この記事の要点(30秒で読めます)
- 液体は順序通りの「5期モデル」、固形物は同時進行の「プロセスモデル」で理解する必要がある。
- 食形態(学会分類2021)のアップは、反射を見る「Step1」と、咀嚼・貯留を見る「Step2-3」の2段階評価で行う。
- ポジショニングも、ペーストまでは「リクライニング(送り込み補助)」、固形物は「座位・顎引き(咀嚼・貯留)」へと切り替える。
前回のコラム(嚥下の5期とポジショニング)では、嚥下の基本となる「5期モデル」と、安全に飲み込むための「ポジショニングの解剖学的根拠」について解説しました。今回はより実践的な「食事」の話にステップアップしましょう。
実は、私たちが普段ご飯やおかず(固形物)を食べている時の動きは、教科書的な「5期モデル」だけでは説明しきれないことをご存知でしょうか?
今回は固形物を食べる時のメカニズムである「プロセスモデル」を紐解き、現場で迷いやすい「食形態(学会分類2021)」の決定方法や、それに合わせたポジショニングの評価について解説します。
現場の疑問を即解決!Q&A
Q. 5期モデルとプロセスモデルの最大の違いは何ですか?
A. 水などの液体は「順番通り」に送るのに対し、固形物は「噛みながら喉へためる(同時進行)」という動きの違いがあります。
Q. 食形態をアップさせる時、どこを見れば良いですか?
A. ペーストまでは「飲み込みの反射」を確認し、固形物からは「噛んでいる最中にムセないか(喉へのため込み)」を確認します。
Q. 評価の時、どんな姿勢をとれば良いですか?
A. ペーストまでは「リクライニング」で送り込みを助け、固形物からは「座位で顎を引く」ことで咀嚼とため込みを促します。
食事の流れを説明する2つのモデル
私たちがどうやって食べて飲み込んでいるかを説明するのに「5期モデル」と「プロセスモデル」があります。この2つは、「何を摂取している時の動きか?(液体or固形物)」と「動きが同時進行するかどうか?」に大きな違いがあります。
1. 5期モデル(液体)
「水などの液体」を飲むときの動きを説明するのに適したモデルです。一連の動作を5つの段階に分け「前の段階が終わってから次の段階へ進む」という順序で考えます。
2. プロセスモデル(固形物)
「ごはんやおかずなど固形物」を噛んで食べる時の動きを説明するモデルです。5期モデルと違い「複数の動作が同時進行(オーバーラップ)して進む」という順序で考えます。
| 特徴 | 5期モデル(液体・命令嚥下) | プロセスモデル(固形物・咀嚼嚥下) |
| 対象 | 水、お茶、検査用のバリウム水など | ごはん、おかず、クッキーなど |
| 動き | 順番通り (口で処理し終わってから、一気に喉へ送る) | 同時進行 (噛みながら、少しずつ喉へ送ってためておく) |
| 喉への流入 | 異常 (早期咽頭流入として誤嚥リスクとみなす) | 正常 (ハチ公前での待ち合わせのように、喉のくぼみにためておくのは生理的な現象) |
| 臨床的意味 | 嚥下造影検査(VF)で液体を飲むときの評価基準になる。 | 実際の食事場面での評価基準になる。「喉にたまっている=即異常」ではないと判断できる。 |
※理解を助けるための整理であり、すべての症例に当てはまるものではありません。
プロセスモデルの詳細解説
プロセスモデルは、私たちが「ご飯やおかず(固形物)」を食べている時の動きを説明したものです。つまり、「口の中で噛む作業と喉へ送る作業を同時進行で行い、喉に一度ためてから飲む」という動きです。

図:プロセスモデルのイメージ(Created with Gemini)
- 第1期輸送(Stage I Transport):口に入れた食べ物を、舌を使って奥歯(臼歯)の上まで運びます。
- 加工(Processing):奥歯で食べ物を噛み砕き(咀嚼)、唾液と混ぜ合わせます。
- 第2期輸送(Stage II Transport):まだ口の中に食べ物が残っていても、噛み砕かれて細かくなったものから順次、喉の奥(中咽頭〜喉頭蓋谷)へ送り込んでいきます。
- 咽頭期(Pharyngeal Stage):喉の奥(喉頭蓋谷)にある程度の量がたまったら、あるいは飲み込みやすいタイミングが来たら、嚥下反射を起こして一気に食道へ送ります。
「学会分類2021」による食形態の理解
「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021」(通称:学会分類2021)は、食形態の「共通言語」です。内容は大きく「食事(食べるもの)」と「とろみ(飲み物)」の2つに分かれます。
食事(食べるもの)の分類
| 分類・コード | 特徴と口の動き |
| コード0・1 「噛まない」グループ | 【5期モデル(丸飲み)】
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| コード2 「送り込む」グループ | 【5期モデル(送り込み必要)】
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| コード3・4 「噛む」グループ | 【プロセスモデル(咀嚼嚥下)】
|
とろみ(飲み物)の分類
- 薄いとろみ:スプーンを傾けるとスッと流れ落ちる(フレンチドレッシング状)
- 中間のとろみ:スプーンを傾けるととろーっと流れる(とんかつソース状)
- 濃いとろみ:形状が保たれる、ボテッとした状態(ケチャップ・マヨネーズ状)
【実践】食形態アップのための3ステップ評価
入院時など能力が未知数の場合に食形態を決める方法として、1つに下(コード0)から積み上げていく方法があります。
Step 1:コード0〜2(反射の確認)
〈方法〉 ゼリーやとろみ水、ペーストを少量摂取。
〈観察ポイント:5期モデル〉
- 口腔期:舌を使って奥へ送れているか?
- 咽頭期:「送り込み」の直後に、間髪入れず「ゴックン」が起きるか?
〈判定〉 ここでムセたり、湿性嗄声になるなら、コード3以上は時期尚早。
Step 2:コード3(ため込みの確認)
〈方法〉 バナナや豆腐などを一口摂取。
〈観察ポイント:プロセスモデル〉
- 加工:舌で押しつぶせているか(モグモグ)?
- 第2期輸送:モグモグしている最中(ゴックンの前)にムセないか?
〈判定〉 咀嚼中にムセる(早期咽頭流入による誤嚥)場合はコード3は不可。
Step 3:コード4(形成能力の確認)
〈方法〉 煮込みハンバーグ程度のかたまりを摂取。
〈観察ポイント〉
- 咀嚼の持続性:疲れて止まらないか?
- 形成能力:バラバラになった食べ物を、飲み込む直前に再びひと塊にまとめられているか?
〈判定〉 口の中に食べカスが散乱したまま飲み込んでいるようなら誤嚥リスク大。コード3へ戻す。
評価時の「戦略的ポジショニング」
評価する食形態に合わせて、ポジショニングも戦略的に変える必要があります。
前半(Step 1):コード0〜2の評価時
舌の力が弱くても、重力を味方につけて送り込む必要があります。
- 流速の制御(30度/コード0・1):水やゼリーが勢いよく流れ込むのを防ぐ。
- 送り込み補助(60度/コード2):粘度のあるペーストを重力で喉へ滑り落とす。
後半(Step 2・3):コード3〜4の評価時
しっかり噛み、喉の奥(喉頭蓋谷)に安全に「ためておく」スペースが必要です。
- 咀嚼のしやすさ:体幹を起こすことで、顎の開閉が容易になる(倒れていると重力で顎が開いてしまう)。
- 「ため込み」スペース確保:しっかり顎を引くことで、喉頭蓋谷というくぼみが広がり、噛んでいる間の食べ物を安全にキープできる。
まとめ
- 食事の評価は、液体・ペーストをみる「5期モデル」と、咀嚼をみる「プロセスモデル」の使い分けが重要
- 食形態を決める際は、コード2(ペースト)までは反射の有無を、コード3(固形)からは咀嚼中の安全性を確認する「2段階評価」が有効
- ポジショニングも、送り込み重視の「リクライニング」から、咀嚼・貯留重視の「座位・顎引き」へと段階的に切り替える必要がある
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【免責事項】
本コラムで解説している「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021」の解釈や、「5期モデル・プロセスモデル」を用いた評価手法は、執筆時点での知見に基づくものです。特にポジショニングの角度や食形態の選定については、患者様の個別の身体状況(麻痺の程度、覚醒状態、呼吸状態など)によって適切な対応が異なります。コラム内の角度や数値はあくまで目安であり、鵜呑みにせず、必ず目の前の患者様の反応を確認し、専門職の判断の下で調整を行ってください。本コラムは専門職向け情報ですが、本記事の内容の実践により生じたいかなる損害・事故についても、当方は責任を負いません。
【参考文献】
・日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類委員会: 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 日摂食嚥下リハ会誌 25(2): 135-149, 2021.
・戸原玄監修:嚥下改善ポジショニング、メジカルビュー社、2025年
・田中マキ子編集:ケアに活かすポジショニング技術、照林社、2025年







