こんにちは、理学療法士の赤羽です。
疼痛について解説するシリーズの第7回目です。前回は痛みの悪循環について、痛みの恐怖回避モデルから解説しました(恐怖回避モデルから学ぶ痛みの悪循環 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜)前回のコラムでは、患者さんの疼痛の捉え方によって回復してくるか悪循環になるのか変わること、悪循環を断ち切ることが大切でそのために必要なことの1つとして患者指導があるため、医療者は痛みについて知っておく必要性があることを解説しました。
今回は、疼痛の分類について詳しく見ていきます。
疼痛は患者さんの生活の質や日常生活に大きな影響を与えることがあります。適切な疼痛管理のためには、その方の疼痛がどのように分類されるのかを理解することが重要です。私自身、痛みについて勉強する前は、痛みの種類についての認識が乏しかったのですが、この知識を得ることで痛みへの捉え方が大きく変わりました。
疼痛の分類について
疼痛の分類には主に2つの方法があります:
- 時間的分類:「急性疼痛」と「慢性疼痛」
- 神経メカニズム的分類:「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「痛覚変調性疼痛」
「急性疼痛」と「慢性疼痛」
急性痛:組織損傷や炎症に伴う侵害受容による痛みです。生物にとって警告信号として重要で、通常は創傷修復過程で改善します。
慢性痛:一般的に3ヶ月以上継続する痛みを指します。「急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を超えて持続する痛み」と定義されています。慢性疼痛には基本的に生物学的意義はなく、急性疼痛とは異なる病態となります。
神経メカニズム的分類
【侵害受容性疼痛】
組織損傷の危険がある場合や、実際の組織損傷・炎症に関連する疼痛です。侵害受容器の活性化によって生じます。外傷や術後の痛み等がこれに分類されます。
【神経障害性疼痛】
侵害受容器や痛覚伝導路を含む体性感覚神経系の異常によって生じる疼痛です。神経が何らかの原因で障害された場合に生じます。坐骨神経痛や糖尿病性末梢神経障害、帯状疱疹後神経痛等が例として挙げられます。
【痛覚変調性疼痛】
侵害受容器を異常に興奮させるような神経の損傷やその周囲の組織へのダメージ、神経伝導路の異常がないにもかかわらず、痛みの知覚異常・機能の変化によって生じる痛みです。つまり、明確な神経損傷や組織損傷等がないにも関わらず疼痛が生じている状態です。線維筋痛症やCRPS、原因不明の腰痛等がこれに該当します。
まとめ
疼痛の分類を理解することで、患者さんの状態をより正確に把握し、適切な疼痛管理につなげることができます。また、この知識は患者教育にも役立ち、患者さんとの信頼関係構築にも寄与します。
ポイントを3つにまとめると:
- 時間的分類:急性痛と慢性痛
- 神経メカニズム的分類:侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛
- 疼痛の分類を理解することで、患者教育に役立つ
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参考文献
- 慢性疼痛とは? | 慢性の痛み情報センター (itami-net.or.jp)
- 猪狩裕紀,牛田享宏:慢性疼痛のメカニズムとアセスメント, Jpn J Rehabil Med 2021;58:1216-1220
- 一般財団法人 日本痛み財団:いたみの教科書―「疼痛医学」ダイジェスト版,医学書院,2021
- 半場道子,慢性痛のサイエンス 第2版: 脳からみた痛みの機序と治療戦略,医学書院,2023
- ペインリハビリテーション入門,三輪書店,2020 ,