リハビリに必要な物理学について〜例えば〜

リハビリに必要な物理学について〜例えば〜

こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。

理学療法士大塚久

 

本日も前回に引き続き、物理についてお話ししていきたいと思います。

 

前回の記事はこちら↓

リハビリに必要な物理学について〜力とは?〜

リハビリに必要な物理学について〜圧力と応力〜

リハビリに必要な物理学について〜エネルギーと仕事〜

 

今回は、前回までにお話しした物理学の内容が、実際に臨床でどのように応用していくのかをお伝えしたいと思います。

 

 

例えば、、、(仕事について)

 

 

仕事について考えていきます。

体重70kg、地面に垂直に立っている患者が歩くのに必要な仕事はどれくらいかを計算していきましょう。歩行時には、主に地面に対して水平方向に力が働くため、θは0°(cos0°=1)となります。

 

仕事(W)=力(F)×距離(d)×cos(θ)

 

まず、患者に働く重力を計算していきます。地球の重力加速度はおおよそ9.81m/s2なので、

重力(F)=質量(m)×重力加速度(g)F=70kg×9.81m/s2F≒686.7N

 

次に、患者が歩く距離をdとすると、歩行時に必要な仕事は、

W=F×d×cos(θ)=686.7N×d×1

 

例えば、この患者が10m歩くにはW=686.7N×10m×1=6867Jの仕事量が必要になります。風の抵抗などを考慮せず、最低でもこれだけのエネルギーがなければ10m歩けないということになります。

そして、その患者が10m歩くだけのエネルギーを摂取できているかも知っておく必要があります。

 

 

例えば、、、(運動エネルギーについて)

 

さらに運動エネルギーについて考えていきます。

 

運動エネルギー(K)=1/2×重量(m)×速度2(v2

 

患者の体重70kg、歩行速度が1.0m/s(3.6km/h)だとすると、運動エネルギーは、

K=1/2×m×v2=1/2×70kg×(1.0m/s)2=35J(ジュール)

 

このように計算していくと、実際に臨床で患者さん・利用者さんが本当に動けるのかどうかがわかってきます。しかし、実際にはわかりません。これをわかりやすく示しているものがMETsです。

METsは、様々な運動が、安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するかを示したものです。このような指標を参考にするのも良いと思います。

 

 

例えば、、、(位置エネルギーについて)

 

 

位置エネルギーについて考えていきます。

患者が5kgの物体を地面から1.5mの高さの棚に置いた場合の位置エネルギーを計算していきましょう。重力加速度(g)は9.81m/s2とします。

 

位置エネルギー(U)=質量(m)×重力加速度(g)×高さ(h)

U=5kg×9.81m/s2×1.5m≒73.6J

 

患者が5kgの物体を地面から1.5mの高さに持ち上げるために必要なエネルギー消費はおおよそ73.6Jということになります。

患者が5kgのお米を持ち上げるのに73.6Jのエネルギー消費が起こるということです。このお米を持って帰れるのか?なども考えることができます。

 

 

例えば、、、(仕事率)

 

 

では、この5kgのお米(物体)を1.5mの高さに持ち上げるのに3秒かかる場合の仕事率を計算していきます。

 

仕事率(P)=仕事(W)/時間(t)=73.6J/3s ≒24.5W(ワット)

 

このことから、患者が5kgの物体を地面から1.5mの高さに持ち上げるのに3秒かかる場合、仕事率はおおよそ24.5Wということがわかります。これが、持ち上げるのにかかる時間がもっと短くなるとより仕事率は上がり、より効率よく仕事ができるということになります。

 

このように、ある行動にどのくらいのエネルギー消費が必要なのかを計算することができます。今回の例では摩擦などが考慮されていないので、実際にはこのような綺麗な計算式にはなりません。今回の例の計算式で出た値を最低値とし、最低でもこれだけの仕事が出来なければならないと考えることができます。

また、先程述べたMETsについても見直し、食事で摂っているエネルギー量と運動とのバランスが取れているかなども考えてみましょう。

 

 

まとめ

 

リハビリに必要な物理学について〜例えば〜

1. 物理の計算式に当てはめることで、ある行動にどれくらいのエネルギー消費が必要なのかを計算することができる。

2. 風の抵抗や摩擦などを考慮していないため実際の値とは異なるが、最低値を知ることができる。

3. METsを見直し、各運動のエネルギー消費はどれくらいなのか、食事と運動のバランスが取れているかなど考える。

 

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