見当識の重要性アプローチ法 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

見当識の重要性 アプローチ法 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。前回は見当識のメカニズムと評価について考えました。今回は見当識に対して具体的にどのようにアプローチしていけば良いのか考えていきたいと思います。

見当識機能への直接的アプローチ法

見当識機能の低下がトイレ動作に与える影響は大きいため、その改善や維持を目指した直接的なアプローチが求められます。

見当識機能は、自己の位置や時間、状況を把握するための重要な認知機能であり、この機能が低下すると、日常生活において混乱をきたしやすく、特にトイレ動作のような重要な日常動作に大きな影響を及ぼします。

見当識の向上には、主に以下の2つの方法が効果的です:

  1. リマインダーの活用:

    定期的に時間や場所に関する情報を提供することで、患者さんが自分の周囲の状況を把握しやすくする方法です。具体的には、日常生活のスケジュールを確認したり、トイレの場所を覚えやすくするための案内板やサインを使用したりします。

  2. リハビリによる実動作訓練:

    リハビリ中にトイレまでの道順を一緒に確認する、毎回リハビリのたびに決まった時間でトイレ誘導してみるなどすることで、患者さんがトイレの場所を認識できたりトイレがある部屋の位置関係を認識することにつながります。

トイレ動作練習による見当識機能の賦活

トイレ動作の練習は、見当識機能の賦活にも効果的です。実際の動作を通じて、どのように見当識機能を活性化させることができるのか、ポイントを以下にまとめました。

  1. 定期的にトイレに行く習慣を作る
    患者さんは時間の感覚を養い、トイレの場所に対する認識も向上します。また、実際のトイレ動作を繰り返すことで、患者さんはトイレの位置やたどり着くまでの道順を覚えやすくなります。この習慣はリハビリの時間だけでなく、病棟にも依頼し時間誘導で行うことが、習慣化のために必要不可欠になります。
  2. 視覚的な手がかりの設置
    トイレまでの床にガイドラインを引いたり、壁に矢印を掲示したりすることで、患者さんが視覚的に場所を特定しやすくなります。

効果的な環境設定のポイント

見当識機能を補助するためには、適切な環境設定も欠かせません。特に高齢者や認知症の方々が安心してトイレ動作を行えるようにするための具体的な工夫について、以下のポイントが必要になります。

  1. 環境設定の基本
    当たり前であると思われがちですが、「シンプルでわかりやすい」ことです。トイレのドアを目立たせるために明るい色に塗ったり、トイレの入り口に大きなサインを掲示したりすることで、患者さんがトイレの場所を一目で認識できるようにします。

  2. 部屋が特定できる目印の設置
    トイレまでの道順を視覚的に誘導するラインや矢印を床に設置することが有効です。また、特定の物品(例:好きな花がある、好きな写真があるなど)を患者さんごとに把握し、部屋入り口前に貼っておくことも見当識の補助として活用できます。これにより、患者さんが迷わずにトイレにたどり着くことができます。

  3. トイレを使いやすくする目印の設置
    トイレ内にも患者さんが迷わず使用できるようにするための目印の設置は必要となります。たとえば、レバーの位置やナースコールの位置などボタンが分からなくて押せないことを防ぐための工夫が、事故防止のために重要になります。

まとめ

  1. 見当識機能へのアプローチには、リマインダーやリハビリによる実動作練習が効果的である。
  2. 見当識機能を賦活しトイレ動作を習慣化するために、リハビリ以外の時間でも誘導することが重要である。
  3. 見当識機能を補助するためには、シンプルでわかりやすい環境設定や患者さんごとに覚えやすい目印を設置するなどしてトイレに行きやすい環境を整える必要がある。

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