皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。今回は生活期リハビリテーションにおける実践的なトイレ動作アプローチについて、具体的な事例を通じて解説していきます。
症例紹介:80代女性の事例から学ぶ
今回ご紹介する症例は、脳梗塞後遺症により左片麻痺を抱えた80代女性の利用者様です。デイサービスにおけるリハビリテーションの中で、特にトイレ動作の自立支援が重要な課題となっていました。
主な課題
立位保持の不安定性
- トイレでの下衣着脱時の立位保持が困難
- 片麻痺の影響による姿勢の不安定さ
- 介助なしでの安全性確保が課題
手すり操作の困難さ
- 車椅子からの立ち上がり時における手すり把持の重要性
- 確実な手すり把持による姿勢安定性の確保が必要
上肢機能の制限
- 左上肢・手指のBr.stageⅡによる機能制限
- 右上肢が主たる補助手段
- 右上肢機能の維持が重要
認知面での課題
- 複雑な運動指示の理解が困難
- 従来型リハビリメニューの効果が限定的
- 自主トレーニングの実施が困難
アプローチ:お盆拭き活動の導入
トイレ動作の自立支援において、特に重要となる手すりへのリーチ動作。しかし、トイレ場面での直接的な練習は利用者様の心理的負担が大きいケースが少なくありません。そこで着目したのが「お盆拭き」という日常活動です。
お盆拭き活動の特徴と効果
目的的な動作訓練
- トイレ動作に必要なリーチ動作の模擬的訓練
- 自然な形での運動機能向上
多面的な動作練習
- 前方リーチ:机上でのお盆拭き動作
- 上方リーチ:高位置での拭き動作
- 立位保持能力の向上
役割活動としての価値
- リハビリ意識を軽減
- 自然な形での反復練習
- 日常生活への統合
介入効果:具体的な改善点
右上肢機能の向上
- リーチ動作の安定性向上
- 筋力維持と関節可動域の改善
- 手すり操作の確実性向上
立位機能の改善
- 体幹機能の向上
- 立位保持時間の延長
- 動作の安定性向上
心理面での変化
- 自信の回復
- 活動意欲の向上
- トイレ動作への積極的な取り組み
まとめ:本事例から得られた知見
- 日常生活活動とトイレ動作の関連性を活用することの重要性
- 環境設定の工夫による効果的なリハビリテーションの実現
- 成功体験の積み重ねによる利用者様の意欲向上
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