小円筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

こんにちは、理学療法士の内川です。

「小円筋って普段あまり意識していないけど、実際どんな役割があるの?」

「触診の位置や評価方法がいまいち自信がない…」

「棘下筋との違いがよくわからない…」

新人の頃、私もそんな悩みを抱えていました。実は小円筋は、私たちの肩の動きを支える重要な筋肉です。

例えば、タオルを絞る動作や、引き出しを開ける動作、スポーツでは野球のボールを投げる動作など、日常生活やスポーツのあらゆる場面で活躍しています。小さな筋肉ですが、肩関節の安定性を保つ「回旋筋腱板(ローテーターカフ)」の一員として、とても大切な役割を担っています。

今回は、この小円筋について、解剖からリハビリテーションまで、臨床で使える知識をわかりやすくまとめてみました。特に触診や評価に自信が持てない方は、ぜひ参考にしてみてください!

一緒に小円筋のことを詳しく見ていきましょう!

目次

  1. 小円筋の解剖と作用
  2. 小円筋の評価
  3. 小円筋の機能訓練
  4. 機能低下と影響
  5. 臨床ちょこっとメモ
  6. まとめ
  7. 参考文献

1. 小円筋の解剖と作用

小円筋の解剖図
小円筋の解剖学的位置と走行

起始

  • 肩甲骨の外側縁(上腕骨頭に近い部分)

停止

  • 上腕骨大結節の下部

支配神経

  • 腋窩神経(C5, C6)

作用

  • 肩関節の外旋
  • 肩関節の水平伸展(上腕を後方に引く動作)
  • 肩関節の安定化

小円筋は、棘下筋と共に肩関節の外旋に関与します。また、肩関節が動く際に上腕骨頭が関節窩から逸脱しないように固定する役割も持ちます。

2. 小円筋の評価

触診

  • 起始、停止のイメージをする
  • 肩甲骨の下角を探す
  • 下角から外側縁を辿り2〜3横指上を触る
  • 肩関節の外旋を行って収縮を確認する

MMT(徒手筋力テスト)

段階5、4、3の手順:

  1. 座位で肘90°屈曲位、前腕は中間位をとり肩関節を外旋させる
  2. 検者は片方の手で肘の内側を支持し、もう一方で手関節の近位、前腕の背側に抵抗

判断基準:

  • 5:最大の抵抗に対して保持できる
  • 4:中等度の抵抗に対して保持できる
  • 3:抵抗がなければ可動域をすべて動かせる

段階2、1、0の手順:

  1. 座位で肘90°屈曲位、前腕は中間位 台や検者の手で前腕の重さを除く
  2. もう一方の手で被検者の肩甲棘下で棘下筋に触れる(小円筋の場合肩甲骨外側縁の下方)

判断基準:

  • 2:重力除去位で全可動域を動かすことができない
  • 1:運動は起こらないが、棘下筋か小円筋に収縮を認める
  • 0:動きも収縮もない

3. 小円筋の機能訓練

①固定運動

  • (1)壁押しなどによる全体的な等尺性収縮(回旋筋腱板の全体収縮)
  • (2)2ndポジションでの外旋の等尺性収縮

②セラバンドエクササイズ(輪ゴムでも可)

1stポジションでの外旋運動を中心とした筋力強化

③外転、外旋運動

  1. 腹臥位を取り、肩関節100~120°外転位をとり、手で頭の後を触るようにする。
  2. 肘を浮かせるようにして肩関節の外旋運動を行う

4. 機能低下と影響

  • 小円筋が機能低下すると、肩関節の外旋が弱まり、投げる動作や引っ張る動作が困難になる可能性があります。
  • 他の回旋筋腱板と協調して肩関節を安定させるため、小円筋の弱化により肩関節の前方不安定性が生じ、インピンジメント症候群などのリスクが増加します。
  • 肩甲帯の安定性低下により肩甲上腕リズムの乱れが生じる可能性があります。
  • 肩の動作時に痛みや違和感が生じやすくなるため、スポーツや日常生活における動作に支障が出ることもあります。

5. 臨床ちょこっとメモ

  • 小円筋は棘下筋と協調して働くため、両者の筋力バランスを考慮することが大切です。
  • 肩関節の安定性に関与するため、小円筋のトレーニングでは関節位置感覚を意識したエクササイズが有効です。
  • 肩関節の外旋や水平伸展動作において、代償的に上腕二頭筋や三角筋後部が関与することがあるため、適切なフォームを維持することが重要です。
  • 小円筋、大円筋、上腕三頭筋、上腕骨で囲まれた部位をQLS(Quadrilateral Space)と呼び、筋が短縮や過緊張を起こすと腋窩神経の障害が生じることがあります。

6. まとめ

1. 小円筋の解剖学的特徴と基本機能:

小円筋は肩甲骨外側縁を起始とし、上腕骨大結節下部に停止する筋肉で、腋窩神経(C5, C6)の支配を受けています。主な作用は肩関節の外旋と水平伸展であり、特に棘下筋と協調して働きながら肩関節の安定化に重要な役割を果たします。回旋筋腱板の一部として、上腕骨頭が関節窩から逸脱することを防ぐ機能も担っています。

2. 評価方法と機能訓練アプローチ:

評価には触診とMMTが重要で、触診は肩甲骨下角から約2横指上の位置で行い、外旋時の収縮を確認します。機能訓練には、壁押しなどの等尺性収縮、セラバンドを用いた外旋運動、腹臥位での外転・外旋運動などがあります。特に、MMTでは棘下筋との区別に注意を払い、正確な評価を行うことが重要です。

3. 臨床的重要性と注意点:

小円筋の機能低下は肩関節の前方不安定性やインピンジメント症候群のリスク増加につながります。また、QLS(Quadrilateral Space)症候群との関連も重要で、小円筋の状態が腋窩神経障害に影響を与える可能性があります。トレーニング時は代償動作に注意し、関節位置感覚を意識した適切なフォームでの実施が必要です。さらに、棘下筋とのバランスを考慮した包括的なアプローチが求められます。

今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?

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7. 参考文献

  • 症例動画から学ぶ 臨床整形外科的テスト
  • 新・徒手筋力検査法 原著第10版
  • プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版
  • 肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション

リハビリで悩む療法士のためのオンラインコミュニティ「リハコヤ」

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