり進まず寝不足→実習に身が入らない
という負のループに陥っていました。よく実習に受かったなと思うのですが断トツで辛かった経験です。
今後の実習で求められること
1. 実際の臨床で経験できる機会を増やす
学生の負担がないよう、理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインでは「臨床実習は、1単位を40時間以上の実習をもって構成し、実習時間外に行う学修等がある場合には、その時間も含め45時間以内とすること」と示されています。実習生が課題やレポートを占める机上学習よりも、実際の患者や家族との関わり方、学生同士では経験できないROMやMMT、それに関連するリスク管理等を指導する必要があります。
2. 主体的な学習
学生は講義を受ける受動的な姿勢から患者を通した主体的な姿勢が求められます。そのため今までの学習方法から急に変更するのは難しいことを考慮する必要があります。学生に技術を身につけるために、まずは指導者が普段の臨床を見せて説明していきましょう。
3. 診療参加型実習(CCS)の導入
そこで導入されたのが診療参加型実習(CCS:クリニカルクラークシップ)です。CCSは実習生とチームの 1 人としてセラピストの治療技術を「見学」→「模倣」→「実施」の順に学んでいくものです。従来の指導方法と比べて、一緒に経験し学んでいくことが求められます。
まとめ
- 実習指導のあり方が変化しています。
- 従来の実習では課題が多く、臨床場面での技術習得が不十分でした。
- 今後は診療参加型実習(CCS)を通じて、より効果的な技術習得が求められています。
実習生や新人が楽しく臨床を行い、指導者もストレスなく働け、患者さんにもメリットがあるような、相互に良好な関係性を築くことが重要です。この連載を通じて、そのような環境づくりに貢献できれば幸いです。