リハビリでよくある痛みの原因について勉強してみた〜急性疼痛と慢性疼痛〜

リハビリでよくある疼痛の原因について勉強してみた〜急性疼痛と慢性疼痛〜

こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。

理学療法士大塚久

僕は整形外科のクリニックに7年勤めていましたがそこで患者酸から一番聞かれるのが疼痛、いわゆる痛みでした。でも痛みの原因って正直よくわからずなかなか痛みが取れずに苦労していました。そこで今回は痛みについて学んでみたいと思います。

痛みとは?

実際の組織損傷や潜在的な組織損傷に伴う,あるいはそのような損傷の際の言葉として表現される,不快な感覚かつ感情体験

国際疼痛学会

と、定義されています。要は、末梢神経への侵害受容信号が脳内に伝わり、不快情動を生むことで初めて「痛み」となります。侵害受容信号自体はただ単に警告信号としての役割があるだけで、痛みではないということです。

これは裏を返せば、不快な情動に侵害刺激が合わさると「痛み」として認識されてしまうということです。臨床で考えるならば、療法士が対象者の域値を超える圧で触診し、さらにそれを対象者が不快と感じたら「痛み」として認識されてしまいます。そこで大事になるのが不快にさせない触診の技術になります。

痛みの伝道路

先に述べたように痛みには刺激としての感覚入力と受動体験がセットになって感じるとお伝えしました。そこで伝道路も、感覚的側面と情動的側面の2つにわけて考える必要があります。

痛みの伝道路

3つの痛みの生成機構

痛みは

  1. 侵害受容性疼痛:痛みが訴えられている部位に実際に侵害受容が生じているもの。傷や打撲など。
  2. 神経障害性疼痛:痛みが出ている部位に障害はないが、末梢、中枢求心路に障害があるもの。いわゆる坐骨神経痛など
  3. 神経可逆性疼痛:痛み情報を処理する神経回路の可逆性によるもの、侵害受容や神経障害に伴う持続的興奮を契機に生じ、急性痛よりも慢性痛に特徴的。

の3つの機構があります。

それぞれが単独で起こるものではなく、混合して存在しています。特に神経可逆性疼痛は侵害受容、神経障害が契機として起こるものであるため、いかに急性期の段階で不必要な痛みを除去できるかが鍵となります。

慢性疼痛で有効な認知行動療法やマインドフルネス、運動療法はそれ自体で新たな痛みネットワークの可逆性を起こして回路の機能を書き換えることで慢性疼痛を緩和していると言われています。

急性疼痛と慢性疼痛

慢性疼痛は以前「通常の治癒期間を過ぎても持続する痛みの訴え」とされていましたが、2018年公示の国際疾病分類第11版では「3ヶ月以上持続もしくは繰り返される痛み」と定義されています。

急性疼痛と慢性疼痛痛みの分類			 	急性痛	慢性疼痛	 		急性痛の遷延化	難治性慢性疼痛 痛みの原因	侵害受容器の興奮	侵害受容器の興奮	"中枢神経の系の機能変化 心理社会的要因による修飾" 組織損傷	あり	あり	なし 警告の意義	あり	あり	なし 薬物治療	有効	有効	無効なことが多い

神経可逆性疼痛に移行しないためにも急性期の段階で適切なアプローチを行うことが大切です。

急性疼痛に対するリハビリテーション

急性疼痛の治療

慢性疼痛に対するリハビリテーション

慢性疼痛では神経の可逆性により侵害刺激や神経障害が無い状態でも痛みを感じる様になっています。そこで「侵害刺激や神経障害が無い状態だから痛く無い」という新たな神経の可逆性が必要になります。そこで有効なのが

  • 認知行動療法(エビデンスレベル1A:行うことを強く推奨する)
  • マインドフルネス(エビデンスレベル1A:行うことを強く推奨する)
  • 運動療法(慢性腰痛に対してエビデンスレベル1A:行うことを強く推奨する)

になります。

具体的にどんな運動を行うか?

基本的に侵害刺激や神経障害が無い状態で、痛みの無い範囲での運動を行い、その動きを自身で認知することを行っていきましょう。

  1. 侵害刺激や神経障害が無い状態にする
    →関節モビライゼーション、筋膜のリリースなど
  2. 痛みの無い範囲での運動
    →ROMex→自動介助運動、自動運動、基本動作などを痛みのない範囲で行う
  3. 動きを自身で認知する
    →問題のあったADLができるかどうかを確認する→痛いかどうかではなく、できたことを認知する。

この流れで行っていきましょう。

まとめ

痛みは

  1. 原因がはっきりしているものとしていないものがある
  2. 急性疼痛が持続すると神経の可逆性により慢性疼痛に移行していく
  3. 慢性疼痛を緩和するには運動療法などが有効

この3つがポイントとなります。

痛みを理解してより効率的にリハビリを行っていきましょう。

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ありがとう

参考文献・資料

  1. WHO  国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)21 MG30 Chronic pain 2018.6.18
  2. Aya Nakae and Takashi Mashimo Pain and emotion PAIN RESEARCH 25(2010) 199–209
  3. Hinrichs-Rocker, A., Schultz, K., Jarvinen, I., Lefering, R., Simanski, C., Neugebauer, E.A., Psychosocial predictors and correlates for chronic post-surgical pain(CPSP) – a systematic review Eur. J. Pain, 13 (7) (2009) 719-730
  4. 山下 裕, 西上 智彦, 壬生 彰, 田中 克宜 日本語短縮版Pain Catastrophizing Scaleの信頼性と妥当性の検討 第51回日本理学療法学術大会 抄録 2016Vol.43 Suppl. No.2
  5. 慢性疼痛治療ガイドライン 真興交易 2018年 編集:慢性疼痛治療ガイドライン作成ワークグループ
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