こんにちは!理学療法士の内川です。
臨床で股関節に問題がある患者さんを担当する中で、
- 「大腿方形筋の具体的な役割って何だろう?」
- 「梨状筋や内外閉鎖筋など、他の股関節外旋筋との違いがよく分からない…」
- 「大腿方形筋の触診やMMT、アプローチ方法を正確に知りたい!」
といった疑問を感じたことはありませんか?
大腿方形筋(Quadratus Femoris Muscle)は、股関節の深層に位置し、関節の安定性に不可欠な筋肉です。特に股関節の外旋動作や、歩行・走行時の骨盤の安定化に重要な役割を担っています。しかし、深層にあるため意識されにくく、臨床で見落とされがちな筋肉でもあります。
この記事では、理学療法士・作業療法士の皆さんが臨床で活かせるよう、大腿方形筋の解剖学的な基礎知識から、具体的な評価方法、アプローチ、そして機能低下がもたらす影響まで、分かりやすく解説します。
一緒に大腿方形筋への理解を深めていきましょう!
1. 大腿方形筋の解剖と作用

起始:坐骨結節 外側縁
停止:大腿骨 転子間稜
支配神経:坐骨神経の筋枝 (L4, L5, S1)
主な作用:
- 股関節の外旋: 大腿骨を外側に回旋させる主要な作用です。
- 股関節の内転: 股関節を閉じる動きを補助します。
- 股関節の水平伸展(股関節屈曲位): 股関節を曲げた状態からさらに後方へ動かす際に働きます。
- 大腿骨頭の安定化: 股関節の適合性を高め、関節の安定に寄与します。
大腿方形筋は、股関節の深層に位置する深層外旋六筋(梨状筋、上双子筋、内閉鎖筋、下双子筋、大腿方形筋、外閉鎖筋)の一つです。これらの筋肉群は、股関節を外旋させるだけでなく、関節包を補強し、大腿骨頭を臼蓋に引きつけて安定させる重要な役割を担っています。
深層外旋六筋の中では最も下方に位置しており、その走行から股関節の内転作用も持ち合わせています。
2. 大腿方形筋の評価(触診・MMT)
大腿方形筋の状態を把握するための評価方法を確認しましょう。
触診

- 体位: 患者さんには腹臥位(うつ伏せ)になってもらい、股関節を軽度屈曲・外転させます。これにより、殿筋群の緊張が和らぎ、深層の筋肉が触診しやすくなります。
- 触診部位: 坐骨結節(お尻の骨の出っ張り)の外側縁から、大転子後方の転子間稜に向かって指を進めます。
- 収縮の確認: 患者さんに股関節を軽く外旋してもらうと、大腿方形筋の収縮を指先で感じ取ることができます。
ポイント: 深層にあるため、強い圧迫ではなく、層を意識しながらゆっくりと指を沈めていくことが重要です。
徒手筋力テスト (MMT) – 股関節外旋
股関節外旋筋全体の筋力を評価しますが、大腿方形筋もこの動きに関与します。
段階 5, 4, 3(座位)


- 体位: 安定した椅子やベッドの端に座り、体幹を安定させるために両手をベッドにつきます。膝は90度屈曲位。
- 動作指示: 患者さんに、足部を内側に動かすように指示し、股関節を外旋させてもらいます。
- 抵抗: 療法士は、一方の手で膝の外側(大腿骨遠位外側)を固定し、もう一方の手で足関節(内果)の上方に当て、股関節内旋方向(足部を外側に動かす方向)へ抵抗を加えます。
判断基準:
- 段階5 (Normal): 最大の抵抗に対して最終域を保持できる。
- 段階4 (Good): 中等度の抵抗に対して最終域を保持できる。
- 段階3 (Fair): 抵抗なしで可動域全体を動かせる。
段階 2, 1, 0(背臥位)


- 体位: 患者さんには背臥位(仰向け)になってもらい、評価する側の股関節を中間位(または軽度内旋位)にします。
- 動作指示: 患者さんに、重力を除いた状態で股関節を外旋(つま先を外に向けるように)してもらいます。
判断基準:
- 段階2 (Poor): 重力を除いた状態で、可動域全体または一部を動かせる。
- 段階1 (Trace): 筋収縮が触知できる、またはわずかな動きが見られるが、関節運動は起こらない。
- 段階0 (Zero): 筋収縮が全く触知できない。
3. 大腿方形筋へのアプローチ(リリース)
大腿方形筋の緊張が高い場合や柔軟性低下が見られる場合、リリースが有効なアプローチの一つとなります。
- 基本的な方法: 上記の触診方法で大腿方形筋を捉え、軽い圧を維持したまま、患者さんにゆっくりと深呼吸をしてもらいます。呼気時に筋肉が弛緩するのを感じながら、圧を調整します。
- 他動運動との組み合わせ: 大腿方形筋を触診で捉えた状態で、療法士が他動的に股関節の内旋・外旋をゆっくりと繰り返す方法も有効です。
注意点: 深層にあるため、坐骨神経との位置関係に注意し、強い痛みやしびれが出ない範囲で慎重に行います。
4. 機能低下とその影響
大腿方形筋の機能低下や過緊張は、股関節や骨盤の安定性に影響を及ぼし、様々な問題を引き起こす可能性があります。
- 骨盤の不安定性: 大腿方形筋を含む深層外旋六筋の機能低下は、立脚期における骨盤の安定性を損ない、歩行時の動揺(トレンデレンブルグ徴候など)や腰部への負担増加につながる可能性があります。
- 股関節のインピンジメント: 大腿方形筋が過緊張状態になると、大腿骨頭を後方から臼蓋に押し付ける力が増し、股関節後方のスペースを狭めることがあります。これが後方インピンジメントの一因となる可能性があります。
- 股関節可動域制限: 特に股関節内旋の可動域制限に関与することがあります。
5. 臨床ちょこっとメモ
臨床で役立つポイントをいくつかご紹介します。
- 安定性のキーマッスル: 深層外旋六筋の中でも、大腿方形筋は特に股関節の安定化に貢献していると考えられています。
- 内転作用 vs 外転時の活動: 解剖学的な作用としては股関節内転がありますが、歩行やランニングなどの動作中の筋活動を調べると、股関節外転時にも高い活動を示すことが報告されています。これは、外転筋(中殿筋など)と協調して股関節の安定性を高めているためと考えられます。
- 股関節屈曲角度による作用変化: 股関節屈曲90°位では、大腿方形筋の上部線維は股関節外転に作用するとも言われています。肢位によって作用が変わる点も考慮が必要です。
6. まとめ
今回は、理学療法士・作業療法士が知っておきたい「大腿方形筋」について解説しました。最後に要点をまとめます。
【解剖と機能】
- 起始は坐骨結節外側縁、停止は大腿骨転子間稜。
- 坐骨神経の枝(L4-S1)に支配される。
- 主な作用は股関節の外旋、内転、水平伸展(屈曲位)。
- 深層外旋六筋の最下部に位置し、大腿骨頭の安定化に重要。
【評価】
- 触診は腹臥位で坐骨結節外側から転子間稜を目標に行う。
- MMT(股関節外旋)は座位(段階3-5)または背臥位(段階0-2)で評価。
【アプローチと臨床応用】
- リリースは触診部位への持続圧や他動運動を組み合わせて行う。
- 機能低下は骨盤不安定性や股関節インピンジメント、可動域制限につながる可能性。
- 股関節の安定性に特化した役割を持ち、外転時にも活動が高まる。
- 過緊張は後方インピンジメントの原因にもなり得る。
この記事で解説したのは、あくまで大腿方形筋単体の知識です。実際の臨床では、周囲の筋肉や結合組織との関連、神経系とのつながりなど、より多角的な視点が求められます。
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