肩甲挙筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

肩甲挙筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

こんにちは、理学療法士の内川です。

「肩甲挙筋が張っているけど、どうすれば緩和する?」

「肩こりや頸部痛って肩甲挙筋と関係があるの?」

「肩甲挙筋の評価やストレッチの方法を知りたい!」

肩甲挙筋は、日常生活や臨床でもよく耳にする筋肉ですが、肩こりや頸部の痛みと密接に関わる筋肉のひとつです。デスクワークやスマートフォンの操作で、肩甲挙筋に過度な負担がかかることも多く、その緊張が続くと慢性的な肩こりや姿勢不良の原因になります。

本記事では、理学療法士・作業療法士の皆様に向けて、肩甲挙筋の解剖学的特徴から評価・アプローチ方法までを、部位別の視点を交えながら解説していきます。

それでは、一緒に確認していきましょう!

 

目次

 

1.肩甲挙筋の解剖と作用

肩甲挙筋の図解

起始

・第1~第4頸椎の横突起

停止

・肩甲骨の上角および内側縁

支配神経

・肩甲背神経(C3~C5)

作用

  • 肩甲骨の挙上
  • 肩甲骨の下方回旋
  • 頸部の側屈(同側)および回旋(同側)

 

2.肩甲挙筋の評価

触診

肩甲挙筋の触診:背面からのアプローチ 肩甲挙筋の触診:側面からのアプローチ
  1. 被検者を座位または側臥位にします。
  2. 手の甲を背中に当てる(結滞の姿勢)
  3. 肩甲棘から内側へ辿り、棘三角を探し、上部に向かい上角を触診する。
  4. 結滞の姿勢で肩甲骨の挙上を行う

 

 

MMT(徒手筋力テスト)

段階5、4、3の手順:

肩甲挙筋のMMT:座位での評価 肩甲挙筋のMMT:臥位での評価
  1. 被検者は座位で両腕は体側に自然に下ろしておく
  2. 検者は被験者の後方に立ち、肩を耳に向かってすくめるよう指示する
  3. 最大可動範囲で肩を挙上した状態で保持させ、両肩を押し下げる方向に抵抗をかける

・判断基準:

  • 5:最大の抵抗に対して保持できる
  • 4:中等度の抵抗に対して保持できる
  • 3:抵抗がなければ可動域を動かせる

 

段階2、1、0の手順:

肩甲挙筋のMMT:臥位での評価(触診) 肩甲挙筋のMMT:臥位での評価(触診)
  1. 被検者は仰臥位または腹臥位になる(腹臥位の場合は頭を楽な方向に向けてもらう)
  2. 検者は検査側の肩に触れ、もう一方の手で鎖骨の上部外側を触れる(僧帽筋上部繊維)
  3. 肩を耳に向かってすくめてもらうよう指示する(検者に肩を支持されながら)

判断基準:

  • 2:重力を除いた状態で可動域を完全に動かせる
  • 1:僧帽筋上部の収縮を鎖骨部、または頸椎部で確認できる
  • 0:動きも収縮もない

 

3.肩甲挙筋のストレッチとリリース方法

ストレッチ方法

肩甲挙筋のストレッチ
  1. 座位での肩甲挙筋ストレッチ
  • 座位で片手を腰の後ろに回します。
  • 反対側の手で頭を側屈させ、そのまま前方斜め下にゆっくり引っ張ります。
  • 肩甲挙筋の伸びを感じながら20~30秒キープします。

 

リリース方法

  1. 触ってリリース
  • 肩甲骨上角付近を軽く触りそのまま深呼吸3回ほどを行ってもらいます。
  1. 収縮でのリリース
  • 肩甲挙筋の作用である肩甲骨の挙上を行ってもらい、力を抜くを繰り返してもらう。

 

4.肩甲挙筋の機能低下と影響

  • 頭部前方位など不良姿勢肩甲挙筋の持続的な収縮により頸部痛の要因となります。
  • 肩甲挙筋の過緊張により円背の助長や首下がりにつながることがあります。
  • 肩甲挙筋の過緊張が生じていると、僧帽筋機能の低下が生じている可能性があります。
  • 肩甲骨の固定を肩甲挙筋で行ってしまい、肩甲上腕関節の不安定性や腕神経叢症状を引き起こすことがあります。

 

5.臨床ちょこっとメモ

  • 頭部前方姿勢への注意

    デスクワークやスマホの見過ぎで頭部前方位が続くと、肩甲挙筋の過剰収縮が起こりやすくなるため、姿勢改善が重要です。頸部を引く動き、耳と肩峰が一直線上にあるか確認をしましょう。

  • 僧帽筋との関係性

    肩甲挙筋と僧帽筋上部線維共に過緊張、短縮が生じやすく、僧帽筋中部線維、下部線維の収縮を入れることで過緊張の抑制にもつながります。

  • 頸部痛

    姿勢不良にて肩甲挙筋の過緊張や僧帽筋の過緊張などが生じると動脈や神経への圧迫も加わり頸部痛につながりやすいです。

  • 呼吸との関与

    デスクワークやストレスが多いと肩を使った呼吸が多くなります。呼吸するたびに肩甲骨の挙上が生じ肩甲挙筋の過緊張にもつながるため、呼吸機能も確認しましょう。

 

6.まとめ

  • 肩甲挙筋の基本的特徴と機能
    • 第1~4頸椎横突起から肩甲骨上角に付着する筋肉
    • 肩甲骨の挙上と下方回旋を担う
    • 頸部の同側への側屈と回旋に関与
    • 肩甲背神経(C3~C5)の支配を受ける
    • 肩こりや頸部痛と密接な関連を持つ
  • 評価・検査のポイント
    • 触診は棘三角から上角を確認し、側屈や肩すくめ動作で収縮を確認
    • MMTは座位での肩甲帯挙上で評価(重力に抗する場合)
    • 僧帽筋上部線維との関連性を考慮した評価が必要
    • 姿勢評価(特に頭部前方位)が重要
    • 呼吸パターンの確認も必須
  • 機能障害と臨床アプローチ
    • 過緊張は頸部痛や円背姿勢の原因となる
    • デスクワークやスマートフォン使用での持続的収縮に注意
    • ストレッチは側屈位での伸張が効果的
    • 呼吸パターンの改善で過緊張を予防
    • 僧帽筋中部・下部線維の活性化で上部の過緊張を抑制

今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?

https://lts-seminar.jp/anatomyimage/

 

7.参考文献

  • 新・徒手筋力検査法 原著第10版
  • プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版
  • 肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション
  • 機能解剖学的触診技術 上肢
  • マッスルインバランスの理学療法

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