こんにちは、理学療法士の内川です。
「首の痛みや頭痛の原因がわかりにくい…」
「後頭下筋群の触診や評価方法に自信がない…」
「頭部や頚部の安定性における後頭下筋群の役割がイマイチつかめない…」
このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
後頭下筋群は、頭部と頚椎を安定させる重要な筋肉群です。姿勢制御や視覚の安定性にも大きく関与しており、特に現代社会で増加しているデスクワークやスマートフォン使用による負担が、頭痛や首の不快感を引き起こす主な要因となっています。
本記事では、後頭下筋群について、解剖学的特徴から評価・訓練方法、さらに臨床で即座に活用できる知識までを体系的にまとめました。
1. 後頭下筋群の解剖と作用
後頭下筋群の構成
後頭下筋群は4つの筋肉で構成され、第1・第2頚椎と後頭骨を結んで頭部と頚部の微細な動きを制御します。
大後頭直筋
- 起始:第2頚椎の棘突起
- 停止:後頭骨の下項線
- 作用:頭部の伸展および同側回旋
小後頭直筋
- 起始:第1頚椎の後結節
- 停止:後頭骨の下項線内側
- 作用:頭部の伸展および姿勢安定
上頭斜筋
- 起始:第1頚椎の横突起
- 停止:後頭骨の下項線の近く
- 作用:頭部の側屈および伸展
下頭斜筋
- 起始:第2頚椎の棘突起
- 作用:頚部の同側回旋
支配神経
C1:脊髄神経(後頭下神経)
2. 後頭下筋群の評価
触診
方法①
- 背臥位にし、首の後方を触診
- 頚椎上部、特に後頭骨付近で筋の収縮を確認
- 被検者に頭部の微細な回旋や伸展を行ってもらい、収縮具合を確認
方法②
- 背臥位にし、首の後方を触診
- 目を閉じてもらう
- 眼球運動を行ってもらい首の後で筋の収縮を確認
3. 後頭下筋群の機能訓練
4. 機能低下と影響
後頭下筋群の機能低下は、以下のような影響を及ぼします:
頭痛の増加
後頭下筋群の緊張により大・小後頭神経への負担増加や、椎骨動脈の狭小などにより頭痛になることが多いです。
首や肩のコリ
長時間の前傾姿勢により、筋が緊張しやすくなります。
視覚安定機能の低下
後頭下筋群が適切に機能しないと、首が不安定になり視覚の安定性が低下し、めまいや集中力低下の原因となることもあります。
頚部の安定性低下
これにより、首の動きがぎこちなくなり、姿勢の維持が難しくなることがあります。
5. 臨床ちょこっとメモ
- 特に小後頭直筋は硬膜まで繋がっているため、頸椎など脊柱自体の安定性に非常に関与します。
- デスクワークやスマートフォンの使用が長時間に及ぶ方には、筋肉の緊張が引き起こす問題が見られやすいです。
- 軽いストレッチや頸部の運動により、頭痛や首の痛みが改善することがあります。
- 頚椎全体のバランスを考慮した治療により、後頭下筋群の負担軽減が期待できます。
- 姿勢指導や環境調整が、視覚と姿勢制御の改善に有効です。
6. まとめ
1. 解剖学と基本機能の特徴
- 4つの筋(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)で構成
- 第1、第2頚椎と後頭骨を結び、頭部と頚部の微細な動きを制御
- C1脊髄神経(後頭下神経)による支配
- 小後頭直筋は硬膜との繋がりにより、脊柱の安定性に重要
2. 機能低下による影響と評価
- 頭痛の増加(後頭神経への負担増加、椎骨動脈の狭小化)
- 首や肩のコリ、頚部の安定性低下
- 視覚安定機能の低下によるめまいや集中力低下
- 背臥位での触診による評価が基本
3. 効果的なアプローチ方法
- 頚部ストレッチによるリラクセーション
- 頸部引き込み運動による筋機能改善
- 上位頸椎を意識した頭部の小さな運動練習
- 姿勢指導や環境調整の実施
- 頚椎全体のアライメントを考慮した包括的アプローチ
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
7. 参考文献
- 基礎運動学第6版補訂
- 脊柱理学療法マネジメント
- 筋骨格系のキネシオロジー
- 肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション