こんにちは、理学療法士の嵩里です。学生にとってデイリーノートの作成は時間がかかり、また指導者側としては日々の業務が忙しくフィードバックが十分に行えないこともあるのではないでしょうか?
学生にSOAP形式でデイリーノートを作成してもらった結果、学生の思考が把握しやすくフィードバックの時間も短縮できたと感じました。
SOAPの書き方と学生指導への活用についてお伝えしたいと思います。
従来のデイリーノート作成の問題点
学生が調べるだけで終わってしまう
学生の頃は、デイリーノートは指導者に説明されたことや調べたことをまとめただけになっていました。見学した内容について調べることに加え、担当症例についての症例レポートも作成しなければなりません。時間が足りず担当症例の患者さんの考察が浅くなり、症例レポートのフィードバックや記載内容の修正が終わらないことも多々ありました。
指導者のフィードバック時間が不足
指導者側になると、日々の業務の中でフィードバックの時間が十分に確保できないことがあります。真面目な学生が多く熱心にデイリーノートを作成してくれることがほとんどです。ですが「何を記載していいか分からないから取り敢えず見たこと全て記載しよう。でも書いたのは良いけど繋がりが分からない」と思っている学生も少なからずいた印象です。
有意義なデイリーノートにするために
学生と患者さん双方に良い影響をもたらすためにも、担当症例のことを第一に考えることが大切かと思います。また実習のあり方も見直され症例レポートの作成は必須ではない学校も増えました。そのため、優先順位を担当症例のデイリーノートの作成にして、簡潔に分かるようSOAP形式で記載してもらいました。学生の能力にもよりますが時間に余裕があれば調べたことをポートフォリオとしてまとめてもらいました。
SOAP形式によるデイリーノートの改善
SOAP形式を採用することで、以下のメリットが得られます:
- 情報の整理が容易に
- 臨床思考力の向上
- フィードバックの効率化
SOAP形式の構成要素
- S (Subjective): 主観的情報
- O (Objective): 客観的情報
- A (Assessment): 問題点リスト
- P (Plan): 計画
- R (Result): 即時効果
- R (Reassessment): 再評価
Subjective(S):主観的情報
→現在の状況やゴールと関係のある情報
- 主訴(機能的主訴も含む)
- 以前の機能レベル
- 家庭、家屋状況
- 生活様式
Objective(O):客観的情報
→検査結果、観察結果
- 疼痛(NRS等)
- バイタル
- 関節可動域
- 筋力
- 感覚
- 歩行
※評価項目は膨大で患者さんによっては取捨選択が必要です。そのため学生はどの評価を行き記載するべきか判断に迷います。事前にどの評価がその人にとって必要か不必要かを判断した理由を説明しましょう。
Assessment(A):問題点リスト
- 活動に影響を及ぼす問題点(箇条書き)
- 介入する問題点に優先順位をつける
- 長期ゴールの設定
- 短期ゴールの設定
Plan(P):計画
- 治療内容
Result(R):即時効果、Reassessment(R):再評価
- 治療に対する効果判定
- 追加で再評価、確認すべき項目
- 追加、変更するプログラム内容はあるか
この箇所は学生にできる範囲で記載してもらいまいましょう。指導者が足りない項目をフィードバックし、次の日にどのような臨床を行うかの打ち合わせも兼ねています。
SOAP形式を用いた指導の流れ
- 指導者のカルテを見せる
- 指導者の考察プロセスを説明
※学生に評価して記載してもらうOは事前に疼痛、可動域、筋力など評価する項目を伝えておく。 - 学生にSOAP形式で記録してもらう
- 学生の着目点を確認し、補足
- 2Rで改めて評価すべき箇所はあるか、追加で行いたいプログラムはあるか確認
- 翌日の計画を確認
SOAP形式導入の成果
指導者側:
デイリーノートの内容が簡潔になり読みやすくなった。結果、フィードバックの時間が短縮でき考察や次の日に何を行うかといった話しが出来るようになった。
学生側:
- 効果判定がしやすくなった。問題点リストで箇条書きにしているため着目する点が明確になった。
- 症例発表が楽になった。毎日評価と効果判定を行うため、最終的には日々行った治療内容をまとめるだけで済んだ。
まとめ
- SOAP形式のデイリーノートにより、情報が整理されやすく指導者側のフィードバックが効率化される。
- 学生は問題点の抽出、優先順位付け、目標設定、再評価といった臨床的思考力を養うことができる。
- デイリーノートの内容が簡潔で分かりやすくなるため、学生・指導者それぞれの負担が軽減できる。
参考図書
セラピスト教育のためのクリニカルクラークシップのすすめ 中川法一