こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。
今回は質問の多いモビライゼーションについてお話ししていきます。
モビライゼーションの種類
モビライゼーションには3種類あります。
1.軟部組織モビライゼーション
筋・血液・滑液包・腱付着部・骨膜に対して行うものです。いわゆる筋膜リリースと呼ばれているものもここに含まれます。
2.関節モビライゼーション
骨・関節包・靭帯に対して行うものです。いわゆるみなさんの想像するモビラーゼーションはこちらだと思います。
3.神経モビライゼーション
神経を動かすものです。
モビライゼーションは動かす手技だと思っていただけると良いと思います。
モビライゼーションの方法
基本的には他動運動です。
可動範囲内で、可動範囲を低速または反復的に動かします。
可動範囲以上に動かしてしまうと過可動性になってしまうので、関節を安定させずに不安定性を出してしまいます。組織を壊してしまう恐れもありますので、注意が必要です。
動かし方は直角方向の牽引、平行すべり、振動法があります。
荷重時は関節が押し付けられ非荷重になったら関節が離れるので、直角方向の牽引が必要になってきます。また、関節が動くと横方向への動き(平行すべり)が必要になります。さらに、歩行などの運動時、荷重と非荷重を繰り返すことにより振動が入ってきます。
関節に加わる力がこれら3つなので、その動きを他動的に入れて関節の安定性を図るということがモビライゼーションです。
次はその関節について、知っておくべき内容をお話しします。
関節について
関節にはゆるみの肢位としまりの肢位があります。
ゆるみの肢位とは周辺組織が緩んでいる肢位のことで、例えば股関節屈曲30°外転30°軽度外旋位です。
しまりの肢位とは関節包・靭帯が緊張している肢位のことで、例えば股関節を伸展してくと前方の靭帯が硬くなったり、股関節深屈曲で外旋すると靭帯が緊張した状態になったりします。
モビライゼーションは、ゆるみの肢位の時に動きが悪い場合に適応になります。緩んでいる状態なので動くはずなのに動かないからです。
しまりの肢位で動いてしまっている場合は関節の構造自体が壊れているのでモビライゼーションの禁忌になります。例えば、膝伸展位で横から外反ストレス・内反ストレスを加えて動いてしまう場合、靭帯の損傷が疑われるため、モビライゼーションはおこないません。
つまり、ゆるみの肢位で緩んでいるか、しまりの肢位で締まっているかが評価として大事です。
副運動について
ゆるみの肢位でどんな動きがあるのかは、副運動をみていきましょう。
副運動とは、ゆるみの肢位で他動的に生じる骨運動のことです。
副運動は、離開、圧迫、すべり、転がり、軸回旋の5種類があり、関節によって動きが異なります。
ゆるみの肢位でこれらの骨運動が生じていないのであれば、ゆるみの肢位での動きが悪いと判断でき、モビライゼーションの適応ということになります。
例えば、変形性股関節症で臼蓋と骨頭の間の裂隙が狭くなっていると、「圧迫」ができず「離開」の動きも出にくくなるため、モビライゼーションの適応となります。
副運動の評価
副運動でどれくらい動かしていいのか分からない場合、Kalten bornのグレードを参考にすると良いと思います。
グレードⅠ:関節面は引き離さない
グレードⅡ:結合組織の緊張
グレードⅢ:ゆるみを超えて牽引した状態
持っただけの状態がグレードⅠ、そこから少しでも動かそうとするとグレードⅡへ移行してきます。関節包・靭帯が緊張するまで牽引またはすべらせるのがグレードⅡ(伸張ではなく緊張の状態)、グレードⅢはゆるみを超えて牽引します。
グレードⅢまでやらないと関節が動かないのではないかというイメージがあると思います。関節モビライゼーションは関節包・靭帯に対応していますが、関節包・靭帯は正常な範囲内だと基本的に伸張しません。これらを伸張させるグレードⅢのテクニックは結構リスクが高いということになりますのでおすすめしません。
なので、基本的なやり方としては、グレードⅠまたはⅡの状態で保持し、そこから直角方向の牽引、平行すべり、振動法をおすすめします。
グレードⅠからⅡの間(可動範囲)を低速・反復的に動かす、グレードⅡの状態を保ったまま関節運動を起こしてもらう等を行ってみましょう。
まとめ
モビライゼーションについて
1. モビライゼーションはゆるみの肢位で副運動が生じていない場合に適応となる。
2. モビライゼーションは可動範囲内で、可動範囲を低速または反復的に動かす。
3. Kalten bornのグレード分類のうち、グレードⅠまたはⅡの範囲内でモビライゼーションをおこなう。
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