デイサービス新人療法士が最初の30日で確認する15項目|ICF視点で整理

デイサービス新人療法士が最初の30日で確認する15項目|ICF視点で整理

デイサービスの最初の30日|なぜ、筋力評価から始めると迷いやすいのか

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。

初出勤の日。利用者さんの名前と疾患、送迎時間、介助方法、マシンの設定、記録場所、職員の動き。覚えることが多すぎて、気づけば「まず全員の筋力を評価しなければ」と焦っていないでしょうか。

デイサービスでは、療法士が利用者さんと関わる時間だけを見ても全体像はつかめません。送迎から帰宅までの過ごし方、介護職の声かけ、食事や入浴、他利用者との関係、家で続けたい生活まで含めて初めて、機能訓練の意味が見えてきます。

この記事では、入職後30日を3段階に分け、最初に確認する15項目を整理します。

  • 1週目は「安全と事業所の流れ」を把握することが最優先
  • 2週目は「利用者の一日と生活背景」を一人追うことで全体像がつかめる
  • 3〜4週目は「一人の利用者で仮説・共有・再評価」を一単位として完結させる
💡 この記事の結論・ポイント

1週目は「安全と事業所の流れ」、2週目は「利用者の一日と生活背景」、3〜4週目は「一人の利用者で仮説・共有・再評価」を確認します。

最初から全員を詳しく評価するより、一人の生活を最後まで追う方が、デイサービスでの療法士の役割を理解しやすくなります。

通所介護の個別機能訓練では、利用者本人や家族の意向、居宅での生活状況、ADL・IADL、介護支援専門員などとの共有を踏まえて、目標と訓練内容を見直していくことが求められます。評価用紙を埋めるだけでは、機能訓練が生活のどこへつながるのかは決まりません。

またICFでは、生活機能を心身機能だけでなく、活動・参加・環境因子との相互作用として捉えます。新人の最初の仕事は、すぐに正解のプログラムを作ることではありません。事業所と利用者さんの生活を観察し、「何が分かっていて、何がまだ分からないか」を整理することです。

要点:最初の30日の到達点

全利用者の評価を完成させることではなく、一人の利用者について「希望・心身機能・日常活動・社会参加・生活環境」のつながりを一枚で説明し、多職種と次の一手を共有できる状態を目指します。

1週目|安全と事業所の流れを知る

最初の1週間は、介入技術よりも「この事業所で安全に働くための地図」を作ります。分からないことを自己判断せず、事業所の基準と相談経路を確認します。

項目1|一日の時間割

送迎、バイタル、入浴、食事、集団活動、個別機能訓練、記録、帰宅準備の順序を確認する。

項目2|急変・転倒時の動き

報告先、緊急連絡、記録、家族・ケアマネジャーへの連絡担当を確認する。

項目3|情報の保管場所

通所介護計画、個別機能訓練計画、看護記録、送迎・入浴・食事情報がどこにあるかを知る。

項目4|基本介助と禁忌

移動方法、装具、疼痛、血圧、転倒歴、医療的注意点を先輩職員と照合する。

項目5|訓練外の様子

席からの立ち上がり、トイレ、食事、他者交流、帰宅準備を観察する。

2週目|一人の利用者の一日を追う

2週目は、全員を浅く評価するのではなく、一人を決めて送迎到着から帰宅まで追います。訓練場面以外に、生活課題の手掛かりがどれだけあるかを確認します。

項目6|利用中の動線

到着、座席、トイレ、食事、活動、帰宅まで、どこで自立し、どこで支援が増えるかを見る。

項目7|本人と家族の希望

「何を改善したいか」だけでなく、「できるようになったら何をしたいか」を一つ聞く。

項目8|目標と訓練のつながり

計画書の目標、現在の訓練、実生活で困る場面が一本につながっているか確認する。

項目9|介護職が知っている変化

疲れる時間、声かけで変わる場面、最近できるようになったことを聞く。

項目10|共有できる記録

検査値だけでなく、場面・条件・反応・次の確認事項を一文で残す。

要点:聞き方の例

「家で困っていることはありますか」だけで終わらず、「最近、家族に頼むようになったことはありますか」「デイに来る前は何を楽しみにしていましたか」と、具体的な生活場面へ広げます。

3〜4週目|仮説を一つ試し、多職種へ返す

後半は情報収集だけで終わらせず、一人の利用者について小さな仮説を立てます。条件を一つ変えて反応を確認し、結果を多職種へ返すところまでが一単位です。

項目11|4つの視点を並べる

心身機能・日常活動・社会参加・生活環境に所見を一つずつ置き、中心に本人の希望を書く。

項目12|優先課題を一つ選ぶ

安全性、本人の希望、頻度、介助負担から、今月扱う課題を一つに絞る。

項目13|条件を一つ変える

座席、道具、声かけ、手順、運動量など、一条件だけ変更して反応を見る。

項目14|60秒で共有する

「生活上の困り→観察所見→試した条件→変化→次の確認」の順で報告する。

項目15|次の30日を決める

継続、修正、中止、追加評価のどれかを選び、誰がいつ確認するかを決める。

新人が陥りやすい3つの遠回り

  • 全員を一気に評価する:情報量より、生活とのつながりを優先する。
  • 一人で訓練を変える:変更前後を介護・看護・送迎・家族と共有する。
  • 「下肢筋力向上」で止める:改善後に取り戻す活動・参加まで言葉にする。

ミニ事例|運動メニューより先に見えたこと

※以下は説明用の架空事例です。

デイサービスへ配属された新人OTが、要支援2の80代女性を担当しました。計画書には「下肢筋力向上」とあり、本人もマシン運動には真面目に参加していました。しかし一日を追うと、帰宅準備になると歩行器のかごへ荷物を入れられず、毎回職員へ頼んでいました。

本人に尋ねると、「近所の店へ自分で買い物に行きたい」という希望が分かりました。そこで、下肢筋力だけでなく、立位での荷物操作、歩行器の配置、疲労する時間帯、家族が止めている理由を整理しました。

午後の疲労が少ない時間に、軽い荷物をかごへ入れる練習を一条件ずつ試すと、見守りで行えるようになりました。

新人OTは「筋力訓練を変更しました」ではなく、「買い物再開に向け、帰宅準備で荷物操作を確認。歩行器を右斜め前へ置くと見守りで可能。次回は自宅の買い物袋の重さを家族へ確認する」と共有しました。機能訓練が生活へつながった瞬間です。

🏃‍♂️ 明日からできるアクションプラン

明日は利用者さんを一人決め、訓練場面だけでなく、到着・移動・食事・トイレ・他者交流・帰宅準備のうち3場面を観察してください。最後に「本人が大切にしていること」「できていること」「次に確認すること」を一文ずつ記録します。

まとめ

  1. 1週目は、安全基準と事業所の一日の流れを把握する。
  2. 2週目は、一人の利用者の訓練外場面と生活背景を追う。
  3. 3〜4週目は、4つの視点から課題を一つ選び、一条件を試して多職種へ返す。

そのまま使える記録シート|最初の30日チェックリスト

一度に埋めるのではなく、確認できた日と相談先を記録して使用します。

1週目

  • □ 一日の時間割 / 確認日:____ 相談先:________
  • □ 急変・転倒時の動き
  • □ 情報の保管場所
  • □ 基本介助と禁忌
  • □ 訓練外の様子

2週目

  • □ 利用中の動線 / 確認日:____ 相談先:________
  • □ 本人と家族の希望
  • □ 目標と訓練のつながり
  • □ 介護職が知っている変化
  • □ 共有できる記録

3〜4週目

  • □ 4つの視点を並べる / 確認日:____ 相談先:________
  • □ 優先課題を一つ選ぶ
  • □ 条件を一つ変える
  • □ 60秒で共有する
  • □ 次の30日を決める
要点:60秒共有の型

「本人は[希望]を大切にしている。[生活場面]で[所見]があり、[条件]を変えると[変化]した。次回は[確認事項]を[担当者]と確認する。」

本記事は教育目的です。実際の運用は、所属事業所の基準、利用者の医学的状態、担当者・多職種の判断を踏まえて実施してください。

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この記事の執筆・監修

執筆:内山 遼太(作業療法士)生活期・慢性期・終末期

監修:大塚 久(理学療法士・療法士活性化委員会 代表)