トイレ動作に必要な認知機能:起立と立位保持について 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

トイレ動作に必要な認知機能:起立と立位保持について 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

こんにちは、理学療法士の嵩里です。

トイレ動作に関して、認知機能の評価はどのように行っていますか?トイレ動作自体は行えていても、病棟のADL変更や自宅退院では認知面が自立度を妨げる要因となることがよくあります。
前回の内容はこちら>>>トイレ動作のための下肢の自主トレーニング実践ガイド 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

今回は、トイレ動作の中でも、起立・立位保持に着目して必要な認知機能についてお伝えしたいと思います。

FIM上で必要な認知項目

施設退院となったFIM得点では、問題解決および記憶をはじめとした認知項目得点が低値であることが、運動項目得点の改善を妨げた原因の一つであることが分かっています。

1.記憶

記憶はトイレの場所や手順を覚える能力です。記憶力が低下すると、トイレまでの道のりを忘れる、排泄動作の手順を間違える、トイレに行ったことを忘れることに繋がります。

2.問題解決

問題解決はトイレに行く際に直面するさまざまな障害や問題に対処する能力です。例えば、尿意・便意をスタッフに伝える、困ってもナースコールを押せないといったことが考えられます。

しかし、これらの認知機能だけでトイレ動作を改善することは難しいです。トイレ動作は複雑な動作となるため、他の認知機能も関与します。

必要な認知機能

1.視空間認知

便座の適切な位置に座るためには、視空間認知能力が必要です。視空間認知とは、自分の体と物体との距離や位置関係を把握する能力です。便座ギリギリに座ってしまう方はこの能力が低下している可能性があります。

2.計画能力

トイレ動作を行うためには、ズボンを下げる→座る→排泄する→拭く→ズボンを上げる→手を洗う、といった一連の動作を順序立てて行う必要があります。これらの順序を間違えたり飛ばしてしまうとトイレ自立と判断することが難しくなります。

3.実行能力

さらに、トイレ動作を行うためには計画通りに動作を実行するための実行能力が必要となります。この能力が低下すると、ズボンを上げながら歩き始めたりしてしまいます。また問題解決と重複しますが、失禁→パット交換→捨てるといったケースバイケースの対応ができるかも含まれます。

まとめ

  1. FIMの認知項目(記憶、問題解決)が低いとトイレ動作等のADL獲得を妨げる。
  2. トイレ動作の改善には、記憶や問題解決だけでなく、空間認知能力、計画能力、実行能力といった他の認知機能も重要。
  3. トイレ動作獲得を妨げている認知機能は何かを評価する必要がある。

参考文献

  • 回復期リハビリテーション病におけるFIMを用いた自宅復帰因子の検討 岡本伸弘 理学療法科学 理学療法科学 27(2):103–107.2012
  • 立位姿勢の制御 長谷公隆 リハビリテーション医学 2006;43:542―553

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トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ-2

トイレ動作の動作分析から評価の方法、他職種への動作指導や評価の伝達方法、介入方法、自主トレーニング提供まで、一連の流れを学びましょう。

こんなことで悩んでいませんか?

  • 評価、触診が苦手
  • 動作分析でどこに着目すれば良いかわからない
  • 病棟ADLの変更が苦手
  • 他職種に何を情報共有すれば良いかわからない
  • セルフエクササイズの方法がわからない
  • 認知症患者の対応に悩んでいる
  • 効果的なアプローチ方法がわからない

一つでも当てはまる場合は、ぜひ参加をご検討ください。

トイレ動作を改善するために必要なステップ

  1. 対象者にとってトイレ動作がなぜ必要かを共有する
  2. トイレ動作の工程を分析する
  3. 問題となっている工程の問題点を抽出する
  4. 抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う
  5. 結果を適切な方法で記録・伝達する

トイレ動作の改善で悩んでいる場合、このステップのどこかに問題があるかもしれません。

1.対象者にとってトイレ動作がなぜ必要かを共有する

「トイレ動作はできた方がいい」と漠然と思っていませんか?もちろんできたほうがいいのは間違いないですが、その「できた方がいい理由」を明確にしましょう。以下のような報告があります。

「13項目の運動FIMと8項目の認知FIMを説明変数とし、目的変数を在宅復帰とした重回帰分析を行ったところ食事・更衣(上半身)・トイレ移乗の項目が他項目に比し、有意に在宅復帰と関連性が認められた」

出口貴行・藤本俊一郎・大平隆博・平尾寛子・塩田和代(2012).脳卒中地域連携クリティカルパスからみた在宅復帰に影響する関連因子の検討.日本医療マネジメント学会雑誌Vol.12より引用

このようにトイレ動作は食事・更衣動作と並び在宅復帰のための条件として優先順位が高いことが分かります。

2.トイレ動作の工程を分析する

トイレ動作の工程は大きく4つに分解できます。

①トイレに向かう

尿意・便意を催して、車椅子駆動または歩行でトイレまで向かいます。車椅子駆動には上肢機能、歩行には下肢機能が必要です。転倒リスクが高い方は、スタッフに声掛けするなどの工夫も必要です。

②移乗動作

車椅子の方は、車椅子・便座間の移乗動作が必要です。トイレは空間が狭いため、正面に停めて180°方向転換を行う必要があります。この時は立位の保持、手すりの把持など、四肢・体幹の分離した動きが求められます。

③下衣の着脱動作

立位保持を上肢フリーで行えるか、手すり把持で行うかによって難易度が変わります。両上肢をフリーで使用できれば容易ですが、手すり把持の状態では片手で着脱を行う必要があり、立位保持時間も長くなります。

④座位動作(座位保持、清拭)

座位では主に清拭動作が重要です。清拭動作には上肢の巧緻動作が必要です。上肢の分離運動、手指の分離運動が要求されます。

今回のセミナーでは工程をさらに細かく分解して考えていきます。

3.問題となっている工程の問題点を抽出する

各工程に対して必要な関節可動域、筋力、分離の程度を評価し、問題点を抽出します。

例えば、方向転換して便座に背を向ける工程では以下の評価が必要です:

  • 上田式12段階グレード
    • 体幹機能(体幹を安定させることができるか):体幹グレードⅣ-ⅲ以上
    • 下肢機能(方向転換できるか):下肢グレードⅣ-ⅲ以上
  • 関節可動域
    • 股関節外転、内転
    • 膝関節屈曲、伸展
    • 足関節背屈、底屈
  • 筋力
    • 体幹筋群(腹直筋、腹横筋、多裂筋など)
    • 下肢筋群(大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、前脛骨筋など)

4.抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う

問題点に対して適切なアプローチ方法を行います。今回のセミナーでは関節モビライゼーション、筋膜のリリース、促通、動作訓練をお伝えします。

5.結果を適切な方法で記録・伝達する

結果の共有は単に結果を伝えるだけでなく、患者さんの現状理解と目標達成の道筋を提示する役割を果たします。

  • 現状把握とゴール設定:評価結果を共有することで、患者さん自身がトイレ動作の課題を認識し、目標設定に積極的に取り組むことができます。
  • 治療計画の策定:課題を明確にすることで、効果的なリハビリプログラムを構築し、最適な介入方法を検討できます。
  • 患者さんとの信頼関係構築:丁寧な説明は、患者さんとの信頼関係を築き、治療への協力を高めます。

今回のセミナーでは、ADLで特に重要なトイレ動作の評価、介入方法、自主トレーニング提供、対象者、他職種への伝達法をお伝えします。

5つのステップを習得し、より良いリハビリを提供しましょう。

講習会詳細

会場

【土日開催】
ウィリング横浜 オフィスタワー
〒233-0002 神奈川県横浜市港南区上大岡西1丁目6-1

【平日開催】
あなたのお悩み駆け込み寺永久
〒251-0038 神奈川県藤沢市鵠沼松が岡3-27-6大牧マンション301

定員土日:24名
平日:6名
参加費11,000円(税込)(会場、オンラインともに同額)
参加資格医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、養成校学生(学生は受講料半額)
持ち物筆記用具、ヨガマット(推奨、バスタオルで代用可)、普段使用している整形外科の教科書、バスタオル1枚、動きやすい服装
講習会内容
  1. トイレ動作の評価が必要な理由
  2. トイレ動作の工程分析
  3. トイレ動作の中で問題となりやすい工程(起立動作、立位保持、下衣の着脱)
  4. それぞれの工程で問題点を抽出するための評価
  5. 問題点に対するアプローチ法(関節モビライゼーション、筋膜のリリース、促通方法、動作訓練)
  6. 認知機能について
  7. 情報共有(理学療法士、作業療法士、病棟スタッフ、患者、家族)

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