【事例で学ぶ】送迎時の動作・環境評価から個別機能訓練計画への反映まで

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。今回は「送迎時間を活用したリハビリテーション」に焦点を当てて考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

送迎時間をリハビリとして活用する意義とは?

送迎時間は、利用者さんの実際の生活環境を直接観察できる貴重な機会です。自宅から車両までの移動、乗降時の動作、座位保持など、様々な場面で利用者さんの動作能力を評価することができます。特に、住環境や家族との関わりなど、施設内では得られない情報を収集できる点が重要です。

たとえば、玄関先での靴の履き替えでは、立位バランス、手先の巧緻性、認知機能など、複数の要素を同時に評価することができます。また、車両への乗り降りでは、下肢筋力、体幹機能、方向転換能力なども確認できます。これらの情報は、その後の個別機能訓練の立案に活かすことができます。

送迎時間で評価すべき3つのポイント

送迎時には、以下の3つの視点で評価を行うことが重要です。

1. 動作面の評価

  • 立ち上がり動作の安定性
  • 歩行時のふらつきの有無
  • 方向転換時のバランス
  • 乗降時の重心移動の様子

2. 環境面の評価

  • 玄関周りの段差の高さや数
  • 手すりの位置や種類
  • 照明環境
  • 靴の収納場所や履き替えスペース

3. コミュニケーション面の評価

  • 声掛けに対する理解力
  • 動作手順の記憶
  • 危険認識の程度
  • 家族との関わり方

送迎時のリハビリにおける安全管理の徹底

送迎時のリハビリテーションでは、安全管理が最も重要です。以下のポイントを必ず確認しながら実施していく必要があります。

1. 利用者の体調確認

  • 血圧、脈拍
  • 体温測定
  • 疲労度の観察
  • 体調変化の有無

2. 環境要因の確認

  • 天候状況
  • 路面状態
  • 照明の具合
  • 周囲の障害物の有無

3. 介助方法の統一

  • 介助者の立ち位置
  • 声掛けのタイミング
  • 緊急時の対応手順

【実践事例】送迎時リハビリの具体的な活用例 (Aさん: 80代女性)

ここで、80代女性のAさんの例を紹介します。Aさんは自宅で転倒する不安があり、特に玄関での靴の履き替え時に不安定になりやすい状態でした。

送迎時の様子を観察すると、右足に比べて左足への荷重が少なく、左側にふらつく傾向がありました。また、手すりは設置されているものの、位置が少し遠く、十分に活用できていない状況でした。

これらの観察結果から、以下のようなアプローチを行いました:

  • 左足からの動作を促す声掛け
  • 手すりの適切な使用方法の指導
  • 家族への環境調整の提案

声掛けは具体的に「まず左足を一歩前に出して、手すりをしっかり握りましょう」というように、動作の順序を明確に伝えるようにしました。また、手すりの使用方法については、実際に職員が見本を見せながら説明を行いました。

その結果、3ヶ月後には靴の履き替え動作が安定し、自宅での転倒不安も軽減することができました。

送迎時リハビリの段階的アプローチ:3つのフェーズ

送迎時の機能訓練は、利用者さんの状態に合わせて段階的に進めていく必要があります。

1. 見守り期(評価期)

  • 安全確認を重視
  • 自然な動作の観察
  • 必要最小限の声掛け

2. 促し期(訓練導入期)

  • 意図的な声掛けの追加
  • 動作の手順確認
  • 軽度の介助

3. 訓練期(機能向上期)

  • 目的を持った声掛け
  • 意識的な動作の促し
  • 機能訓練としての実施

段階的アプローチの実践例 (Bさん: 75歳男性)

この段階的なアプローチの具体例として、Bさん(75歳男性、右片麻痺)の事例を紹介します。

見守り期(1〜2週目):

  • 自然な動作の観察
  • 危険な場面での最小限の介助
  • 基本的な動作パターンの把握

促し期(3〜4週目):

  • 左手でのグリップ把持を促す声掛け
  • 動作の順序を意識した声掛け
  • 必要に応じた軽介助の実施

訓練期(5週目以降):

  • 意図的な動作練習の実施
  • 自主的な動作の促進
  • できた動作の定着

効果を高める!多職種での情報共有のポイント

送迎時に得られた情報は、多職種で共有することで、より効果的な支援につなげることができます。

1. 情報共有の方法

  • 申し送りノートの活用
  • カンファレンスでの報告
  • 個別機能訓練計画への反映

2. 共有すべき内容

  • 送迎時の特記事項
  • 環境面での気づき
  • 家族からの情報

3. 情報の活用方法

  • 支援方針の統一
  • 目標設定の見直し
  • 具体的な支援内容の調整

特に重要なのは、送迎担当者だけでなく、施設内の職員全員が情報を共有し、統一した対応を取ることです。たとえば、送迎時に発見された動作の特徴や介助方法の工夫は、施設内での移動介助にも活かすことができます。

まとめ:送迎時間を最大限に活用するために

今回のポイントをまとめます。

  1. 送迎時間は単なる移動時間ではなく、貴重な機能訓練・評価の機会として活用できる。
  2. 動作面、環境面、コミュニケーション面の3つの視点で評価を行い、具体的な支援につなげることが重要である。
  3. 安全管理を徹底した上で、段階的なアプローチを行い、多職種で情報を共有しながら支援を進めることが求められる。

送迎時間の活用は、まさに「生活に根ざしたリハビリテーション」の実践といえます。利用者さんの生活環境に直接関わることができる貴重な機会として、より効果的に活用していきたいですね。


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