こんにちは。作業療法士の内山です。前回の社会参加とコミュニティ活動の促進に続き、今回は家族・介護者との連携について、実践的な視点から解説していきます。リハビリの現場では、利用者さん本人だけでなく、その周りにいる家族や介護者との協力が非常に重要です。家族のサポートが利用者さんのリハビリにどのような影響を与えるのか、また、リハビリスタッフとしてどのように連携を深めていくべきかを一緒に考えていきましょう。
1. 利用者さんの生活を支える家族・介護者の役割
利用者さんの日常生活において、家族や介護者は非常に重要な役割を果たしています。彼らの支えが、利用者さんの生活の質やリハビリの進展に大きな影響を与えます。まずは、家族や介護者の存在が利用者さんにとってどのような意味を持つのかを整理してみましょう。
1-1. 心理的支援の重要性
- 安心感を与える存在としての家族
- 認知症の方が不安を感じた際、家族の写真を見ることで落ち着きを取り戻せる
- 家族の顔を見ることによる心理的安定効果
1-2. 自立支援における効果
- 適切な距離感のある見守り
- 過度な介助を避け、自立心を育む
- 着替えなどの日常動作における自立促進効果
1-3. 介護負担が及ぼす影響
- 介護者のメンタルヘルスケアの重要性
- 介護疲れが利用者さんのリハビリ意欲に与える影響
- 「負担をかけたくない」という心理への配慮
2. リハビリスタッフからの具体的アドバイス
リハビリの現場で家族や介護者が効果的にサポートできるようにするためには、リハビリスタッフが正しい情報や具体的なアドバイスを提供することが重要です。ここでは、リハビリスタッフが家族や介護者に伝えるべきポイントを考えてみます。
2-1. 効果的なサポート方法
- 具体的な手順と目的の共有
- 「手すりを使用した安全な移動方法」など、明確な指示
- 家族が自信を持って介助できるポイントの説明
2-2. 適切なサポートレベルの設定
- 過介助を避けるための具体的な指導
- 食事介助における「最初の一口だけ支援」の原則
- 見守りと介助のバランス
2-3. モチベーション維持の工夫
- ポジティブフィードバックの活用
- 「今日は自分で立ち上がれたね」などの具体的な声かけ
- 小さな進歩を認める姿勢の重要性
3. デイサービスにおける具体的な連携方法
家族や介護者とリハビリスタッフが連携することで、利用者さんのリハビリ効果はさらに高まります。ここでは、デイサービス内外でどのように連携を深めることができるか、具体的な方法を紹介します。
3-1. サービス内での取り組み
- 定期的な情報共有
- 進捗報告とフィードバックの双方向コミュニケーション
- 具体的な改善点の可視化
3-2. 在宅での継続支援
- 日常生活に組み込むリハビリ方法
- 起床時の立ち上がり練習など、具体的な実践方法
- 安全性を考慮したアプローチ
3-3. 支援ネットワークの構築
- 家族会の活用
- 介護者同士の情報交換の場の提供
- 精神的サポートの充実
4. 実践事例:連携による成功例
これらの内容を踏まえ、内山が実際に行っている連携についてもまとめていきたいと思います。
4-1. 日常的な情報共有ツール
- 連絡帳の活用
- 体調変化や身体状況の記録
- リハビリ進捗の特記事項共有
利用者さんの体調確認や身体状況の変化などは連絡帳に記載し、デイサービスと家族、介護者間で共有するようになっています。その際に、リハビリからも伝えたいことなどを特記事項で記載し、伝達するようにしています。例として、歩行形態の変更やADLレベルの変化などが挙げられます。
4-2. 定期評価とフィードバック
- 3ヶ月ごとの体力測定
- 握力、片脚立位、TUGなどの定量的評価
- 生活変化の考察と共有
経過グラフチャート表での身体機能、ADLレベルの推移
主にケアマネ宛になりますが、3ヶ月に1度測定する体力測定の結果(握力、片脚立位、TUG)の推移や日常生活への影響、生活の変化に対する考察などをまとめることで、利用者さんの過去と現在、そして未来に向けた連携が可能となります。
4-3. 実践的な動作指導
- 送迎時の具体的アドバイス
- ベッド移乗や歩行介助の実演
- 実生活に即した指導
主に同居家族や訪問介護で入ってくれる介護士向けになります。家族や介護者が困る点として、ベッドへの移乗動作や屋内の歩行、ADLで介助が必要な場面など具体的な動作を挙げ、実際に実演できるものは、送迎の限られた時間の中で伝えるように努力しています。
成功事例:入浴動作の自立度向上
デイサービス内、デイサービス外でスタッフ、同居家族と情報共有、動作指導などの連携を図ったことで入浴時の介助量が中等度→軽介助〜見守りになった例
本人の主訴、HOPE
- 膝が痛くて1人で立てない、歩けない
- トイレやお風呂のときに1人で立てるようになりたいし、歩けるようになりたい
家族の主訴、HOPE
- 膝の痛みを減らしてあげてほしい
- トイレやお風呂など少しでも自分でできるところを増やせると良い
介入内容
- 個別機能訓練で下肢を中心としたモビライゼーション、促通運動
- 役割活動で食器拭き(リーチ動作)や立位での壁画の張り替え作業を実施
- デイ通所時に、入浴動作の指導(浴槽内からの起立動作、跨ぎ動作)
家族などと情報共有、連携したこと
- 連絡帳に歩行状態の変化やADLレベルの向上を記載し伝達
- 送迎時に家族へ起立、移乗動作の動作指導を実施
- 経過グラフチャートを作成し、3ヶ月ごとの体力測定の結果(握力、片脚立位、TUG)の推移を担当ケアマネに報告
結果
- 車椅子からの起立、立位保持動作は支持物があることで見守りで可
- 浴槽内からの起立、立位保持動作は手すりを把持することで軽介助〜見守りレベルで可能
まとめ
- 家族や介護者は、利用者さんの心理的・身体的なサポートに欠かせない存在であり、その影響はリハビリにも大きく関わる。
- リハビリスタッフは、家族に過度なサポートを回避するよう促し、適切な見守りやポジティブなフィードバックの重要性を伝えるべきである。
- デイサービス内外での情報共有やサポート方法の提案を通じて、家族や介護者との連携を深め、利用者さんの生活の質を向上させることが目指される。
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