ハムストリングス 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

はじめに

こんにちは、内川です。

ハムストリングはみなさん臨床でよく評価する筋群ではないでしょうか?変形性膝関節症や変形性股関節症、半月板損傷など、膝や股関節に関わる疾患でよく問題になる筋肉です。

半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋は膝の屈曲筋として働き、歩行や立ち座り、階段昇降、姿勢保持など、日常動作でキーとなる筋肉です。上手く働かないと移動に支障をきたしたり、硬くなると姿勢保持における首腰の痛みにつながることもあります。

正しく評価することでこの筋の影響を判断する材料となります。今回はハムストリングの機能と評価法を一緒に学んでいきましょう。

目次

  1. ハムストリングの解剖と作用
  2. 評価方法
  3. 効果的なアプローチ
  4. 歩行時の役割
  5. 臨床での重要ポイント
  6. まとめ
  7. 参考文献

1. ハムストリングの解剖と作用

ハムストリングの解剖図

内側ハムストリング

  • 半腱様筋
    • 起始:坐骨結節
    • 停止:脛骨上部内側面(鵞足)
  • 半膜様筋
    • 起始:坐骨結節
    • 停止:脛骨の内側顆および膝関節後部

作用:股関節伸展、膝関節屈曲、膝屈曲位での膝関節内旋
神経支配:坐骨神経(脛骨神経)

外側ハムストリング

  • 大腿二頭筋短頭
    • 起始:大腿骨粗線
    • 停止:腓骨頭、脛骨外側顆
    • 神経:坐骨神経(総腓骨神経)
  • 大腿二頭筋長頭
    • 起始:坐骨結節
    • 停止:腓骨頭、脛骨外側顆
    • 神経:坐骨神経(脛骨神経)

作用:股関節伸展、膝関節伸展、膝屈曲位での膝関節外旋

2. 評価方法

視診と触診

  • 筋肉の緊張や圧痛の左右差を確認

大腿二頭筋とともに坐骨結節から大腿中央を下行し、膝窩手前で内側外側に分かれます。筋腹は大腿中央より内側に位置する為、手を置き膝の屈曲で収縮させ筋を触れているか1度確認しましょう。

徒手筋力検査(MMT)

段階5、4、3の測定

  1. 腹臥位で実施(足趾はベッドから出す)
  2. 膝関節を最大屈曲(段階3のテスト)
  3. 膝関節屈曲45°で、内側/外側ハムストリングに応じて下腿を回旋
  4. 大腿後面を安定させ、下腿に抵抗を加える

判断基準

  • 5:最大抵抗に対して保持
  • 4:強度から中等度の抵抗に対して保持
  • 3:抵抗なしで全可動域を動かし保持

段階2、1、0の測定

  • 段階2:側臥位で膝関節屈曲
  • 段階1、0:腹臥位で軽度膝屈曲位から膝の屈曲を観察

判断基準

  • 2:除重力で全可動域を動かせる
  • 1:腱が浮き上がる
  • 0:筋の収縮なし

Straight Leg Raise (SLR) テスト

  1. 背臥位で下肢を伸展位に
  2. 膝を伸展したまま他動的に下肢を挙上
  3. 骨盤後傾やハムストリングス伸張痛が生じた位置で角度測定

判定基準

  • 正常:股関節屈曲70~90°
  • SLR陽性(ハムストリングス短縮):70°以下

3. 効果的なアプローチ

ストレッチ

  1. 背臥位でストレッチする側の下肢を挙上
  2. 両手で膝の裏を抱え、膝の伸展と屈曲を10回繰り返す

トレーニング:ヒップリフト

  • ハムストリングス強化:膝を鈍角に
  • 大殿筋強化:膝を90°屈曲
  • 20回繰り返し、腰のそりすぎに注意

4. 歩行時の役割

  • 初期接地~荷重応答期:衝撃吸収と体重支持の安定化。このときに大腿全面の広筋群とハムストが同時収縮し初期接地を安定させます。
  • 立脚中期:前方推進力の生成。大腿全面の広筋と半腱様筋半膜様筋の相互作用により股関節を伸展します。
  • 遊脚中期後期:下肢振出しの制動。大腿二頭筋、半膜様筋が働きます。

5. 臨床での重要ポイント

  • 半膜様筋と内側半月板の関連:短縮や過緊張が内側半月板損傷の誘因になる
  • SLRテストの留意点:
    • 腸脛靭帯や胸腰筋膜の影響も考慮。ハムストリングスより影響が強いとの報告もあり。
    • 神経症状(腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症)の鑑別に注意。屈曲
      35°~70°程度において坐骨神経にそった下肢の放散痛やしびれが起こる場合、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が疑われます。このテストを行う場合は伸張痛なのか、神経痛なのか問診しながら慎重に行う必要があります。(伸張痛の場合はつっぱる感じ、これ以上伸びない感じ。神経痛の場合はびりっとする感じ、強い痛み、違和感等。)神経症状が疑われる場合、併せて腱反射や局所的な筋力低下がないか確認しましょう。神経症状が疑われる場合、必ず医師に報告しましょう。
  • 殿筋群との協調性:殿筋群の出力が生じている場合、代償的に半膜様筋を働かせます。また殿筋と比べハムストリングスが優位に働く場合、股関節伸展が不十分となり腰部の筋で代償しやすくなります。

6. まとめ

  1. ハムストリングスは内側と外側に分かれる筋群で、主に坐骨結節から起始し、脛骨や腓骨に停止します。主な作用は股関節伸展と膝関節屈曲で、歩行や姿勢保持など日常動作に重要な役割を果たします。
  2. ハムストリングスの評価には視診、触診、MMT、SLRテストが用いられます。MMTは0-5段階で筋力を評価し、SLRテストは伸張性を評価します。アプローチとしては、ストレッチやヒップリフトなどのトレーニングが効果的です。
  3. ハムストリングスは歩行周期の各局面で重要な役割を果たし、衝撃吸収、体重支持、前方推進力の生成、下肢の振り出しの制動に関与します。機能不全は姿勢や歩行に影響を与え、殿筋群との協調性も重要です。臨床的には、神経症状の確認も必要です。

より深い解剖学的知識を身につけることで、効果的な治療アプローチが可能になります。詳細な解剖学を学びたい方は、こちらの解剖学セミナーがおすすめです。

7. 参考文献

  • 症例動画から学ぶ 臨床整形外科的テスト
  • 新・徒手筋力検査法 原著第10版
  • プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版
  • 股関節 協調と分散から考える
  • 症例動画から学ぶ 臨床歩行分析

この記事が、ハムストリングの機能と評価に関する理解を深める一助となれば幸いです。臨床現場での実践に役立ててください。

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