家屋調査におけるトイレまでの動線と移動手段の検討  〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

家屋調査におけるトイレまでの動線と移動手段の検討ポイント  〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

こんにちは、理学療法士の嵩里です。

家屋調査を行った際、自宅内の動線や寝室からトイレまでの移動方法はどのように検討していますか? 家屋調査は患者さんの生活動作の自立に重要な役割を果たします。特に、寝室からトイレまでの動線と移動方法の検討は、日常生活動作(ADL)の中でも優先度の高い課題です。今回は実際の事例を通して、自宅内のトイレまでの動線を決定する際に考慮すべきポイントをご紹介します。

家屋調査で確認する3つの重要ポイント

1. 寝室の場所の決定

新たにベッドの位置を決める際は、トイレまでの距離が近いことが望ましいです。しかし家族の就寝場所や今までの生活スタイル、既存の家具を出来るだけ動かさないよう配慮することも必要になります。

  • トイレまでの距離の最小化
  • 家族の就寝場所との調整
  • 従来の生活スタイルの維持
  • 既存家具の配置への配慮

2. トイレまでの動線確認

寝室が決まったらトイレまでの動線を確認します。福祉用具のスタッフに車椅子や歩行器を持ってきてもらい、自宅内で移動させてみると効率よく確認が行えご家族もイメージしやすいです。具体的には以下の点を確認しましょう。

  • 寝室からトイレまでの実測距離
  • 車椅子・歩行器の通行に必要な廊下幅の確保
  • 方向転換スペースの有無
  • 便座へのアプローチ方法
  • トイレから寝室への帰路の実現可能性

3. 適切な移動手段の選定

動線や廊下幅を確認できたら、移動手段を決めます。歩行が行える距離か車椅子が現実的か。歩行が行えるのであれば、歩行器が必要か伝い歩きが可能かを身体機能を踏まえて決定していきます。ご家族が常に移動やトイレ動作を見守ることは現実的に難しいです。外出等で不在になる場合を考慮し、自立レベルで移動とトイレ動作が行える方法を検討します。

  • 患者の歩行能力の評価
  • 車椅子使用の必要性判断
  • 歩行補助具の種類選定
  • 介助者不在時の自立可能性

実践事例:移動手段の選定プロセス

患者背景

  • 歩行器使用で10m程度の歩行が可能
  • 移動時の不安感が強く、車椅子使用を希望
  • L字柵の設置位置の検討が必要

具体的な対応手順

1. 寝室配置の最適化

ベットが搬入できトイレから近い部屋を提案する必要がありました。しかしご家族の希望として既存の家具を出来るだけ動かしたくないとの意見がありました。そのため福祉用具スタッフにベッドの大きさを説明してもらいながら場所や位置を決定しました。

2. 移動方法の具体的検討

寝室が決定したら、寝室からトイレまでの移動手段を検討します。寝室とトイレの距離が遠いため、車椅子の使用をベースとしました。しかしトイレまでは洗面台や洗濯機があり車椅子が通れるスペースがありませんでした。また車椅子でギリギリ入れても寝室までは後ろ向きのまま自走する必要があり現実的ではありませんでした。そのため車椅子でトイレの近くまで自走し、便座までは歩行器を使用することとなりました。廊下幅を確認し、実際に使用できる歩行器を福祉用具スタッフに選定して頂きました。

3. 病棟との情報共有

今回の家屋調査で、短距離ではありますがトイレまでは歩行器歩行を行う必要があることが分かりました。調査結果を病棟へ共有し、トイレまでの移動時は歩行器を使用するよう伝え病棟生活でも歩行練習が行えるよう取り入れてもらいました。また患者さんへも調査結果を説明し、トイレに行くためには歩行器歩行が必要であることを伝えリハビリを行いました。

まとめ

  1. 新たにベッド位置を決める際は、生活スタイルや既存の家具を出来るだけ動かさない配慮が必要。寝室からトイレまでは車椅子や歩行器が通れるか、実際に福祉用具スタッフに持ってきてもらい動線を確認することも有効。
  2. 患者さんが実際に移動することを想像しながら、寝室からトイレまでアプローチできるか、トイレから出た後も歩行器や車椅子を操作できるかを考える。
  3. 家屋調査を行い病棟と患者さんへ自宅退院に必要なADLを説明することで、説得力が増し病棟でのリハビリと患者さんのリハビリ意欲に繋がりやすい。

このような系統的なアプローチにより、患者さんの自宅での安全な生活と、ADLの自立支援を効果的に実現することができます。

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