こんにちは、理学療法士の嵩里です。
皆さんは患者さんに自主トレーニングの提案を行なっていますか?今回はトイレ動作改善に向けた、上肢の自主トレーニングについてお話しします。
前回の記事はこちら>>>リハビリにおける効果的なコミュニケーション 【病棟スタッフ編】 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜
自主トレーニングの重要性
患者さんに、リハビリ以外の病棟生活をどのように過ごしてもらっていますか?回復期病棟に入院中であれば、脳血管疾患ではPT・OT・ST合わせて最大9単位分のリハビリ介入が行えます。
しかし、退院後はリハビリ時間が大幅に減ってしまいます。入院中から積極的に両手でADL動作を行うよう習慣化し、退院後に自主トレーニングを継続することで、上肢機能の改善につながることが分かっています。
そのため、入院中から自主的なリハビリを行うよう習慣付けていく必要があります。
自主トレーニングが行える対象者
自主トレーニングを提供できるのはBr.stageⅢ以上の随意運動・随意収縮を認める患者さんが対象になります。Br.stageⅠ〜Ⅱの過程であれば、まず連合反応を利用した促通を行いましょう。
自主トレーニングで獲得したい上肢動作
トイレ動作で獲得したい上肢動作は以下の3つが考えられます。これらを獲得できるような自主トレーニング内容を考えていきます。
- ズボンを把持する
- ズボンを引き上げる
- 手を洗う
自主トレーニング方法
患者さんの麻痺の回復過程に合わせた自主トレーニングを提供します。トイレ動作のどの工程が難しいのか、どこまで分離ができるかの評価を行います。
苦手な分離運動を促通するためのトレーニングを行なってもらいます。運動内容としてはBr.stageや上田式片麻痺機能テスト(12段階片麻痺機能法)のテスト項目を参考にすると良いです。
課題の難易度は、現状のステージより1つ上のステージ課題に設定しましょう。回数は1つの動作に対し50回を目標に行います。
例:
- ズボンの把持→手指Br.stageⅢ
- ズボンの引き上げ→上肢Br.stageⅢ
- 手を洗う→手指Br.stageⅣ
動作練習
自主トレーニングに加えて、動作練習として日常の生活でも上肢を使用してもらいましょう。
麻痺が改善した患者さんでは、生活の中で「手を洗う」、「ズボンを腰まで上げる」、「靴下の着脱」、「背中を洗う際は両手でタオルを持つ」等の動作を両手で行うことで、退院後の上肢機能が改善したことが分かっています。
動作練習は「ズボンの把持・引き上げ、手を洗う」を繰り返し練習します。自身でどこまで行えるかを確認し、病棟生活でも行なってもらうよう指導しましょう。
病棟で実際にやってもらう
ここで、前回のコラムでお伝えした情報共有が大切になります。自主トレーニング指導時やリハビリ場面だけトイレ動作が行えていても、病棟生活で行えていなければ効果は半減してしまいます。また自宅退院後も家族の介助に頼ってしまうことが懸念されます。
自宅退院後も継続して動作が行えるよう、動作練習は必要不可欠となります。
まとめ
- 上肢機能の改善には自主トレーニングが効果的
- 麻痺の回復過程に合わせた課題を提供する
- 動作練習を行い病棟でしているADLに繋げる
参考文献
及川愛子 外来脳卒中片麻痺者の麻側上肢の機能変化とADLとの関連性 理学療法科学18(2):69-74, 2003
続きはこちら>>トイレ動作のための下肢の自主トレーニング実践ガイド 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜
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トイレ動作を改善できるようになるには以下のステップが必要です
- 対象者にとってトイレ動作がなぜ必要なのかを共有する
- トイレ動作の工程を分析する
- 問題となっている工程の問題点を抽出する
- 抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う
- 結果を適切な方法で記録・伝達する
トイレ動作が改善できないで悩んでいる時、このステップのどこかで問題を起こしている可能性があります。
1.対象者にとってトイレ動作がなぜ必要なのかを共有する
「トイレ動作はできた方がいい」と漠然と思っていませんか? もちろんできたほうがいいのは間違い無いですが、その「できた方がいい理由」を明確にしてみましょう。例えば以下のような報告があります。
「13項目の運動FIMと8項目の認知FIMを説明変数とし、目的変数を在宅復帰とした重回帰分析を行ったところ食事・更衣(上半身)・トイレ移乗の項目が他項目に比し、有意に在宅復帰と関連性が認められた」
出口貴行・藤本俊一郎.・大平隆博・平尾寛子・塩田和代(2012).脳卒中地域連携クリティカルパスからみた在宅復帰に影響する関連因子の検討.日本医療マネジメント学会雑誌Vol.12より引用
このようにトイレ動作は食事・更衣動作と並び在宅復帰のための条件として優先順位が高いことが伺えます。
2.トイレ動作の工程を分析する
例えばトイレ動作の工程は大きく分けると4つの工程に分解できます。
①トイレに向かう
→尿意・便意を催して、車椅子駆動or歩行でトイレまで向かいます。そのためには車椅子駆動するための上肢機能や歩行のための下肢機能が必要になります。またこの際、転倒リスクが高い方は、スタッフに声掛けするor転倒ムシ設置など何らかの工夫を要する場合もあります。
②移乗動作
→車椅子レベルの方であれば、車椅子・便座間の移乗動作も必要になってきます。トイレは空間が狭いため、正面に停めた状態で180°方向転換が必要です。この時は立位の状態を保持しながら手すりを把持したりと、四肢・体幹の分離した動きがより高度に求められます。
③下衣の着脱動作
→立位保持を上肢フリーで行えるか、手すり把持で行うかによって難易度が変化します。
両上肢をフリーで使用できれば、容易に可能なことが多いですが、手すり把持の状態であると。片手で着脱を行う必要があり、立位保持時間もより長く要求される場合が多いです。
④座位動作(座位保持、清拭)
座位では主に清拭動作が大きな比重を占めてきます。清拭動作では、上肢のより細かい巧緻動作が必要になってきます。上肢の分離運動はもちろんのこと、手指の分離運動も高いものが要求されます。
今回のセミナーではさらに工程をさらに細かく分解して考えていきます。
3.問題となっている工程の問題点を抽出する
各工程に対して必要な
- 関節可動域
- 筋力
- 分離の程度
を評価し、問題点を抽出する必要があります。
例えば
方向転換して、便座に背を向ける
- 上田式12段階グレード
- 体幹機能(体幹を安定させることが出来るか)
- 体幹グレードⅣ-ⅲ以上
- 下肢機能(方向転換できるか)
- 下肢グレードⅣ-ⅲ以上
- 体幹機能(体幹を安定させることが出来るか)
- 関節可動域
- 股関節外転、内転
- 膝関節屈曲、伸展
- 足関節背屈、底屈
- 筋力
- 体幹筋群
- 腹直筋、腹横筋、多裂筋など
- 下肢筋群
- 大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、前脛骨筋など
- 体幹筋群
を評価する必要があります。
4.抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う
抽出された問題点に対して適切なアプローチ方法を行う必要があります。
今回のセミナーでは
- 関節モビライゼーション
- 筋膜のリリース
- 促通
- 動作訓練
をお伝えします。
5.結果を適切な方法で記録・伝達する
結果の共有は、単に結果を伝えるだけではありません。患者さん自身の現状を理解し、目標達成に向けた具体的な道筋を提示する重要な役割を果たします。
- 現状把握とゴール設定:評価結果を共有することで、患者さん自身がトイレ動作における課題を認識し、目標設定に積極的に取り組むことができます。
- 治療計画の策定:課題を明確にすることで、効果的なリハビリテーションプログラムを構築し、最適な介入方法を検討することができます。
- 患者さんとの信頼関係構築:丁寧かつ分かりやすい説明は、患者さんとの信頼関係を築き、治療への協調性を高めることにつながります。
今回のセミナーではADLで特に自身で行いたい動作のトイレ動作を動作の分析方法から、評価、介入方法、自主トレ方法、対象者、他職種への伝達法をお伝えします。
ここまでの5つのステップを習得して患者さんにとってより良いリハビリを提供できるようになりませんか?
講習会詳細
会場 | 【土日開催】 【平日開催】 |
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定員 | 土日:24名 平日:6名 |
参加費 | 11,000円(税込)(会場、オンラインともに同額となります) |
参加資格 | 医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、養成校学生(学生は受講料が半額となります。) |
持ち物 | 筆記用具 ヨガマット(推奨、バスタオルで代用可) 普段使用している整形外科の教科書 バスタオル1枚 動きやすい服装 |
講習会内容 |
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