こんにちは、理学療法士の赤羽です。
前回は「腰痛に関わる神経ってどんなものがあるの?~概要編~ |療法士活性化委員会 (lts-seminar.jp)」についてお伝えしました。そこでどのような末梢神経が腰痛に関わっているのかなんとなく分かったかと思います。
今回からはひとつひとつの神経に着目して腰痛について考えてみようと思います。
まずは今回上殿皮神経に着目してみようと思います。
上殿皮神経(SCN)の概要
上殿皮神経はT11~L5の後根神経由来とされています。走行はT11~L5からの神経が腰背部を下外側方向へ走行し、胸腰筋膜を貫き殿部まで到達します。上殿皮神経が胸腰筋膜を貫く場所が腸骨稜近傍となるため、圧痛も腸骨稜付近でみられることが多いです。
具体的には、胸腰筋膜を内側枝が正中から3-4cm、中間枝が7-8cmの腸骨稜近傍で貫通するが、中間枝や外側枝は腸骨稜より上方の筋膜を貫通する傾向にあるため、この部分に圧痛がみられやすいです・
上殿皮神経(SCN)の症状
胸腰筋膜を貫いてくるという関係上、胸腰筋膜での絞扼等が出現する可能性があります。その結果、殿部まで到達していることから腰殿部痛が出現します。
特に症状が増悪しやすいのは、後屈・側屈・回旋・起立・座る・長時間の座位・歩行・寝返り等腰椎の動きに関連します。また、歩行に関しては腰痛性の間欠性跛行が出現することもあると言われています。
診断基準
- 腸骨稜と臀部を伴う腰痛
- 腰部の動きや姿勢によって悪化する症状
- 神経圧迫領域に対応する後腸骨稜上のトリガーポイント
- トリガーポイントが圧迫されると、SCN領域のしびれや放散痛(Tinel徴候)を訴える。
- トリガーポイントでのSCNブロックによる症状緩和
Toyohiko Isu,Kyongsong Kim,Daijiro Morimoto,Naotaka Iwamoto, Superior and Middle Cluneal Nerve Entrapment as a Cause of Low Back Pain,Neurospine,2018 Mar;15(1):25-32.
アプローチ
神経自体のアプローチの他にも胸腰筋膜を貫いてくる関係から、胸腰筋膜に関わる筋や胸腰筋膜自体に対してアプローチをすることが私たちのできる介入だと思います。
胸腰筋膜は3層構造になっており、1層目は大殿筋や広背筋、2層目は腰方形筋・脊柱起立筋を包み込むように、3層目は腹部筋群と連結しています。これらの筋の影響を胸腰筋膜は受けるため、評価しアプローチをすることで症状の改善につながる可能性があります。
まとめ
- 上殿皮神経は胸腰筋膜を貫いておりそこで絞扼されやすい
- 腰殿部痛が出現する
- アプローチは神経自体に対するものや胸腰筋膜に対しての介入等がある
神経へのアプローチを知りたい方は…
慢性疼痛に対して神経に着目した徒手アプローチ ~DNM(Dermo Neuro Modulating)~ | 療法士活性化委員会 (lts-seminar.jp)