ICF評価の質を上げる「心身機能・構造」のポイント|高次脳機能から画像所見まで

ICF評価の質を上げる「心身機能・構造」のポイント|高次脳機能から画像所見まで

理学療法士・作業療法士のみなさん、こんにちは。作業療法士の仲田です。ICFシリーズ第2弾として、今回はリハビリの土台となる「心身機能・身体構造」について、評価の質を高めるための実践的な記載方法を解説します。ROMやMMTだけでなく、一歩踏み込んだ評価のポイントを身につけましょう。

この記事も、私が開催するZoomセミナー「OTしゃべり場」でのリアルなQ&Aが元になっています。

心身機能と身体構造の基本的な理解

評価の前に、まずは「心身機能」と「身体構造」の違いを正確に理解しておくことが重要です。

心身機能と身体構造の定義

  • 心身機能 (Body Functions / bコード):
    心や体の生理的・心理的な機能のこと。
    例:筋力、関節可動域(ROM)、記憶力、注意力、視力、痛み、精神の安定性 など
  • 身体構造 (Body Structures / sコード):
    身体の解剖学的な部分のこと。
    例:脳、脊髄、四肢、関節、眼、皮膚、靭帯 など
解説する仲田先生

この2つは密接に関連しています。「右肩関節の変形(身体構造)」が原因で、「右肩の関節可動域制限(心身機能)」が起こる、という関係性ですね。

【記載例】ROM/MMTだけじゃない!心身機能の評価ポイント

心身機能の評価では、客観的な評価バッテリーの結果を交えつつ、それが「活動」にどう影響するかを記述することが重要です。

心身機能の評価と記載例一覧

機能項目評価のポイントと記載例
意識機能意識レベルはJCS 0、GCS 15で清明。しかし、夜間にせん妄傾向あり、一過性の混乱が見られる。
注意機能選択的注意の低下あり。リハビリ中に周囲の音に気が散りやすく、課題遂行に時間を要する。
記憶機能HDS-R 20点。短期記憶・エピソード記憶の低下が顕著で、新しい指示を覚えるのが困難。
巧緻性・協調性右利きだが、右上肢の巧緻動作に困難あり。ボタン掛けや書字など細かい操作が難しい。(STEF 85点)
関節可動域 (ROM)右肩関節屈曲120°、外転100°。背中に手が回らないなど、更衣動作に影響。
筋力 (MMT)右下肢全体的にMMT4レベル。立ち上がりや歩行時の安定性に影響。

【記載例】画像所見と臨床所見を結びつける身体構造の評価

身体構造の評価では、画像所見などの客観的データと、臨床で見られる症状を結びつけて記載します。

身体構造の評価と記載例一覧

構造項目評価のポイントと記載例
脳の構造頭部CTにて左中大脳動脈領域に脳梗塞を認める。これが右片麻痺および失語症の原因と考えられる。
関節の構造X線にて右膝に変形性関節症(Kellgren-Lawrence分類 Grade3)を認める。これが膝の痛みやROM制限に繋がっている。
上肢の構造右肩関節に亜脱臼を認める。これが肩の痛みや挙上制限の要因となっている。
皮膚の構造仙骨部に褥瘡(DESIGN-R分類 d2)あり。体位変換やポジショニングに注意が必要。
質問する療法士

なるほど…!ただ「異常あり」と書くのではなく、機能や活動にどう影響しているかまで書くことが大切なんですね。

解説する仲田先生

その通りです!それができて初めて、評価がリハビリテーション計画に繋がるのです。臨床で悩んだら、また療法士活性化委員会のセミナーでご相談くださいね。

質問する療法士

はい!よろしくお願いします!

まとめ:ICF「心身機能・構造」評価 3つの鉄則

  1. 定義を正しく理解し、機能と構造を分けて考える
    「機能(働き)」と「構造(部位)」を明確に区別し、それぞれの関連性を捉えることが第一歩です。
  2. 客観的評価(ツールや画像所見)を根拠に具体的に書く
    ROM、MMT、MMSE、HDS-R、画像所見など、誰が見てもわかる客観的なデータを必ず記載します。
  3. “異常の有無”だけでなく、”活動への影響”を明確にする
    評価の最終目的は、その機能障害や構造的損傷が、患者さんの日常生活(活動・参加)にどう影響しているかを明らかにすることです。

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