こんにちは、理学療法士の赤羽です。今回は、多くの方が悩まされている「痛み」と「睡眠」の関係について、詳しく解説していきます。
質の高い睡眠は痛みの緩和に効果的
皆さんは、痛みと睡眠に深い関係があることをご存知でしょうか。質の高い睡眠は、体の回復を促し、痛みを和らげる効果が期待できます。そのため、痛みを感じている方にとって、睡眠の質を改善することは非常に重要です。
睡眠不足は痛みを悪化させる?睡眠と疼痛の関係性を徹底解説
睡眠の質が低下すると、痛みをより感じやすくなり、慢性的な痛みへと繋がるリスクが高まります。睡眠不足の状態では、体内の炎症を抑える機能が低下し、痛み物質であるプロスタグランジンやサイトカインが増加します。さらに、痛みを抑制する脳内神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)も減少するため、痛みの閾値が下がり、より強い痛みを感じてしまうのです。
痛みと睡眠の悪循環を断ち切る!相互に与える影響とは?
慢性的な痛みを持つ多くの方が、睡眠に関する問題を抱えています。例えば、腰痛などの痛みは寝返りを打つ際の不快感を引き起こし、夜中に目が覚めてしまう原因となります。また、神経障害性疼痛の場合、夜間にズキズキとした痛みが増強し、睡眠の質が著しく低下することも珍しくありません。このように、痛みは睡眠の質を低下させ、十分な睡眠時間を確保することを困難にします。
さらに深刻なのは、睡眠不足が痛みを悪化させるという悪循環に陥ってしまうことです。睡眠不足は痛みの感受性を高め、炎症性サイトカインの分泌を促進するため、慢性的な痛みをさらに増強させてしまいます。また、痛みに対する心理的な耐性も低下するため、より強い痛みを感じやすくなってしまうのです。この「睡眠不足→痛みの悪化→さらなる睡眠不足」という悪循環は、生活の質(QOL)を著しく低下させる要因となります。
痛みを和らげ、良質な睡眠を得るために!自分でできること&リハビリによるサポート
痛みを軽減し、質の高い睡眠を確保するためには、患者さん自身の努力と、リハビリテーション専門職によるサポートが不可欠です。
【自分でできるセルフケア】
- 生活習慣を見直す:規則正しい生活リズムを整えることは、良質な睡眠の基本です。毎日同じ時間に起床・就寝することで、体内時計が整い、自然な眠りを促します。
- 睡眠環境を整える:寝具を自分に合ったものに交換したり、寝室の温度・湿度を快適に保ったり、就寝前のスマホやパソコンの使用を控えるなど、睡眠環境を整備しましょう。
- リラクゼーション法を取り入れる:呼吸法や瞑想を行うことで、心身がリラックスし、寝つきが良くなります。また、痛みの認知を和らげる効果が期待できる「マインドフルネス」もおすすめです。
【リハビリができること】
- 運動療法:日中に適度な運動を行うことは、深い睡眠を促進します。専門家が患者さんの状態に合わせたストレッチや低強度の運動を提案することで、痛みの管理と睡眠の質の改善を同時に目指します。
- 姿勢・動作指導:正しい姿勢や動作を指導することで、日常生活における身体への負担を軽減し、夜間の痛みを抑制します。
- 睡眠に関するアドバイス:専門家は、睡眠の重要性を説明し、患者さんが具体的な生活習慣の改善に取り組めるようアドバイスを行います。例えば、朝に太陽光を浴びること、就寝6時間前(理想的には8~10時間前)にはカフェインの摂取を控えること、呼吸法やマインドフルネス、瞑想などを取り入れること、就寝前にリラックスできる時間を作ることなどが挙げられます。
- 心理的サポート:睡眠不足や慢性的な痛みに伴う不安やストレスを軽減するために、認知行動療法やマインドフルネス、痛みに関する患者教育などの心理的サポートを行います。
まとめ|痛みと睡眠の密接な関係を理解し、快適な毎日を
今回は、痛みと睡眠の関係について、患者さん自身とセラピストができる対策を中心に解説しました。睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が痛みの原因となっている場合や、薬物療法が必要な場合もあります。そのため、セラピストだけで解決しようとせず、医師や他の専門職と連携することが重要です。
本日のポイント
- 睡眠と痛みは相互に影響を与え合う
- 患者さん自身が睡眠環境を整え、適切な生活習慣を身につけることが、痛みの軽減と睡眠の質の改善に繋がる
- セラピストは運動療法や姿勢・日常生活の指導を通して、痛みと睡眠の問題に介入できる
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確認問題
問題1
睡眠不足が疼痛に与える影響として正しいものはどれですか?
- 疼痛閾値が上昇する
- 炎症を抑制する機能が向上する
- 痛みを抑制する神経伝達物質が減少する
- サイトカインの分泌が抑制される
問題2
良質な睡眠のために推奨されない行動はどれですか?
- 毎日同じ時間に就寝する
- 就寝直前にカフェインを摂取する
- 朝に太陽光を浴びる
- 寝室の温度管理を行う
解答・解説
問題1の正解: c
解説: 睡眠不足により、セロトニンやドーパミンなどの痛みを抑制する神経伝達物質が減少します。これにより痛みの感受性が高まります。
問題2の正解: b
解説: カフェインには覚醒作用があるため、就寝6時間前(できれば8-10時間前)までに摂取を控えることが推奨されます。