肘関節はただの蝶番関節と思っていませんか? 3つの関節から考える肘関節の評価と機能解剖

こんにちは、理学療法士の内川です。

「肘関節って、屈伸するだけの関節ですよね?」
「肩や手関節ほど重要視されないけど、評価は必要?」
「肘の痛みが、なぜ肩や手の動きに影響するの?」

新人の頃は、肘関節を“通過点”のように扱ってしまいがちです。

しかし実際には、肘関節は上肢の力を正確に伝え、方向を調整するための極めて重要な関節です。
今回は肘関節の構造・運動・関与筋・機能不全が起こす問題を整理していきましょう。

この記事の要点(3行まとめ)

  • 肘関節は「腕尺・腕橈・近位橈尺」の3関節が1つの関節包にある複合体である
  • 関節包は前後が薄いため拘縮しやすく、側方は靱帯依存のためストレスに弱い
  • 「回外筋(伸展位)」と「上腕二頭筋(屈曲位)」の役割差を理解することが評価の鍵

1.肘関節の構成と特徴

肘関節は1つの関節ではなく、3つの関節の複合体です。

肘関節の骨構造図 肘関節の靭帯構造図

肘関節を構成する3関節

  1. 腕尺関節(上腕尺関節)
    → 屈曲・伸展の主関節(蝶番関節)
  2. 腕橈関節(上腕橈関節)
    → 屈伸+前腕回旋の補助(球関節ですが腕尺関節により内外転は制限されている)
  3. 近位橈尺関節
    → 前腕の回内・回外(車軸関節)

👉 ここがポイント

これらが1つの関節包に包まれて機能しています。
つまり、肘関節は「蝶番関節(hinge joint)+車軸関節(pivot joint)」の複合体なのです。

安定性の特徴

関節包と靱帯の構造を理解すると、なぜ肘が拘縮しやすいかが見えてきます。

  • 骨性安定性が高い(尺骨滑車切痕)
  • 関節包の構造
    • 前後:薄くてゆとりがある → 屈伸方向の拘縮が起こりやすい
    • 側方:靱帯で補強されている → 側方動揺性は靱帯に依存する
  • 靱帯による補強
    • 内側側副靱帯(MCL):外反ストレスへの抵抗
      • 前斜走線維(AOL):投球障害などで最も負担がかかる
      • 後斜走線維(POL):屈曲位での外反制動に関与
    • 外側側副靱帯(LCL):内反・回旋ストレスへの抵抗
  • 筋による動的安定性が重要

2.肘関節の運動と関節の役割

肘関節の主な運動

  • 屈曲
  • 伸展
  • 前腕回内
  • 前腕回外

運動の役割分担

  • 屈曲・伸展 → 主に腕尺関節
  • 回内・回外 → 近位橈尺関節+腕橈関節

👉 腕橈関節の「Spin」と「荷重」

腕橈関節はただ付いているだけではありません。

  • 回旋時:橈骨頭が上腕骨小頭上で自転(Spin)することで動きを作ります。
  • 屈伸時:特に軸圧負荷がかかった際の荷重伝達を担います。

モビライゼーションを行う際も、このSpinの動きをイメージすることが大切です。

3.肘関節に関与する筋肉

肘関節に付着する筋肉の図
  • 屈曲に関与する筋
    • 上腕二頭筋
    • 上腕筋
    • 腕橈骨筋
  • 伸展に関与する筋
    • 上腕三頭筋
    • 肘筋(伸展補助+関節包挟み込み防止・外側安定性)
  • 回内に関与する筋
    • 円回内筋
    • 方形回内筋
  • 回外に関与する筋
    • 回外筋(肘伸展位・低負荷で主に作用)
    • 上腕二頭筋(肘屈曲位・高負荷で強く作用)

👉 MMT(徒手筋力検査)とのつながり

学生時代、MMTの回外測定で「肘屈曲90°」と習いましたよね?
あれは、強力な回外筋である上腕二頭筋の作用を含めて評価するためです。

  • 伸展位・低負荷では「回外筋」が主役
  • 屈曲位・高負荷では「上腕二頭筋」が主役

この役割の変化は、臨床での評価・治療において非常に重要になります。

4.機能不全と臨床症状

肘関節の機能不全では、以下のような問題が起こりやすくなります。

  • 屈伸制限によるADL低下(食事、更衣、整容動作)
  • 前腕回旋制限による巧緻動作低下(ドアノブ、箸、キーボード)
  • 肩・手関節への代償増大
  • スポーツ障害(投球障害、テニス肘、ゴルフ肘)

特徴的な問題

  • 伸展制限 → 投球・プッシュ動作に影響
  • 回内外制限 → 手関節・手指の動作効率低下
  • 内外反ストレス → 靱帯・筋の過負荷(特にMCL前斜走線維)

5.臨床ちょこっとメモ

日々の臨床で役立つ視点をまとめました。

  • 肘関節は「動かしすぎても、動かなすぎても問題」になります。
  • 痛みの部位だけでなく、回旋・伸展終末域を必ず評価してください。
  • 肘の問題は、実は肩甲帯や手関節由来のことも多いです。
  • スポーツ動作において、肘は「力の通過点」であり「制御点」でもあります。
  • 回外の評価は肘関節角度を変えて行うこと
    • 伸展位で行うと、上腕二頭筋の影響を除外して回外筋を評価しやすくなります。

6.まとめ

最後に、今回の内容を振り返ります。

① 解剖・特徴

  • 肘関節は3関節からなる複合関節
    • 腕尺関節、腕橈関節、近位橈尺関節
  • 構造的特徴
    • 3関節が1つの関節包に包まれている
    • 関節包は前後が薄く(拘縮しやすい)、側方は靱帯で補強されている
  • 安定性の特徴
    • 尺骨滑車切痕による高い骨性安定性
    • 内側側副靱帯(MCL):AOL(投球時)、POL(屈曲時)が重要
    • 外側側副靱帯(LCL):内反・回旋ストレスに抵抗

② 評価とアプローチ(運動と筋)

  • 運動の役割分担
    • 腕橈関節は、回旋時のSpin(自転)と、軸圧時の荷重伝達を担う
  • 関与筋の整理とMMTの視点
    • 屈曲:上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋
    • 伸展:上腕三頭筋・肘筋
    • 回内:円回内筋・方形回内筋
    • 回外:回外筋・上腕二頭筋

👉 評価の最重要ポイント

  • 肘角度・負荷量で筋の役割が変化する
    • 伸展位・低負荷:回外筋
    • 屈曲位・高負荷:上腕二頭筋(MMTの肢位の理由!)
  • 肘単独ではなく肩・手関節との連動で評価し、回内外は肘角度を変えて必ず確認しましょう。

③ 機能低下の影響と臨床的注意点

  • 機能低下で起こる問題
    • 屈伸制限:食事・更衣・整容動作の低下
    • 回内外制限:ドアノブ操作・箸・キーボード動作の低下
  • 代償の出現
    • 肩関節・手関節への負担増加
  • 臨床的注意点
    • 「動かしすぎ」も「動かなすぎ」も問題
    • 伸展終末域と回内・回外制限を必ずチェックする

 

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