認知症に対する薬物療法についてfrom リハコヤ

毎週月曜日は一年前にリハコヤでライブ配信されたものの一部を文章でお届けします。

 

本日は認知症に対する薬物療法についてお伝えします。

 

 

認知症に対するアプローチ方法を考えていくときに、その方がどのような薬を服用しているか確認すると思います。その薬について本日は触れていきたいと思います。

 

 

認知症に処方される薬とは?

 

 

認知症に処方される薬の目的は、主に中核症状の進行予防とBPSD(認知症の行動・心理症状)の抑制の2つがあります。

 

 

中核症状の進行予防に対する薬とは?

 

 

中核症状の進行予防に対する薬にはコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬があります。

 

アリセプトなどが有名なコリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリン分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼの動きを阻害するものです。アルツハイマー型認知症では、アセチルコリンの合成が低下し、注意機能・記憶・学習に障害をきたすとされているため、コリンエステラーゼ阻害薬はその根拠に基づいています。アセチルコリンを増加させるのではなく、アセチルコリンの分解を抑制するためにコリンエステラーゼ阻害薬が処方されます。

 

NMDA受容体拮抗薬は、グルタミン酸の受容体であるNMDA受容体の活動を抑制します。グルタミン酸は記憶や学習の役割を担っているため多ければ多いほど良いような感じがするかもしれませんが、NMDA受容体が過活動になると、カルシウムイオンがシナプスの伝達を阻害したり、神経細胞のアポトーシスにつながったりすると言われています。これらの過活動を抑えるためにNMDA受容体拮抗薬が処方されます。

 

これらの薬はDr.が処方するものですが、療法士は記憶や学習の面を注意してみておくことで、薬の効果の有無をDr.と情報共有することができます。

 

 

BPSDの抑制に対する薬とは?

 

 

BPSDの抑制に対する薬は、症状により様々な薬が処方されます。症状としては、幻覚、妄想、焦燥、攻撃性、抑うつ症状、不安、緊張、睡眠障害などがあり、それに対して抗精神薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入薬などが処方されます。BPSDに対するこれらの薬は、非薬物的介入で改善がみられない場合に検討されます。

 

 

BPSDに対して療法士ができることは?

 

 

BPSDに対する非薬物的介入とは具体的に、認知機能訓練、認知刺激、認知リハビリテーション、運動療法、音楽療法、回想法、認知行動療法などが推奨されています。非薬物的介入は療法士の出番というわけです。

 

療法士は、ICFの環境因子・個人因子の評価をしっかりと行い、その人が不穏になるとき・笑顔になるときはどのようなときなのか情報聴取・観察をしていくことで、BPSDを抑制することは可能です。

さらに、他部門と連携を取っていくことが重要です。療法士が患者さん・利用者さんと関わることのできる時間は1日のうちのほんのわずかな時間です。看護師・介護士の方が関わる時間は多いので情報は沢山もっています。ご家族や相談員、ケアマネージャーも療法士が知らない情報を沢山持っています。

しっかりと情報共有することで、BPSDに対してアプローチをしていきましょう。

 

 

まとめ

 

認知症に対する薬物療法について

1. 認知症に処方される薬の目的には、主に中核症状の進行予防とBPSD(認知症の行動・心理症状)の抑制の2つがある。

2. BPSDに対する薬物療法は、非薬物的介入で改善がみられない場合に検討される。

3. 療法士は、ICFの環境因子・個人因子の評価を行い、その人が不穏になるとき・笑顔になるときはどのようなときなのか情報聴取・観察をしたり他部門と情報共有したりすることで、BPSDに対して非薬物的介入をおこなう。

 

 

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