大塚久の現在地。

いつもありがとうございます、大塚です。
ちょっと徒然なるままに書いてみたのでお時間のある方はお読みください。
(長文で写真は一切ありません、そんなに勉強になる内容でもありません笑)

ちょっとあることがきっかけで自分の考え方のもとになっていることを思いだした。

僕は理学療法士の養成校に入る前に介護士の仕事をしていた。「誰かの役に立ちたい!」なんて崇高な思いではなく、単純に大学受験に失敗してやることないからやってみよう、とかその程度。

でも介護士としていろんな人のお世話をして「ありがとう」って言ってもらえることにやりがいを感じていた。

でもね、「ありがとう」って行ってもらえない人もいたんだ。それは認知症を持った方々。お世話をしたくても思ったようにやらせてもらえない、できたとしてもまたすぐ汚したりしてしまう。どうしていいかわからなかった。認知症病棟に入るのが嫌で嫌でしかたなかった。

今考えると自分の都合でお世話を“してあげてた“んだからそりゃ嫌がられるよね。でもそんなこと当時はわからなかった。

そしてあるとき利用者さんからこんなことを言われた。

「お兄ちゃん、あたしの足早く治してよ、うち帰ってやりたいことがたくさんあるのよ」

何もできなかった。申し訳ないと思うとともに、自分自身悔しいし、恥ずかしかった。

仕事として介護を“してあげて”、「ありがとう」を搾取し、いい気になり、一方では相手の本当にやりたいことをやれる方法は何一つ知らない。相手に寄り添っているつもりで何もできていなかった。

そこで治せる方法を知ってる人として選んだのがリハビリの仕事だったんだ。

そのときの僕はリハビリの資格を取れば“治せる”と思っていたんだ。

そして理学療法士になった僕は最初、療養型の病院に就職した。療養型の病院ってのは入院期間が決まってなくていつまでも入院できるところ。だから「10年、12年入院してます」って人はたくさんいた。

理学療法士って患者さんの望む生活に戻れるように筋肉をつけたり関節の動きを良くしたり、歩いたりするのが仕事。でもそこに入院している人は退院もしないし、劇的に筋力が回復したり関節が動くようになったりすることはなくてよくも悪くも現状維持。少しずつ機能は低下していく。正直理学療法士として関われることなんてないと思っていた。リハビリやる意味ないと思っていた。

治せるようになると思ってリハビリの資格を取ったのにやっぱり治せなかった。

ちょっと前にSNSで似たようなこと言ってプチ炎上している人もいたね。みんな非難していたけど気持ちはすごくわかる。だってどうしていいかわからないんだもん。

そんなとき転機となる出来事があったんだ。

それは病院がやってるクリスマスパーティ。そのパーティではね、入院している最高齢の人が乾杯の挨拶をする役割があるんだ。

そしてその年の乾杯の役割は僕が担当していた患者さん。個人情報だから詳しくは言えないけど、もう3桁に近いお年で、車椅子に10分座っているのがやっとぐらいの体、手を上に上げるのも難しくて認知力の低下もあった。

その日からリハビリでも乾杯の動きを取り入れた練習をした。これがなかなかうまくやってくれる。機能的にはきついはずなのに乾杯の挨拶の練習はできたんだよね。

不思議に思っていたらたまたま来ていたご家族から

「おばあちゃん集まりがあるといつも一番年上だから乾杯の挨拶をやってたんです。やってるうちに乾杯の挨拶が好きになってねぇ」

なるほどと思った。

そしてクリスマスパーティ当日。たくさんの人たちが集まる中、部屋中に響き渡るくらい大きな声で「カンパ〜イ!!」ってコップを持ち上げながら挨拶できた。みんなそれに合わせて乾杯してそのあと起きた大きな拍手と笑顔、そしてそれをキョトンとした顔で見ていたその方を、今も忘れられない。そのときの座っている時間は待っている間も入れてゆうに30分は超えていた。

これは当時の僕には衝撃だった。

患者さんの評価にはいろんな見方があって、当時の僕が教わっていたみかたは「IDH」と呼ばれているもの。

I:機能制限 → D:運動制限 → H:社会的不利

ってな感じで体が動かなくなる、動作ができなくなる、社会生活が送れなくなるみたいな感じの考え方で体の機能を良くすることで運動ができるようになって社会に参加できるって当時の僕は解釈していたんだけど、この考えでいくと今回の出来事は全く理解できなかったんだ。

だって先に社会参加(乾杯の挨拶)が決まって、それから運動(乾杯動作)をやって、最後に機能(腕をあげる、座っている時間が伸びるなど)が勝手に改善していた。

そこで出てくるのがICF(国際生活機能分類)だ。ICFは2001年5月に世界保健機構で採択された新しい基準。ちょうど僕が養成校に通っている最中の実習先で知った概念だ。

で、このICFの概念のいいところはIDHのような身体的側面だけの一方向のモデルではなく、心身機能、身体機能、活動、参加、さらに個人因子、環境因子などがあり、それぞれが相互に関わっているというのがポイントだった。つまり機能が活動や参加に影響するだけでなく、参加から機能への影響もあるよってことだ。さら参加に関わる因子として機能だけではなく環境や個人の特性も関係すると言うこと。この基準で見ると先の乾杯の例がしっくりきた。そして必ずしも機能にこだわる必要はないと分かったんだ。

これは大きな発見だった。それまで療養型病院での理学療法士としてのリハビリに限界を感じていた僕は担当患者さんの「参加」を必死に探した。何かしら役割があることでそこにいる意味がある。そう思うと自然とポジショニングや排泄交換時に必要な身体機能にも目が向くようになっていった。少しだけ報われた気がした。

でも限界はあった。そもそもの状態が良くなかったからだ。そこで僕は整形外科に転職する。そこで待っていたものは非常にシンプル。単純に技術が足りなかった。

療養型の病院では正直機能は改善しているかどうかはそこまで重要ではないので変化が出ないことに対して曖昧な部分があった。しかし整形外科では通用しない。そこに来ているのはすぐに帰って日常生活が待っている人たちだ。そして変化がなければ次回来院してもらえない。嫌と言うほど自分の技術のなさを思い知らされた。

そこで技術を学ぶために選んだのが山口光圀先生のセンスアップ+1だった。山口光圀先生と言えば結果の出せる整形外科の理学療法をはじめとした数多くの書籍を執筆され、理学療法士なら知らない人はいないだろうと言うくらい高名な先生だ。きっと数多くの治せる技術を教えてもらえるだろうと参加したがそこで待っていたのは最初に想像していた技術とは全く異なり、

  • 患者様をどう捉えるか?
  • そのための自分自身の準備は?
  • 自身の所作は?

などほとんどが自分自身に目を向けるものだった。そして治療の技術は誰も知らないような目を見張る技術ではなく、関節の運動学、筋肉の作用や走行など基礎をもとにした体が動きやすくなるのはどうしたらいいか?といった基礎の応用だった。

今思い出してみるとこのときの自分自身に目を向けることや基礎が大事って学んだことが理学療法士としての自分の基本になっているのかもしれない。

でもね、この時は基礎は大事って分かっていながらやっぱり疎かにしていた。だって基礎ってめんどくさいし、地味なんだもん笑

そして次に運命的な出会いをする。それが国際統合リハビリテーション協会(通称IAIR)だ。僕が通い出した当時は統合的リハビリテーションアプローチ研究会(通称IRA)で作業療法士の仲村ケイ先生が立ち上げた団体。当時のIAIRは「保健外でも通用する技術を」を謳い文句にその場で変化が出るテクニックを伝えていて、もう当時の僕には通わない理由がないくらいすごい存在だった。

そしてすぐに通い始めた僕は変化の出るテクニックを学びすごい勢いで変化の出せる技術を学んで臨床で応用していった。自分でもみるみる成長している実感がしてとにかく臨床が面白かった。

でもあるとき全くうまくいかなくなった時期があった。その原因は基礎ができていないことだった。要は触診。テクニックを使うときにもポイントとなる筋肉や関節の触診が曖昧だったからうまくできていなかったんだ。そのきっかけをくれたのがIAIRの齋藤さん。本当に感謝してます。そこで改めて基礎を1から地道に学び始めた。そこからまた一段成長した実感があった。そのときちょうど講習会で仲村ケイ先生に「モヒ、悪くない」って言われたのは嬉しくて、今でも鮮明に覚えてる。やっと認めてもらえた瞬間だった。

で、IAIRのいいところは変化の出せる技術って基盤をしっかり持ったら次にくるのが徒手的にどうこうできない問題に対してどうするかを考えること。そう、ICFをもとにした多角的な視点が大事だよってことを教えてくれるところだった。

そうそう、センスアップで山口先生が言っていた自分自身との向き合い方や準備の仕方のより具体的な方法も学べた。

この考えがヘルパー時代から自分が感じていた治せる技術と療養型のときに実感した機能以外の大切さとバッチリ合わさったんだ。そしてIAIRで学び続けていつの間にかそこで講師をやらせてもらうまで成長できた。IAIRにはただただ感謝しかない。

でもね、IAIRを受講したり、講師をして感じたことがあった。

「技術を習得して成長していく人と、道半ばでやめてしまう人何が違うんだろう?」

いろんな原因があると思うけどその中の一つが基礎だった。自分もうまくいかなくなったときは基礎が足りてなかった。IAIRに足りないものは基礎だったんだ。

そこで1から基礎を学ぶ場所として始めたのが療法士活性化委員会。もちろん僕はIAIRで講師をしていたから療活で基礎を固めて、その後IAIRに繋がったらいいな〜と思っていた。その気持ちはもちろん変わらないけど、それは結果であって目的ではありません。

僕が療法士活性化委員会をやっている目的は

  • 介護職時代に経験した治せないという苛立ち
  • 療養型病院で機能的にどうにもならない方をどうみるかわからない
  • 患者様にどう接すればいいのかわからない、そのための自分自身の準備の方法がわからない
  • 基礎が疎かになっていて何をやってもうまくいかない

そんな自分と同じように悩んでいる療法士を一人でも多く救いたい。そしてその先にいる患者さん、利用者さんの笑顔。そして療法士自身が笑顔になってもらうためにやっている。

僕はこれまで多くの先輩や後輩、同僚の療法士、センスアップ+1の山口先生、IAIR、今回は具体的に上げなかったけどたくさんの研修会や勉強会でお世話になった先生から学んでいます。だからその教わった人たちと同じようなことを言うでしょう。言い訳に聞こえるかもしれませんが、それはそれが大事なことだからです(言い訳です)。もしこれから僕の言うことが「あの人が言ってることと似てるな」「あの団体とにてるな」って思ったらその講習会もちょっと覗いてみてください。きっと間違い無いはずです。

私情ですが先日11月13日でIAIRの講師の活動は終了いたしました。
本当にIAIRには感謝しかありません今でも大好きです。ありがとうございます。

僕はまだまだ未熟です。これからもたくさんの勉強をしてアウトプットしてきます。

「人生をデザインする」

の理念のもと、これからも大塚はたくさん失敗しながらみなさんと共に学んでいきます。

一緒に療活しようぜ!

では!

療法士活性化委員会
大塚 久

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