包丁が上手く切れない本当の理由|調理訓練で見落としがちな手のフォームと腋窩の評価

みなさんこんにちは。作業療法士の仲田です。

今回は、回復期リハビリテーション病院の療法士が毎日のように悩み、そして臨床の現場で意外と見落とされがちな「調理訓練(包丁操作)における手のフォームと評価の罠」についてお伝えできればと思います。

実際にZoomのナイトセミナーで「OTしゃべり場」というADLのリアルな悩みを話し合う場の内容を一部シェアしていきますね。

  • 包丁操作がうまくいかない原因は、肩甲骨・体幹よりも先に「手のフォーム(斜め握り)」を確認する視点が重要な場合がある
  • 柄を真っ直ぐ握ると腋窩が開きやすくなり、腕全体が突っ張った不安定なフォームになりやすい
  • 斜め握りで腋窩が締まると、肘・手首のコントロールが安定しやすく、ADL向上につながる可能性がある

「肩甲骨のせい」は本当に正しい?現場でよくある評価の落とし穴

さくら
さくら
先生、今回は脳卒中の方の調理訓練、特に”包丁の使い方の指導”について教えて下さい!麻痺手での把持や、利き手交換をして反対の手で包丁を持ってもらうことがよくあるんですが、どうしても上手く切れなくて…。先輩からはもっと肩甲骨を動かして!体幹が硬いからだ!って指導されるんですが、しっくりこないんです。
仲田
仲田
それ、めちゃくちゃよくある現場の落とし穴なんですよ。回復期OTの多くが”肩甲骨の動きや体幹の回旋が悪い”って原因をそこに求めがちなんですが、実は手のフォーム(斜め握り)と腋窩(わき)の締め方にある場合が多いんです。もちろん肩甲骨や体幹の評価も大切ですが、その前にまず握り方を確認する視点を持ってほしいんですよね。
さくら
さくら
えっ、肩甲骨じゃなくて手のフォームや腋窩なんですか?
⚠️ 評価の落とし穴に注意
包丁操作がうまくいかない場面で、いきなり「肩甲骨の可動域」や「体幹の硬さ」に原因を求めてしまうケースが多くあります。もちろんこれらも評価対象ですが、まず「手のフォーム」と「腋窩の使い方」を確認できているかを問い直してみてください。

なぜ「斜め握り」が重要なのか?手首・肘・腋窩の連動を理解する

仲田
仲田
そうなんです。例えば、包丁の柄を真っ直ぐ(手のひらに対して垂直に)握ってしまうと、手首や肘の構造上、どうしても腕が外側に開いて、腋窩(わき)がパカーッと空いてしまいやすいんです。腋窩が空いたまま包丁を下ろそうとすると、肘が突っ張ってしまい、トントンと真下に刃を落とすことが難しくなりますよね。
さくら
さくら
たしかに!わきが空いた状態で切ろうとすると、腕全体で力任せに振り下ろすような”変なフォーム”になりますね。
仲田
仲田
そうなんです。だからこそ、包丁の柄に対して手を”少し斜めでつかむ(斜め握り)”ように意識してもらい、療法士がしっかりと伝えてあげる必要があるんです。この斜め握りができると、自然と肘が体幹に近づき、腋窩がキュッと締まった状態で包丁をコントロールできるようになります。
✅ 斜め握りのポイント
  • 柄を手のひらに対して少し斜めに握る
  • 自然と肘が体幹に近づき、腋窩が締まりやすくなる
  • 肩・肘の余分な力みが抜け、手首の細かいコントロールがしやすくなる
  • 患者さんの可動域・筋緊張・麻痺の程度によって最適な握り方は個人差があるため、動作を見ながら調整することが大切

腋窩が締まると何が変わる?臨床で確認したいポイント

さくら
さくら
なるほど…!腋窩が締まれば、肩や肘の無駄な力みが抜けて、手首の細かい動きや包丁の刃先への荷重がスムーズになるわけですね。
仲田
仲田
そうなんです。それなのに、この手のフォームや腋窩の締め方を療法士が教えずに、いきなり”包丁がうまく動かないのは肩甲骨の可動域のせいだ!”と評価してしまうと、的外れな体幹のストレッチや肩甲骨の運動ばかりを頑張るハメになって、一向に調理ができるようにならないんです。
さくら
さくら
めちゃくちゃ腑に落ちました…。患者さんの動作エラーを肩甲骨のせいに片付けてしまっていた自分の視野の狭さに反省です。
仲田
仲田
臨床あるあるだから大丈夫ですよ。包丁操作を見る時は、まず柄に対してどう握っているか(斜め握りになっているか)腋窩が締まって体幹と上肢が連動しているかをチェックしてみてください。ここが変わるだけで、見違えるほど包丁が使いやすくなりますよ。他にも質問等があれば、療活の時に実際のキッチン動作を見ながら話しますね。
さくら
さくら
ありがとうございます!

まとめ

  1. 包丁操作で上手く切れない場面では、「肩甲骨や体幹の問題」と判断する前に、手のフォームや腋窩の使い方を確認することが重要な場合がある
  2. 包丁の柄を真っ直ぐ握ると腋窩が開きやすく、腕全体が突っ張った不安定なフォームになりやすいため、「斜め握り」の視点を持って指導することが大切
  3. 斜め握りによって腋窩が締まると、肘や手首のコントロールが安定しやすく、スムーズな包丁捌き(ADLの向上)につながる可能性がある

いかがだったでしょうか。視野が広がり、臨床のヒントに少しでも役立てたのなら幸いです。

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この記事の執筆・監修

執筆:仲田 朝哉(作業療法士)発達領域・精神・身体・地域生活支援

監修:大塚 久(理学療法士・療法士活性化委員会 代表)