こんにちは、理学療法士の嵩里です。
前回のコラムでは、トイレ動作の工程分析についてご紹介しました。
>>>トイレ動作とは? トイレ動作の工程と必要な分析を考える
今回は、肩関節の機能解剖について解説し、トイレ動作をスムーズに行うためのポイントをご紹介します。肩関節は、日常生活において重要な役割を果たす関節です。特に、トイレ動作では、肩関節を90°以上屈曲する必要があります。
肩関節が90°屈曲するために必要な機能解剖
肩関節が90°屈曲するためには、以下の3つのポイントが重要です。
- **肩甲上腕リズムとは*
肩関節を屈曲させるためには、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が協働して動く必要があります。一般的に、肩関節30°までは肩甲上腕関節が、30°以降は肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が2:1の割合で動くとされています。肩関節外転30°までは肩甲上腕関節が動きますが、30°以降は肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が2:1の割合で動きます。
肩甲上腕関節 : 肩甲胸郭関節 → 2 : 1 → 60° : 30°
180°外転すると、
肩甲上腕関節 : 肩甲胸郭関節 → 2 : 1 → 120° : 60°
肩甲骨が動き出すタイミングが遅くても早くても、上肢は上手く挙上できません。そこで、挙上できない原因が関節か、筋かを分けて評価する必要があります。
- **回旋筋腱板による骨頭の安定化**
肩関節を動かす際には、回旋筋腱板と呼ばれる4つの筋群が骨頭を関節窩に押し付けて安定させます。回旋筋腱板が弱化すると、肩関節が不安定になり、痛みや可動域制限の原因となります。- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
これらの筋が拮抗して働くことで、肩甲上腕関節が安定し肩関節を挙上することができます。
- **肩甲骨を胸郭に押し付ける筋群による安定化**
肩関節120°までは肩甲胸郭関節の可動性が必要となります。しかし、肩甲胸郭関節には運動を制御するための関節や靭帯はありません。そのため、筋が肩甲骨を胸郭に押し付けて安定させる必要があります。- 小胸筋
- 菱形筋
- 前鋸筋
- 僧帽筋
これらの筋が拮抗して働くことで、肩甲胸郭関節が安定し肩関節を挙上することができます。
リーチ動作に必要な筋
トイレ動作では、手すりを把持したり、物を取ったりするために、リーチ動作が必要となります。リーチ動作を行うためには、肩甲骨の上方回旋が伴います。肩甲骨上方回旋には、前鋸筋と僧帽筋が作用します。
前鋸筋は肩甲骨内側、僧帽筋の上部繊維は鎖骨に付着しています。前鋸筋と僧帽筋が共同して働くことで、肩甲骨が上方へ回旋し、リーチ動作を行うことができます。
まとめ
肩関節が90°屈曲するために必要な機能解剖は?
- 肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節が2:1の割合で動くこと
- 骨頭を安定させるための回旋筋腱板(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)と肩甲骨を胸郭に押し付ける筋(小胸筋、菱形筋、前鋸筋、僧帽筋)が働くこと
- リーチ動作を行うための前鋸筋、僧帽筋が働くこと
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