- FIMのトイレ動作は「下衣を下げる・清潔操作・下衣を上げる」の3つへ分けてから観察する
- トイレ移乗・排尿管理・排便管理は別項目であり、トイレ動作へ混ぜないことが採点精度を高める
- 「見守り」という曖昧語を避け、援助者の行為と本人の実施範囲を記録してから公式手順で採点する
皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。
『手すりを使って一人でできたから6点』『見守りだから5点』。数字だけを見ると簡単そうですが、実際のトイレ場面では判断が割れます。
移乗には介助が必要でも、下衣操作と清潔操作は自立している。反対に、便器への移乗は一人でできても、下衣を上げる最後だけ職員が手伝っている。こうした場面を一つの印象で採点すると、チーム内で点数が揺れます。
この記事では、FIMの採点表そのものを覚え直すのではなく、採点前に何を分けて観察すればよいかを整理します。結論は、トイレ動作を3つに分け、5つの境界を順番に確認することです。
最初に、①下衣を下げる、②清潔操作を行う、③下衣を上げる、の3つへ分けます。
次に「移乗を混ぜていないか」「人の手が入ったか」「声かけだけか」「本人がどこまで行ったか」「普段の実行状況か」を確認します。
観察事実を書いてから、所属施設の公式手順で点数へ変換します。
FIMのトイレ動作で、まず押さえる範囲
FIMは、日常生活で必要となる介助量を捉える18項目・7段階の評価尺度です。訓練を受けた評価者が用いた場合の評価者間信頼性が報告されています[1]。一方で、環境や操作的定義が評定へ影響することも示されており、点数だけでなく実施条件を残す必要があります[2]。
FIMにおけるトイレ動作は、会陰部の清潔保持と、トイレ等を使用する前後の衣服調整を含みます。便器へ乗り移る「トイレ移乗」や、「排尿管理」「排便管理」は別項目です[3]。
ここを混ぜないことが、迷いを減らす第一歩です。
FIMはライセンス管理されている評価尺度です。本記事では公式の採点表・判断チャートを転載せず、観察と記録の考え方に限定しています。最終採点は、所属施設の公式マニュアル、認定研修、運用基準を優先してください[4、5]。
採点前に分ける3つの動作
トイレ動作を3つに分けることで、「どこを誰が行ったか」が明確になります。点数はその後に決めます。
1|下衣を下げる
- 観察する事実:開始、両側の腰回り、臀部まで下げ切る、安全な立位保持
- 記録例:左側は自力/右後方のみ届かない
2|清潔操作
- 観察する事実:紙の準備、会陰部へ手を届かせる、拭き取り、汚染の確認
- 記録例:紙は準備済み/拭き取りは自力
3|下衣を上げる
- 観察する事実:衣服を拾う、両側を引き上げる、整える、安全な立位保持
- 記録例:右後方を職員が引き上げる
「どの動作を、本人と援助者のどちらが行ったか」を先に書きます。点数はその後です。
迷いやすい5つの境界
境界1|トイレ動作とトイレ移乗
便器への接近、方向転換、立ち座りに身体介助があっても、それだけでトイレ動作の点数は決まりません。反対に、移乗が自立していても、衣服調整や清潔操作に援助があればトイレ動作は自立とはいえません。
二つの項目を別々に観察します。
境界2|道具を使うことと、人が助けること
手すり、自助具、特別な衣服などを使い、援助者の声かけや接触なしに安全に完了する場合と、人が準備・監視・介助する場合は分けます。「一人でできた」だけで終わらず、道具、時間、安全面、人の関与を記録します。
境界3|見守り・声かけと、身体接触
立って見守る、手順を促す、必要物品を準備する場合と、バランスを保つため身体へ触れる場合では、援助の性質が異なります。「見守り」という記録の中に、実際は腰へ手を添えていた、ということが起きないようにします。
境界4|本人が行った割合
身体介助が入った場合は、「少し手伝った」ではなく、3つの動作のどこを本人が行い、どこを援助者が担ったかを確認します。
例えば、下衣を下げる・清潔操作・下衣を上げるのうち、最後の一つを援助者が全面的に行う場合、本人の実施はおおよそ3分の2程度にあたると考えられます。ただし、FIMの採点は単純な実施割合だけで決まるわけではなく、援助の種類・接触の有無・安全性なども含めて公式手順で判断します。接触介助だけなのか、動作そのものを代行したのかも分けて記録します。
境界5|「できる」と「普段している」
訓練室では可能でも、病棟・自宅・デイサービスでは衣服、便器高、時間帯、便意、疲労、認知負荷が変わります。一度の成功だけで決めず、普段の実行条件と変動を集めます。
評定方法は施設基準へ合わせつつ、点数の根拠となった場面を明記します。
点数を相談する前に、「どこで・何を使い・誰が・どこまで・どんな援助をしたか」を一文で共有します。
5ステップで採点根拠を作る
- 実際のトイレ場面を観察する。便器、衣服、手すり、時間帯など、普段に近い条件を記録します。
- トイレ動作を3つへ分ける。下衣を下げる、清潔操作、下衣を上げる、の順に本人の実施を確認します。
- 援助者の行為を動詞で書く。「見守り」「促す」「準備する」「触れて支える」「衣服を引き上げる」のように具体化します。
- 5つの境界に当てはめる。移乗の混在、人の関与、声かけと接触、本人の実施割合、普段の実行状況を確認します。
- 公式手順で点数を確定し、迷いはチームで照合する。数値だけでなく、観察根拠を記録に残します。
4つの場面で考える
これは採点表ではなく、どの境界を確認するかを選ぶための整理です。
手すりのみ使用し、人の声かけ・接触なし
- まず見る境界:道具/人の援助
- 判断の方向:人の援助なし。道具・時間・安全面を確認
職員が順番を一度促すが、動作は全て本人
- まず見る境界:声かけ/身体接触
- 判断の方向:監視・促しを要する範囲として確認
本人が全動作を行うが、立位で腰を支える
- まず見る境界:接触/本人の割合
- 判断の方向:身体接触を伴う援助として確認
移乗のみ介助、3動作は本人が自力で完了
- まず見る境界:トイレ動作/移乗
- 判断の方向:二項目を分けて採点
ミニ事例|「見守り」の中に手伝いが隠れていた
※以下は説明用の架空事例です。
脳卒中後の70代女性。申し送りには「トイレ動作は見守り」と記載されていました。再観察すると、下衣を下げる動作と清潔操作は本人が行いましたが、下衣を上げる際、右後方の腰ゴムを職員が毎回引き上げていました。便器への立ち座りは手すりを使い、声かけのみでした。
この場合、トイレ移乗とトイレ動作をまず分けます。さらに、「見守り」という言葉を、下衣を上げる一部を援助者が行っている事実へ書き換えます。本人が行った3動作の内訳と、職員が代行した範囲を整理したうえで、公式手順に照らして採点を見直しました。
記録は、「トイレ移乗は手すり使用・声かけで実施。トイレ動作は下衣を下げる、清潔操作は自力。下衣を上げる際、右後方のみ職員が引き上げる」としました。これなら別の職員も同じ場面を再現して確認できます。
そのまま使える記録テンプレート
[場面・条件]で、下衣を下げる:[本人/援助内容]、清潔操作:[本人/援助内容]、下衣を上げる:[本人/援助内容]。使用物品は[ ]。援助者は[声かけ/準備/接触/一部代行]を行った。トイレ移乗は[別記]。普段との差は[ ]。以上を根拠に、所属基準で[仮の評定]を確認する。
「見守り」を一度、使用禁止にする
次のトイレ評価では「見守り」とだけ書かず、援助者が実際にしたことを一つの動詞で書いてください。「声をかけた」「紙を準備した」「腰へ触れた」「右後方を引き上げた」まで書くと、採点の境界が見えます。
まとめ
- トイレ動作は、下衣を下げる・清潔操作・下衣を上げる、の3つへ分ける。
- トイレ移乗、排尿管理、排便管理をトイレ動作へ混ぜない。
- 見守りという曖昧語を避け、援助者の行為と本人の実施範囲を記録してから採点する。
そのまま使える記録シート|FIMトイレ動作・採点前チェックシート
点数を書き込む前に、観察事実を埋めて使用します。最終採点は所属施設の公式手順で確認してください。
- 場所・便器/衣服・物品:____________
- 時間帯・体調/普段との差:____________
- 下衣を下げる:________ / ________
- 清潔操作:________ / ________
- 下衣を上げる:________ / ________
5つの境界を確認
- □ トイレ移乗・排尿管理・排便管理を混ぜていない
- □ 道具の使用と、人による援助を分けている
- □ 声かけ・準備と、身体接触を分けている
- □ 本人が行った範囲と、援助者が代行した範囲が分かる
- □ 一度の「できる」だけでなく、普段の実行条件を確認した
- 観察根拠の一文:____________
- 仮の評定/確認者・確認日:____________
FIMの正式な採点・運用は、権利者が提供する公式資料と所属施設の運用基準に従ってください。
関連記事|あわせて読みたい3本
- トイレ動作とは?工程と必要な分析を考える
- トイレ動作訓練が劇的に変わる!「7つの段階」と成功体験
- 送迎場面が宝の山!トイレ動作評価チェックリスト
「現場の悩みを、実践知に変える」
排泄動作を工程に分け、最初に崩れる場面を見つけられると、訓練と環境調整の優先順位が変わります。評価を介助量の改善へつなげる視点を、一緒に深めてみませんか?
療法士活性化委員会の トイレ動作獲得セミナー では、評価から治療アプローチ、多職種共有までを実技と症例を通して扱います。
トイレ動作獲得セミナー|開催情報
#作業療法士 #理学療法士 #言語聴覚士 #自立支援 #生活期リハビリ #ICF #トイレ動作 #排泄ケア #ADL #FIM #トイレ動作評価 #ADL評価

