こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。
以前TUGテストでは時間の計測とともにどのように動作を行っているかを観察し、適切な評価を行う必要があるとお伝えしました>>>TUG (Timed Up & Go Test)テストについて勉強してみる
今回は股関節、膝関節、足関節の機能に基づいた評価をまとめてみたいと思います。
まずTUGテストを分解して考えてみる
TUGテストは大きく
- 起立
- 歩行(方向転換)
- 着座
の3つに分かれます。
それぞれに必要な下肢の動きは大まかに以下のようなものが挙げられます。
関節 | 動き | 筋肉 |
股関節 | 屈曲/内旋 伸展/外旋 | 大腰筋、多裂筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋、深層外旋6筋、ハムストリングス |
膝関節 | 屈曲 伸展 | 大腿四頭筋 |
足関節 | 背屈 底屈 | 前脛骨筋、後脛骨筋、腓骨筋、下腿三頭筋 |
局所の評価
立ち上がり、歩行をスムーズに行うためには以下の可動域と機能解剖に基づく必要な評価
関節 | 可動域 | 必要な動き |
股関節 | 屈曲 100° 伸展 20° | 内外旋 |
膝関節 | 屈曲 100° 伸展 0° | スクリューホームムーブメント |
足関節 | 背屈 20° 底屈 | 踵骨と床面の角度 |
そしてそれぞれの動きを制御する筋肉の求心性収縮、遠心性収縮を評価します。
求心性収縮はMMT、遠心性収縮は荷重位での動作で評価し、スムーズに動作ができる場合は可、ぎこちない、途中で止まってしまうなどがみられた場合は不可とします。
アプローチ
挙げられた問題点に対して可動域の制限や筋肉の制御に問題があったらそれぞれアプローチしていきます。代表的なアプローチは以下のようになります。
機能的な問題点 | アプローチ法 |
関節の動き、筋の収縮不全 | 徒手的アプローチ、物理療法 |
求心性収縮の筋力低下 | MMTの肢位で筋力強化 |
遠心性収縮の筋力低下 | 可動域最終位での等尺性収縮→荷重位での動作訓練 |
これらのアプローチを行い、再度動作(TUG)を評価してみましょう。
機能的なアプローチ後に動作が変化しない場合
機能的なアプローチ後に動作が変化しない場合は局所の機能ではなく、動作そのものに問題があると考えられます。機能制限がある状態での動作を脳が学習していて機能が変化していても変化する前の動作を行ってしまうといったことが考えられ、新たに効率的な動作を学習する必要があります。
そのため動作の練習が必要になります。
そもそもTUGができるようになることがリハビリの目的ではない
機能的な訓練を行い、効率的な動作訓練をしてTUGが変化したとしましょう。でもそもそもTUGの変化がリハビリのゴールではありません。本来の目的は対象の方のADLが今よりも快適にできるようになること。そのためTUGの変化が日常生活に汎化される必要があります。そのために必要なものが目的動作の練習になります。
基本動作は動作そのもの歩行なら「歩行」が起立動作なら「起立」が目的となります。対して目的動作は「トイレで排泄する」ために歩行や起立動作が必要になります。目的動作を行うことで歩行や起立が無意識でできるようになり、ADLへ汎化されていきます。対象の方の目的に合わせたリハビリを行いましょう。
まとめ
TUGに必要な下肢の評価は
- 各関節の他動運動の可動域を評価する
- 関節を制御する筋肉の求心性、遠心性収縮を評価する
- 目的動作を確認する
動作分析の基本的な見方と問題点の抽出法
>>>動作分析から見る問題点の抽出と評価・アプローチ法
療活では患者さん、利用者さんの目的を達成のサポートができる療法士が増えることで療法士自身も、患者さん利用者さんも笑顔になることを目的に活動しています。
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参考文献・資料
- Adalbert I. Kapandji (原著), 塩田 悦仁 (翻訳) カラー版 カパンジー機能解剖学 III (3) 脊椎・体幹・頭部 原著第6版 医歯薬出版
- 野村 嶬 (編集) 解剖学 第4版 (標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野) 医学書院
- 中村 隆一 、齋藤 宏 、長崎 浩 (著) 基礎運動学 第6版 医歯薬出版
- 山嵜 勉 (編集) 整形外科理学療法の理論と技術 メジカルビュー社
- 福本貴彦 足関節のバイオメカニクス Jpn J Rehabil Med 2016;53:779-784
- 壇 順司 足関節の機能解剖-人体解剖から紐解く足関節の機能- 理学療法学 2013 年 40 巻 4 号 p. 326-330
- 山崎 裕司ら 足関節背屈可動域としゃがみ込み動作の関係 理学療法科学 25(2):209–212,2010
- 森田 智美ら 足関節背屈制限が立ち上がり動作に及ぼす影響と動作遂行に必要な背屈可動域の検討:─床反力、股関節屈曲角度に着目して─ 理学療法学Supplement 2011(0), Aa0140-Aa0140, 2012
- 森田 智美、宮崎 純弥 立ち上がり動作を容易に行うために必要な足関節背屈可動域の検討 ―床反力,股関節屈曲角度に着目して― 理学療法―臨床・研究・教育 19:23-26,2012.
- get-up and go test Dr.Mark Jopling on the 14 March 2014
- PRiCO(ぷりこ)さんによるイラストACからのイラスト
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