こんにちは、理学療法士の内川です。
みなさんは腸腰筋についてどのくらいご存知でしょうか?
例えば、変形性股関節症、大腿骨頸部骨折、あるいは腰痛などで問題点となる筋肉だと聞いたことがあるかと思います。
そんな腸腰筋ですが、そもそも問題点かどうかの評価や、なぜ変形性股関節症や腰痛に関わるか理由を説明することができますか? 正直いうと私は正しく評価ができていた自信はないですし、なぜ腰痛に関わるのかもなんとなくのイメージだけでした。
しかし、学生の時にあまり得意でなかった解剖をあたらめて確認することで正しい評価や症状への影響を考えられるようになります。
それではでは一緒に腸腰筋の解剖について確認していきましょう!
腸腰筋の構造と機能
腸腰筋は、以下の3つの筋肉で構成されています。
大腰筋
起始:第12胸椎〜第5腰椎椎体の前面
停止:大腿骨小転子
支配神経:腰神経叢(L2~L4)
腸骨筋
起始:寛骨窩
停止:大腿骨小転子
支配神経:腰神経叢(L2~L3)
小腰筋(小腰筋は大腰筋と一体化している人も多いそうです)
起始:第12胸椎〜第1腰椎椎体の前面
停止:寛骨臼前下縁
支配神経:腰神経叢(L1)
腸腰筋の作用
股関節屈曲・外旋
骨盤前傾 腰椎前傾
腸腰筋が弱化すると
歩行障害:歩幅が狭くなったり、足が上がりにくくなったりする
腰痛:骨盤の安定性が低下し、腰痛を引き起こす
転倒リスク増加:股関節の安定性が低下し、転倒しやすくなる
腸腰筋の評価
MMT・トーマステストを確認しましょう
MMTの方法
段階5、4、3の方法:
- 端坐位になる
- 下腿は縁から垂らす
- 両上肢は台の縁をつかみ、上体を安定させる
- セラピストはテスト側に立つ。
- 抵抗を膝関節の近くで大腿部にかける
判定:
5:最大抵抗に耐えられる。
4:中程度〜強度の抵抗に対して耐えられる。
3:抵抗がなければ可動域全てを動かせ、最終域を保持できる。
※代償動作として骨盤後傾、縫工筋、大腿筋膜張筋での代償も生じやすいのでしっかり確認しましょう!
段階2の方法
- テスト側を上にした側臥位をとる。
- 下の下肢は屈曲位で安定させておく
- 体幹を中間位にしておく
- セラピストは患者の後ろに立ち、テストする下肢の膝を下から抱える。
- 反対の手で体幹の中間位を保持するように股関節を支える
- 股関節を屈曲してもらう
判定:屈曲可動域を全て動かせれば2
段階1、0の方法:
- 背臥位をとる
- 膝・股関節屈曲位とする
- テスト側の下肢を腓腹部の下から支える
- 空いてる手で縫工筋の内側、鼠径靱帯のすぐ遠位で筋を触知する
判定:
1:筋の収縮を感知できるが関節運動は起こらない。
0:筋の活動なし
トーマステストの方法
1:患者様のテスト側の下腿を治療台から出す。
2:反対側の股関節を深屈曲する。
陽性、陰性の判断
陽性:反対側の股関節を屈曲していくと、テスト側の股関節が屈曲してくる。
陰性:反対側の股関節を屈曲しても、テスト側の股関節が治療台と並行なまま。
考えられる結果
テスト側が屈曲してくる場合は腸腰筋の短縮が考えられます。
*ワンポイントとして、テスト側の股関節がどのように代償してくるか確認しましょう。
膝の伸展を伴うのであれば大腿四頭筋、股関節の外転を伴えば大腿筋膜張筋、股関節の屈曲、外転、外旋を伴えば縫工筋の短縮が考えられます。
大腰筋のリリース
まとめ
- 腸腰筋の解剖と機能:腸腰筋は、大腰筋、腸骨筋、小腰筋の3つの筋肉で構成され、股関節の屈曲や外旋、骨盤前傾、腰椎前傾に関与します。各筋肉の起始、停止、支配神経を理解することが重要です。
- 評価方法:腸腰筋の評価にはMMT(徒手筋力テスト)とトーマステストを使用します。正確な手順と判定基準に従い、代償動作も確認しながら評価を行います。
- 弱化の影響と治療:腸腰筋が弱化すると、歩行障害、腰痛、転倒リスクの増加が生じます。これらの問題を予防・改善するために、腸腰筋の強化エクササイズや適切なリハビリテーションが必要です。
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては腸腰筋の 周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何が あるか、イメージできていますか? 不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
>>>【解剖が苦手な方限定】 実践!! 身体で学ぶ解剖学(筋肉編)
参考文献
- 新・徒手筋力検査法 原著第9版
- 基礎運動学第6版補訂
- 病態動画から学ぶ臨床整形外科的テスト