- 歩行中の膝関節は屈曲・伸展だけでなく、回旋・内外反も生じている複合運動である
- スクリューホームムーブメントや床反力の影響を理解することで、膝の動きの「なぜ」が見えてくる
- 膝だけを切り取らず、足部→膝関節→股関節の運動連鎖で捉え、仮説検証を繰り返すことが臨床の核心である

「膝が曲がっている」
「膝が伸びている」
歩行を観察するとき、膝関節の屈曲・伸展に注目することは多いでしょう。
しかし、膝の動きは本当に「曲げ伸ばし」だけでしょうか?
実際の歩行では、屈曲・伸展に加えて、内外反や回旋も生じています。
まずは「曲げ伸ばし」を見る
歩行中、膝関節の角度は一定ではありません。
荷重応答期には、踵接地後に膝が屈曲し、身体への衝撃を吸収します。その後、立脚中期にかけて伸展し、前遊脚期から次の遊脚に向けて再び屈曲します。
この屈曲・伸展を考えるうえで重要なのが、ダブルニーアクションです。
膝は「立脚期に伸ばし、遊脚期に曲げる」という単純な動きをしているわけではありません。
膝は「回旋」もしている
膝関節では、回旋運動も生じています。
特に終末伸展域を中心に、脛骨と大腿骨の間に顕著な回旋が起こります。これはスクリューホームムーブメント(終末回旋運動)と呼ばれ、膝を安定した伸展位へ導く重要な運動です。
大腿骨に対して脛骨が外旋し、末梢固定されている時には、脛骨に対して大腿骨が内旋します。
このスクリューホームムーブメントには、大腿骨内側顆の形状、前十字靭帯の張力、大腿四頭筋の外側からの牽引など、複数の要因が関与します。
つまり、「膝が伸びる」という現象の裏側には、回旋を伴う複合的な運動があります。
内外反にも注目する
膝関節では、前額面上の内外反も生じます。
内外反を考えるうえでは、側副靭帯が主要な制動因子となります。内側への動きはMCL、外側への動きはLCLなどによって制動されています。
さらに、歩行中は床反力によって膝に内外反方向のモーメントが生じます。
例えば、荷重応答期(LR)では膝に内反方向のモーメントが生じやすく、その結果として膝がO脚方向へ偏位しやすい傾向があると考えられます。
一方で、足部の動きも膝の内外反に影響します。
特にオーバープロネーション(過回内)では、足部アライメントの変化を介して膝の内外反方向のモーメントに影響する場合があるとされていますが、その変化の方向や程度には個体差があるため、一概には断定できません。
つまり、膝が内側・外側へ動いているからといって、原因が膝だけとは限りません。
股関節の運動や骨盤の位置、足部の回内・回外、そして床反力の位置など、全身の動きが膝の位置に影響します。

歩行時の観察ポイント
① ダブルニーアクション
- LRで衝撃吸収のため、適度に屈曲できているか
- 立脚中期〜終期にかけて伸展できているか
- 前遊脚期〜遊脚期で再び屈曲できているか
- 遊脚終期で最終伸展できているか
② 内外反
- LRで衝撃吸収時に過度な内反・外反がないか
- 膝が足部・第2趾方向から大きく逸れていないか
- 歩行周期全体において、FTA(大腿脛骨角)をイメージし、175°から大きく逸れていないか
③ 回旋
- 立脚中期〜伸展に伴う大腿骨の内旋が生じているか
- 遊脚中期〜伸展に伴う脛骨の外旋が生じているか
歩行分析で膝を見るときは「連鎖」で考える
「膝がどう動いているか」が観察できたら、「なぜその動きになっているのか」まで考えることが重要です。
歩行分析では、膝だけを切り取らず、
足部 → 膝関節 → 股関節
という運動連鎖の中で捉えてみましょう。
- 「足部において距骨下関節が過回内していないか?」
- 「股関節を安定させる代償として過剰な内旋をしていないか?」
- 「床反力はどこを通っている?」
- 「その結果、膝にどのようなモーメントが生じている?」
アプローチ実施後、仮説検証
例えば、LRで膝の外反がみられた場合、
足部では距骨下関節の過回内がないかを確認し、必要に応じてインソールや後脛骨筋の促通などを行います。
股関節では股関節外旋六筋などの働きを確認し、股関節を安定させることで膝の過剰な内側偏位が変化するかをみます。
そして、介入後にもう一度歩行を観察します。
「仮説(分析) → 介入(アプローチ) → 再評価(観察)」
この繰り返しによって、膝の動きを変える要因を探っていきます。
大切なのは、膝の動きを「直す」のではなく、膝がその動きをしている理由を考え、必要な場所にアプローチし、歩行や疼痛の改善に繋げることです。
6年目 理学療法士 村上

