こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。
本日も前回に引き続き、物理についてお話ししていきたいと思います。
前回は摩擦についてお伝えしましたが、本日は実際にポジショニングをした時にどのような摩擦が働いているのかを考えていきたいと思います。
前回の記事はこちら↓
傾斜面での物体の移動の考え方は?
臨床において、半側臥位で背中にクッションを挟むポジショニングを行うことがあると思います。例えば体重60kgの人を30°側臥位でポジショニングした場合の摩擦を考えていきましょう。
この人には60kg×9.8Nの重力がかかっています。この重力はクッションの斜面に対して矢印が斜めに交わってしまいわかりにくいので、この矢印を斜面に対して垂直と水平の矢印に分解していきます。
静止摩擦力は?
まず静止摩擦力を考えていきましょう。
人の体とシーツ間の摩擦係数μはおおよそ0.3〜0.8なので、摩擦係数を0.5とすると、人とクッション間にかかる摩擦はF=60kg×9.8N×cos30°×0.5となります。
水平方向にかかる力は?
さらにクッションに対して水平方向にかかる力を考えていきます。人はクッションから滑り落ちる方向に力がかかっているので、その力はF’=60kg×9.8N× sin30°となります。
このことから、30°側臥位では上記にあるFとF’両方の力が人にかかることがわかります。Fは背中側の肩甲棘やPSISに、F’は側臥位で下側になる上腕骨や肩峰、大転子といった骨突出部にこれらの力がかかっているということです。
30°側臥位は、患者さん・利用者さんにかかる負担が本当に少ないのでしょうか?
褥瘡を作る要因は?
褥瘡を作る要因に栄養失調や一点に圧が集中することなどがありますが、最も大きい要因は剪断力です。今考えている摩擦は、まさに剪断力です。そうすると、30°側臥位のポジショニングは避けたほうがいいと考えることができます。
褥瘡ができにくいポジショニングとは?
では、褥瘡ができにくいポジショニングを考えていきましょう。
褥瘡をできにくくするためには剪断力、つまり摩擦が働かない状態を作ればいいのです。
ベッドに対して身体が斜めになりその間にクッションを挟むと滑る力(摩擦)が働いてしまうので避けましょう。側臥位〜半腹臥位にして下肢を屈曲すれば滑る力は働かなくなるので褥瘡ができにくいポジショニングになります。
車椅子のシーティングでも同様に、坐骨結節で支持した座位と仙骨座りとではどこにどのような力が働くのか、矢印を書いてみるようにするとイメージが湧きやすいと思いますので、やってみてください。そうすると、ポジショニングやシーティングでタオルを当てる場所がわかってきます。
まとめ
リハビリに必要な物理学について〜30°側臥位だと〜
1. 物理を考えるときには矢印を書き、斜めの力は矢印を分解して考える。
2. 30°側臥位は褥瘡を作る大きな要因となる剪断力(摩擦)がかかるので避けたほうが良い。
3. シーティングやポジショニングを物理で考えると、褥瘡を防ぐ肢位やタオルを当てる場所がわかるようになる。
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