こんにちは、理学療法士の嵩里です。今回は相談しやすい雰囲気の作り方についてお話ししたいと思います。
新人時代の経験
新人の頃、患者さんのADL向上を目指したリハビリプログラムを作成する際に、先輩に質問することが怖かったのを覚えています。少しでも間違ったことを聞くと、自分の能力を疑われそうで、一人で悩んでしまうことが何度もありました。
指導する立場になり、その時の自分の気持ちを思い出すと、後輩たちが同じような思いをしているのではないかと感じます。
後輩が相談しにくい状況
後輩が相談しにくい状況の例として、以下のような場面が考えられます。皆さんも一度は経験があるのではないでしょうか?
- 質問することで、自分は勉強出来ない人間なんだと思われるのが怖い。
- 上司が忙しそうで臨床の相談や実技練習に付き合ってもらいにくい。悩みも気軽に相談できない雰囲気。
- 相談することで不十分な点を指摘され怒られる。
このような状況では、後輩は自分の意見を言えなかったり、困っていることを一人で抱え込んでしまったりします。このような状況を、心理的安全性が低い環境であるといえます。
心理的安全性の重要性
心理的安全性とは、組織のなかで不安を感じずに自分の意見や気持ちを積極的に発言できる状態のことです。チームの生産性・パフォーマンスを高める重要な要素でもあります。
心理的安全性が低くなる原因には、スタッフが抱えている以下の4つの不安が背景にあると言われています。後輩が前述した相談しにくい状況に当てはまるのではないでしょうか?
- 無知だと思われる不安
- 無能だと思われる不安
- 邪魔をしていると思われる不安
- ネガティブだと思われる不安
心理的安全性が高い職場とは
心理的安全性を満たすには、以下の4つを達成する必要があると言われています。
- 話しやすさ
- 助け合い
- 挑戦
- 新奇歓迎
具体的な例としては:
1. 話しやすさ
- 患者さんのことやスタッフ間でのちょっとした会話など、日常的なコミュニケーションを心掛ける。
- ADL変更で悩む後輩が多いため、後輩が担当している患者さんのリハビリがどこまで進んでいるか、小まめに声をかける。
- 声を掛けられたら、顔や身体をきちんと相手に向ける。
- 話しを遮らず否定しない。
2. 助け合い
- ROM測定や触診が苦手であれば積極的にサポートを行う。
- 急にサマリーが必要となった場合など、相手の業務がひっ迫していたら患者さんを振り分けてもらい、お互い様ができるようにする。
- 臨床や書類業務の進捗を小まめに確認する。分からないことは聞いて、と伝えても疑問点が分からない場合があります。
3. 挑戦
- 後輩の担当患者さんについて、設定したゴールに対する進捗を確認する。
- 自身の考察をもとにプログラムを立案してもらう。アプローチの何処が良かったか、また改善案を伝える。「先輩がこうしろと言ったからこのアプローチを行っている」という固定観念のスタッフも時々います。
4. 新奇歓迎
- 症例検討を行い経験年数や経歴が異なる意見を聞いて、様々な意見を参考にする。
- 固定の治療手技だけではなく様々なアプローチ方法を取り入れる。
- 無駄な書類業務や暗黙のルールがあれば、改善できるようスタッフの意見を聞く。
心掛けてみた対話
【症例検討に向けて資料作成を始めたが進捗を伝えてこなかった後輩:眩暈のある患者さんについて】
後輩とのやり取りの中で下記の点を意識するようにしたところ、後輩から相談や報告を伝えてくるようになりました。実際のやり取りを紹介します。
- 進捗を確認する
- つまずいている箇所は参考書で一緒に調べる
- 良い箇所と改善点をセットでフィードバックする
- 否定的な返答はなるべくしない
私: 発表資料はどこまで進んでる?
後輩: 考察が上手くまとめられなくて、あまり進んでないです。
私: ここまでは良いと思うよ。ここからは頸部の動きとか眼球運動についても考察してみたらどう?参考書だとこの本に書いてあったよ。
(後日)
後輩: この間教えもらった参考書の箇所で、だいぶ考察と資料作成は進みました!今度は資料の文章で分かりにくい箇所がないか見てもらっても良いですか?あと新しく考察を付け加えてみたんですけど、どう思います?
私: 文章は分かりやすくなって良いと思うよ!新しい考察は前回の内容と少しズレる気がするけど、自分としてはどこを1番伝えたい?
後輩: 確かにそうですね。自分としては眼球運動を1番伝えたいので、そこを中心にまとめてみます!
まとめ
- 心理的安全性が高いとスタッフ間で意見を言い合うことが出来き、チームをより活性化することができる。
- 心理的安全性を妨げる要因は不安感が関係している。
- 相談できずに1人で抱え込んでいる後輩や学生が多い。進捗や理解度を明確にするための質問をして、困っている点を探して一緒に進めていくスタイルも大切。