視空間認知に対する アプローチ 〜トイレ動作の分析からアプローチ 情報共有までの流れを学ぶ〜

トイレ動作における 視空間認知に対する アプローチ 〜トイレ動作の分析からアプローチ 情報共有までの流れを学ぶ〜

 

 

こんにちは、作業療法士の内山です。前回は視空間認知機能のメカニズムと評価について解説しました。
前回の内容はこちら>>>トイレ動作における視空間認知機能のメカニズムと評価 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

今回は、評価編の続きとしてアプローチ方法と環境設定について詳しく見ていきます。

身体機能へのアプローチ

視空間認知機能を向上させるためには、眼球運動(運動側)と頭頸部(支持側)の両方にアプローチする必要があります。まずは支持側である頭頸部から始めましょう。

頭頸部(支持側)へのアプローチ

  1. 頸椎椎間関節
    • モビライゼーションと促通
    • ポイント:椎間の可動性を改善し、アクティビティを通じて頸椎の動きを促進
  2. 僧帽筋
    • リリースと促通
    • ポイント:MMTの変化を確認し、必要に応じて肩甲骨挙上や頸部側屈運動を含むアクティビティを提供(例:集団体操、更衣動作練習)
  3. 胸鎖乳突筋
    • リリースと促通ポイント:MMTの変化を確認し、頸部回旋や屈曲運動を含むアクティビティを提供(例:あっち向いてホイ、隣の席の方としおしゃべりする、輪入れリーチを用いた視線誘導)
  4. 斜角筋
    • リリースと促通
    • ポイント:MMTの変化を確認し、頸部屈曲、側屈運動、強制吸気を含むアクティビティを提供例:集団体操、更衣動作練習、風船を膨らませる)
  5. 頸長筋
    • リリースと促通
    • ポイント:MMTの変化を確認し、頸部屈曲を含むアクティビティを提供(例:床のものを拾う、立ち上がり動作、清拭動作)

眼球運動(運動側)へのアプローチ

  1. 固定視(発達課題1ヶ月目)
    • 20〜30cm離れた物体を30秒間見続ける練習

      ポイント
      ①固定側である頸部は動かないように固定していられるか
      ②運動側である眼球も1点で固定することができるか

  2. 輻輳(発達課題1ヶ月目)
    • 顔の10〜15cm前の物体を寄り目で30秒間見続ける練習

      ポイント:
      ①固定側である頸部は動かないように固定していられるか
      ②運動側である眼球を寄り目の状態でずっとキープできるか

  3. 追視 側方→正中(発達課題1ヶ月目)
    • 側方から正中への物体の動きに合わせて視線を動かす練習

      ポイント
      頸部と眼球を同時に物体の動きに合わせて動かせているか(どちらか一方の動きが遅れていないかどうかを確認する)

  4. 追視 正中を超える(発達課題2ヶ月目)
    • 側方から反対側の側方への物体の動きに合わせて視線を動かす練習

      ポイント
      頸部と眼球を同時に物体の動きに合わせて動かせているか(どちらか一方の動きが遅れていないかどうかを確認する。遅れる場合はどのあたりで動きが遅れるかを把握しておく。)

  5. 頸部と視覚の分離(発達課題3ヶ月目)
    • 眼球と頸部を別々のタイミングで動かす練習

      ポイント
      頸部と眼球(視線)を別々のタイミングで動かすようになるため、眼球(視線)を動かすときに、頸部は最初の位置で固定できるかを確認する。(頸部が動いてしまう場合は、固定側としての役割を果たせていないため、追視からまた練習する)

動作レベルでのアプローチ

視空間認知機能は以下の4つの要素に分けられます。各要素に対応したアプローチ方法を紹介します。

  1. 対象と背景の区別
    • 視覚探索訓練(例:青い円の中から赤い円を見つける)

      ポイント:最初は同じ形で行い、慣れてきたら色だけでなく形をも変えて難易度調整をする!

  2. 形や色の認識
    • ブロック遊び(例:箱の型に合ったブロックを当てはめる)

      ポイント:色んな方向からブロックを見てもらうことで、3Dで物体を認識する練習にする!

  3. 一貫性のある認知
    • トイレまでの経路MAP作成

      ポイント:記憶機能の低下など他の認知機能との関連性も合わせて評価してみる!

  4. 空間関係の理解
    • 視線固定でのリーチ動作練習(例:トイレの手すりへのリーチ)

      ポイント:実際の場所で行うことで実践的なADL練習になる!

環境設定

視空間認知機能の各要素に応じた環境設定も重要です。

  1. 対象と背景の区別
    • トイレの壁紙を白黒で統一して認識しやすくする
  2. 形や色の認識

    張り紙を貼る(視覚的指示)、具体的な指示を出す(言語的指示)

    • 手すりの長さに目印をつける
    • トイレの形状を言葉で説明する
  3. 一貫性のある認知
    • トイレの入り口に本人の好きなシールなど目印をつける
  4. 空間関係の理解
    • トイレまでの道のりを示す視覚的・言語的指示を提供
    • 単語レベル〜文章レベルの張り紙を貼って、トイレまでの道のりを示すなど

まとめ

  1. 身体機能へのアプローチでは、眼球運動(運動側)と頭頸部(支持側)の両方に注目することが重要です。
  2. 動作レベルでのアプローチは、視空間認知機能の4つの要素それぞれに合わせた練習を行います。
  3. 環境設定では、トイレ自体の直接的な環境変更だけでなく、視覚的・言語的な間接的環境調整も考慮しましょう。

これらのアプローチと環境設定を適切に組み合わせることで、ADLトイレ動作の改善に効果的につなげることができます。患者さんの個別の状況に合わせて、柔軟に対応していくことが大切です。

参考文献

  1. Holubova M, et al.: Impact of cognitive performance and negative symptoms on psychosocial functioning in Czech schizophrenia patients, Front Psychiatry 2023; 14: 1216309
  2. Pezzoli P, et al.: Correlations between Negative Symptoms and Cognitive Deficits in Individuals at First Psychotic Episode or at High Risk of Psychosis: A Systematic Review, J Clin Med 2023; 12(21): 6847
  3. Knight MJ, Baune BT: Executive Function and Spatial Cognition Mediate Psychosocial Dysfunction in Major Depressive Disorder, Front Psychiatry 2018; 9: 539
  4. Northey JM, et al.: Brain function effects of exercise interventions for cognitive decline: a systematic review and meta-analysis, Ageing Res Rev 2023; 88: 101895

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