肩関節は4つの関節でできている! 新人PTが知るべき解剖と評価の全体像

肩関節「なんとなく」を「自信」に変える。身体で学ぶ 触診・解剖学セミナー

こんにちは、理学療法士の内川です。

「肩関節って自由度が高いって言うけど、結局どこが動いているの?」
「肩が痛い患者さんを前にして、骨・関節・筋のどこから考えればいいか迷う…」
「回旋筋腱板や三角筋は分かるけど、関節としての理解があいまい…」

新人リハビリスタッフが肩関節でつまずく最大の理由は、
“肩関節=肩甲上腕関節”だけで考えてしまうことにあります。

肩の動きは1つの関節ではなく、複数の関節が連動してはじめて成立する「複合関節」です。

まずはこの全体像を正しく理解することが、評価・治療の精度を大きく左右します。

1. 肩関節の全体像

肩関節は、以下の4つの関節から構成される「機能的関節複合体」です。

  • 肩甲上腕関節
  • 肩鎖関節
  • 胸鎖関節
  • 肩甲胸郭関節(機能的関節)

これらが協調して動くことで、広い可動域と十分な安定性を両立しています。

※「肩の痛み・可動域制限は、必ずしも肩甲上腕関節だけが原因とは限らない」という視点が非常に重要です。

2. 肩関節を構成する各関節

① 肩甲上腕関節

肩甲上腕関節の解剖図
  • 構成:上腕骨頭 × 肩甲骨関節窩
  • 分類:球関節(多軸関節)
  • 特徴:肩の可動域の大部分を担う

② 肩鎖関節

肩鎖関節の解剖図
  • 構成:鎖骨遠位端 × 肩峰
  • 分類:平面関節
  • 特徴:多軸性(不完全な関節円板がある)。肩甲骨の微調整を担う。

③ 胸鎖関節

胸鎖関節の解剖図
  • 構成:鎖骨近位端 × 胸骨
  • 分類:鞍関節
  • 特徴:本来は2軸性だが、関節円板があり多軸性。上肢帯で唯一、体幹と骨性につながる関節。

④ 肩甲胸郭関節

肩甲胸郭関節の解剖図
  • 構成:肩甲骨 × 胸郭
  • 特徴:解剖学的関節ではないが、臨床的には最重要。肩甲骨運動が破綻すると肩関節障害につながる。

3. 肩関節の安定化機構

肩関節の安定性は、静的な要素と動的な要素のバランスで成り立っています。

静的安定化機構(Static Stabilizer)

  • 関節包
  • 靱帯(上・中・下肩甲上腕靱帯)
  • 関節唇
  • 骨形態

動的安定化機構(Dynamic Stabilizer)

  • 回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)
  • 三角筋
  • 上腕二頭筋長頭腱

👉 ここがポイント
肩関節の安定性は「骨」よりも「筋」に依存しているという点が最大の特徴です。そのため、筋機能の評価が欠かせません。

4. 臨床で重要な解剖学的特徴

肩関節は「不安定になりやすい」

  • 広い可動域の代償として脱臼しやすい構造です。
  • 特に前方不安定性が多く見られます。

肩甲骨の動きが超重要

  • 肩甲骨が「上方回旋・後傾」しないと挙上制限が起きます。
  • 肩甲帯の問題は、そのまま肩関節痛につながります。

肩甲上腕リズム

肩関節挙上180°の内訳は以下の通りです。

  • 肩甲上腕関節:約120°
  • 肩甲骨上方回旋:約60°

※個人差があるため「約2:1」と覚えましょう。
※このリズムが崩れると、インピンジメントや腱板障害を起こしやすくなります。

5. 臨床ちょこっとメモ

  • 肩関節痛 = 肩甲上腕関節とは限らない
  • 肩鎖関節由来の痛みは、挙上終末域(最後のひと伸び)で出やすい
  • 胸鎖関節の可動性低下は、鎖骨の動きを止め、結果的に肩甲骨運動を制限する

6. まとめ

① 解剖・特徴

  • 肩関節は1つの関節ではなく「複合関節」である(肩甲上腕、肩鎖、胸鎖、肩甲胸郭)。
  • 肩の広い可動域は、複数の関節が連動することで成立する。
  • 関節唇は安定性を高め、関節包は可動域を確保する(拘縮すれば凍結肩の原因に)。
  • 肩関節は「安定性より可動性」を優先した構造である。

② 評価とアプローチ

  • 評価の基本視点:「肩が痛い=肩甲上腕関節」と決めつけず、肩甲骨・鎖骨・胸郭の動きを必ず確認する。
  • 肩甲上腕リズム:挙上時に肩甲骨がスムーズに上方回旋・後傾しているか見る。
  • 安定化機構:静的(関節包・靱帯)と動的(腱板・三角筋)の両面から評価する。
  • 肩甲帯への介入:肩甲胸郭関節や胸鎖・肩鎖関節へのアプローチが、結果として肩の痛みを軽減させる。

③ 機能低下の影響と臨床的注意点

  • 広い可動域の代償として脱臼・不安定性(特に前方)が起こりやすい。
  • 肩甲骨運動の破綻は、挙上制限、インピンジメント、腱板障害の直接的な原因になる。
  • 「どの関節が破綻しているか」を見極めることが臨床の鍵となる。

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